日韓関係ノート 感謝と慰労のための官房長官談話を

1.ジェットコースターに乗る日韓関係
 日本語と英語の「(朝鮮)半島問題」の文献を読みだして、もう数年になる。流行に左右される方ではないが、韓流ブーム全盛時代が来たと思ったら、あっという間に大「嫌韓」時代となった。嫌韓本に対する批判もあるが、題名はともかくも中身は韓国事情であり、大部分は事実に基づいたものだ。感情に訴えかける本ではない。そうした本が多く売れることは、日本人なりに、自国と韓国の来し方、行く末を見つめなおして来た言っても良いのではないか。ただここ1-2年ほど、もっとも気になっていることは、韓国が大好きで事実を知りながら政治から距離を置き表面的には今まで決して韓国を批判しなかった尊敬すべき日本の韓国学者が、韓国に対し批判的になっていることだ。韓国は最もコアな支持者を失ったと思う。
 安倍内閣となって日韓関係が悪化したという人もいるが、事実は異なる。鳩山内閣が終わり菅政権となって、当時の李明博大統領が鳩山前首相との面談で「日韓両国は地球上で最も良好な2国間関係を築ける」と発言したのは2010年9月だった。それから1年経って、2011年10月の韓国での日韓首脳会談においてウォン急落が懸念される韓国から依頼されて、野田首相率いる民主党政権は通貨スワップ枠を130億ドルから700億ドルに拡大した。ところが2011年12月に訪日した李明博大統領は、日韓首脳会談で野田首相に「慰安婦問題について韓国の求める誠意を示さない限り、駐韓日本大使館正面の少女慰安婦と称する像が各地に建立がなされる」と述べた。暮れも押し詰まった京都迎賓館で、テレビに映る野田首相のぶすっとした顔が一層ぶすっと見えた。そして翌年の2012年8月10日に李明博大統領が竹島に上陸し、さらに8月14日に「天皇(日王)が韓国に来たければ独立運動家に謝罪せよ」と言うに及んで日本国民の多くが驚き、それ以降、日韓関係が急速に悪化した。そして嫌韓本が売れるようになった。
 事実として、民主党政権時代は、なんら中国や韓国に対してきちんとした反論をしたことはなかったし、保守派から見れば、理不尽と思える彼らの要求を受け入れてきた。首相官邸や議長公邸に、中国、韓国の大使館員が数多く出入りしていたこと自体が、とても異様だった。役所が上げてくる極秘情報が中韓の大使館に翌日漏れていたという。安倍内閣となって特定秘密保護法が制定された本当の原因はそのことにあった。民主党の国会議員にはその主義主張からみて、日本の国籍を取得しているものの、中国、韓国のエージェントと考えられる人がいると公然に語られだしたことは驚きだった。中国、韓国から、あまりにも日本は軽く見られていた。その危機感によって2012年9月の自民党総裁選挙で安倍晋三総裁が奇跡的に誕生し、総選挙で地滑り的勝利を得て12月に安倍内閣が成立した。「日本を取り戻そう」というキャッチフレーズがとても新鮮に感じられた。
 通貨スワップについては、その後の韓国側の延長希望がないため、今は2015年2月を期限とする100億ドルを残すばかりとなっている。2014年12月からは中国の人民元とウォンの直接取引が始まるという。APECが開かれている北京では、韓国と中国の自由貿易協定(FTA)が妥結したという。ただ懸案だった自動車分野は除外されたという。それで意味があるかないかは別として、韓国の意図は、韓中FTAが締結されればアジア太平洋地域の地域経済統合議論を加速したいとの意思があるという。韓国経済はこれで名実ともに、中国の影響下に入った。米国は、戦時作戦統制権の返還が無期限に延期したことによって、米軍が残るという形となったが、まだ中国と韓国をコントロールしているつもりなのだろうか。
 韓国の朴槿恵大統領は、相変わらず、慰安婦問題の前進なくして日本との首脳会談はしないという。しかし朝日新聞誤報訂正事件を切っ掛けに、保守派だけでなく、多くの日本人が慰安婦問題の虚構に気が付いてしまった。そして韓国大統領による発言を、事実に基づかないヘイトスピーチだと感じている。かつてのように、政治家が安易に韓国に謝罪すれば日本国内で非難を浴びることになるだろう。日韓議連の国会議員だけが日本人だと思ったら大間違いだ。
2.春畝山博文寺
 1909年10月26日、その年の6月に統監を辞め、枢密院議長となっていた伊藤博文がロシア蔵相と満州・朝鮮問題について非公式に話し合うため吉林省ハルビンに到着したところを、無名の韓国人が射殺した。その衝撃は日韓のみならず、世界に走った。特に韓国の高宗皇帝は、何も判っていない暴挙として激怒したという。韓国人は伊藤統監は本当に韓国の為を思って働いてくれたと悼み、韓国各地で追悼慰霊祭が営まれた。やがてソウルに広大な春畝山博文寺が建立されたが、戦後、博文寺は壊され、伊藤博文は韓国侵略の元凶となった。そして2014年1月、ハルビン駅に安重根記念館が出来た。
3.大東亜戦争を共に戦った人々への感謝と慰労のための官房長官談話を
 日本統治下の朝鮮半島に徴兵制がなかった。志願兵の募集には、最大50倍の志願者が殺到し、当時の憲兵隊の受付は問合せの電話と志願者の応対で他の仕事をすることができなかったという。延べ24万2000人が志願し、2万1000人が戦死し英霊として靖国神社にまつられている。兵士以外の民間人は、ほとんどは企業などの募集であり、国民徴用令による強制的な徴用は245人だった。慰安婦は民間の売春婦であり、二等兵の20倍以上の賃金をもらいながら戦地を転々として兵士に随行した。「独立のための抗日戦争を闘い、勝利して独立した」というのが彼らの公式見解だがそうした事実はない。それが日韓の間にある「歴史問題」の本質である。
 だから日本がすべきは謝罪ではなくて「感謝と慰労」だというのが黒田勝弘氏の考え方だ。韓国では今も志願兵の存在は隠されている。歴史を清算し日韓が正しい歴史にもとづいて和解するために「日本のために戦っていただいた朝鮮の軍人・軍属のみなさんに感謝する」という新しい官房長官談話を出してもいいのではないかという。韓国の人は反発するだろうが、今以上に日韓関係が悪くなることはなく、正しい歴史認識こそが両国関係改善のきっかけだからである。 私は黒田さんの意見に賛成だ。

アフリカの不安は、中国の不安。そして世界の不安

 エボラ出血熱も問題は、保健衛生上の問題にとどまらず、このままいくと国際的な人の往来や国際的な観光の減少、食品の輸出入の減少、ひいては経済の縮小につながりかねない。米国でもその制御に失敗したことが報じられているが、世界ではWHOの失敗だという人も多いと思う。
 だがこの際、責任追及は問題の本質ではない。何故そう思う人が多いのかといえば、WHOの責任者の事務局長は、SARSの時に香港の衛生責任者だった人で、中国政府の推薦でWHOの責任者となった。16世紀以降アフリカに行った欧州人の数より、2000年以降アフリカに行った中国人の人数の方が多い。当然ながら、アフリカと中国との人の往来も多い。マクドナルドの事例を挙げるまでもなく、中国の衛生管理は昔も今も悪い方で定評がある。1894年にはペストの蔓延していた香港に派遣されて、ペスト菌を発見したのは北里柴三郎先生だった。アフリカ不安は、中国の不安なのだ。そして中国人観光客はアジアの観光経済を支えている。中国の商品は世界に輸出されている。中国の不安は世界の不安なのだ。
 今朝のニュースでは、韓国の釜山で、またスペインに着陸した航空機で患者と疑われる人が出たという。食品関係者は口を閉ざしているが、無検査となっている韓国食品だってそう高い評価があるわけではない。韓国の危機管理の実情もハッキリしている。世界最初のパンデミックといわれる「スペインかぜ」もスペインではなく米国で発生したインフルエンザだった。
 そうだとすると、日本ではきちんとした制度と仕組みがあると言っているだけでは済まないのではないか。「こういう時には、どうする」と、まず国民的な理解を促し、医療関係者には必要な訓練をし、必要な機材、設備、医薬品の拡充を図るべきではないか。

足元の国際情勢と日本外交の動き

 朝日新聞は9月11日になって謝罪記者会見を開いた。紺屋の白袴とはよく言ったものだ。福島原発に関する吉田調書の誤報取消と謝罪に加えて、付け足しのように慰安婦問題の誤報取消への謝罪が行われた。どちらも誤報ではなくて、事実としては捏造である。責任追及には慣れていても、責任をとることには慣れていないのだろう。第三者委員会による事実の検証と抜本的な改善策の実施を約し、その後の社長辞任を示唆した。日増しに大きくなっている朝日新聞への批判と購読部数の減少がこの日の謝罪の表明となったという。原発事故の吉田調書について言えば、撤退については本人の言葉で明確に否定しているのに、なぜ反対の報道をしたのか疑問である。それだけでも酷いことだが、慰安婦問題については更に酷い。広義の強制性があったことは依然として否定しないまま、吉田証言の嘘に全ての責任を負わせたいようだ。テレビ朝日報道ステーションの謝罪報道も、慰安婦問題を人権の問題にすり替えようとする意図が濃厚である。ただ同時に朝日新聞が財政的に弱ると、ニューヨーク・タイムスのように中国マネーが動いてくると懸念する人がいる。
 朝日新聞グループの責任追及とは別個に、事実について欧米や世界の誤解を解かなければならない。日本政策研究センターから西岡力教授の「慰安婦問題」についての事実を明らかにした反論書が英語と日本語でダウンロードできる。朝日新聞の問題を離れて、戸塚、高木、福島といった日弁連や「人権派」の弁護士の活動もきちんと検証されなければならないだろう。
   http://www.seisaku-center.net/sites/default/files/uploaded/The%20Comfort%20Women%20Issue-03.pdf


(1)タイの東西に大アジア回廊
 9月の初めにインドのモディ首相が来日された。安倍首相とは相互にツイッターでフォローし、メッセージを交わす仲だという。現実的な行政手腕と身ぎれいなことで人気がある政治家である。中国に気は使うが中国の反感を恐れない政治家だという。日本の政府とは、ガンジス川の浄化や医薬産業の技術移転、原子力飛行艇についての協議しているという。州の首相として実績を積んだインド西部のグジャラート州は、インド国内で最も工業生産が盛んな州であり、国内総生産の4割を占める。石油・化学、鉱工業、船舶解体、自動車、繊維などの工業地帯であり、インドの石油化学製品の約7割、医薬品の約4割が同省で生産されている。世界のインド商人はグジャラート出身の人がほとんどだという。
 内閣改造と党役員の人事のあと、安倍首相はバングラデシュスリランカを外遊された。バングラデシュでは、ベンガル湾沿海部の日系企業向け経済特区の整備、電力や鉄道などインフラ整備で、来年度から毎年1千億円以上、4〜5年で計6千億円規模の支援を約束した。首都ダッカ港湾都市チッタゴン、南東部のマタバリを結ぶ一帯のインフラが整備される。バングラデシュ安全保障理事会非常任理事国への立候補を取りやめ日本に譲ってくれたようだ。スリランカでは巡視艇の供与を要請されたことが報じられている。
 今回訪問したバングラデシュスリランカに、いま日本としては同じように多額の経済支援をしているインド、ミャンマーベトナムを加えると、タイの東西にアラビア海南シナ海、南アジアと東南アジアを結ぶ「大アジア回廊」とでも称すべき一つの新たな経済発展地域が出来つつあることが確認される。
(2)東アジアの混乱
 中国では、例年8月の北載河(ホクタイガ)に、共産党大幹部が集まり人事や政策の大筋が決定される。習近平主席は彼の意に反対する長老を今年の会議に出席させないまま、10月から習近平グループが軍の実権を握る人事を決めたという。それで他のグループが納得するのだろうか。ベトナム沖の南シナの石油掘削リグは取り払われたことは、石油利権に関する実権も彼が握ったことを意味するのかもしれない。だからと言って中国の本質が変わったわけではない。
 11月のAPECでの日中首脳会談の開催も決まったという。日本国内の報道を見ると、中国は福田元首相公明党を初めてとする親中派を総動員して日本の態度を軟化させようとしている。ただ日本企業のから独占禁止法違反で違反金を取り出すようでは、ほうっておいても日本企業は撤退するだろう。中国の経済停滞は明らかだが、欧州勢の進出によって経済が何とか保っているのではないか。大気汚染の除去に日本の技術援助が必要だという人もいるが、もともと日本から輸出されたプラントに付いていた脱硫装置を転売していた国に援助をしても意味がない。中国を攻撃しようという国はないので、軍事支出を削減し、環境のために投資すれば良いだけである。
 韓国メディアは日本の朝日新聞誤報取消がどのような意味を持つかはっきり理解していないようだ。韓国政府はそれ以上に理解していないように見える。9月11日の朝日新聞の謝罪と社長の辞意を、韓国メディアはいつもと違って速報しなかった。もうすぐ2週間たつだが、韓国大統領の発言はまだ変わってこない。日本にいる韓国系の人々の民団新聞は、2015年の日韓修好50周年をお祝いムードで迎え、2018年平昌と2020年東京のオリンピックをともに成功させようと言い出した。その意図するところは、準備が進んでいない平昌オリンピックのお金を日本に出させたいのだと解説する人がいる。あれだけ国際的に日本を貶める活動をされたら、お金を出すどころか、韓国とはもっと距離を置くべきと思う日本人が多くなっても不思議ではない。東京都知事が、韓国大統領に頭を下げただけで、彼に対する期待は霧散してしまった。安倍首相をはじめとする政府高官は、日韓は価値観を共有する国だと言っているが、どこに共通の価値観があるのだろうか。森元総理がアジア大会の開会式に出席する際に、韓国大統領と会談するという。態度を軟化させているのだろうけれど、何処から話を始めるのだろうか。
 今月は拉致問題に関する北朝鮮の回答が予定されていたが時期的には遅れている。北朝鮮は土壇場で日本政府に様々な要求をしているようだが、詳細は分らない。米国が北朝鮮接触を始めたという情報がある。一筋縄ではいかないことは覚悟の上だ。拉致被害者17人と特定失踪者883人合わせて900名のうち何人が帰って来るのだろうか。
 渡航禁止措置の緩和を受けて朝鮮総連の指導者が北朝鮮に入った。北朝鮮政府ととともに対日戦略を練っているのだろう。北がはっきりとした成果を出さないならば、彼らの再入国を当面の間、留保すれば良いという人がいる。拉致した日本人を何処かに収容して住まわせている北朝鮮当局は、何人、何処に収容しているかは特別委員会を作らなくとも知っているはずだ。日本に対してすぐに拉致被害者全員の報告ができるはずだという人が多い。
 900人の人質全員が帰って来たと分れば、米国と連携しつつも北朝鮮と国交正常化交渉を始めることを、多くの日本国民は納得するだろう。今度は、核とミサイルに資金が回らないようにしなければならない。日本におけるパチンコ産業の規模は一説に23兆円の売上があるという。10%の経常利益として年間2兆3千億円の利益となる。そのオーナーの95%が在日の人で、残りは日本に帰化した人だという。北朝鮮への送金が制限される前までは、その中から毎年1800−2000億円もの資金が北朝鮮に送られていたという。規制緩和をしても、彼らの送金を復活させてはいけない。日本では本来、法律で禁止されているはずの非公営ギャンブルが堂々と運営されていること自体が、未だに戦後史の大きなタブーの一つである。
(3)ロシアとヨーロッパ
 この秋から冬にかけての最大の課題は、なんといってもロシアのプーチン大統領の日本訪問である。9月9-10日にモスクワで日露フォーラムが開かれ、首相の親書を持って森元首相が訪露した。日露首脳会談の実現に当たっては、ウクライナ情勢が大きなカギを握っている。日本のメディアではウクライナNATOに入り、EUの一員になるといわれているが、はたしてそうか。ロシアからの経済支援、エネルギー支援なしにウクライナは経済的に自立することは難しいのではないか。冷戦の復活をヨーロッパもロシアも望んでいるとは思えないし、それによる経済の停滞感が出ている。そうだとすれば、ロシアも含めて経済が成り立ち、ともに繁栄する道があるはずである。
 停戦合意が成立したというが、足元では双方の制裁合戦の様相を呈している。日本の外務大臣はドイツに行って、情報の収集を図っていたようだ。ただ日露間の平和条約を未だに結んでいない日本は、ロシアとしっかりと対話を続けていく必要がある。
 同時に世界のエネルギー需給に変化が起きていることにも着目しなければならない。世界経済の停滞によって、石油の減産をサウジアラビアが始めた。天然ガスの世界では供給が多すぎて、米国国内のガス価格が下落し、ヨーロッパの3分の1、日本の5分の1になっているという。シェールガスの採算をとるために、米国は「輸出先」を探しているという人もいる。
(4)米国
 米国はシリア国内でも、ISISを空爆をするという。しかし一方で、ISISを空爆した米軍は「空爆してもISISの勢いは衰えない。ISISは空爆で潰せない。今後もISISの伸張は続くだろう」としている。
 ISISについて変な情報も出ている。エドワード・スノーデンは「ISISのバグダディはモサドとCIAとMI6が育てたエージェントだ」「イスラエルは、ISISとイランを戦わせ、スンニとシーアの両方を消耗させて弱体化する策のためにISISを作った」と言い、イスラエルのネタニヤフ首相は、公式な発言として「イスラエルや米国は、ISISとイランとの戦いを傍観し、両者が弱体化するのを待つべきだ」と述べているという。イランの諜報機関の幹部も「ISISは、イスラム教のイメージを悪化させる目的で、敵方(米イスラエル)のシンクタンクによって考案された組織」であり、米国には「ISISは、イラクを永久に混乱させるための米軍の道具だ」と言っている教授もいる。そこまで行くと、世界に自前の情報網がないと分らない。
 米国の安全保障を考えれば、中東と欧州とアジアで同時に3つの問題に対処するわけにはいかないだろう。その意味ではこの秋の日米ガイドラインの調整の行方が注目される。アジアの安全保障にとって最も大切なことは、ロシアを中国側に追いやってはならないことということだ。そこに日米共通の利益があることはハッキリしていると思う。
 ただオバマ政権は、中国との協調、ロシアとの対抗を意識しているようだ。チベットやウィグルで起きていることが、米国の価値観に合うとは思わないが、米国は伝統的に中国に騙されやすい国である。最近出たフォーリン・アフェアーズ誌にミアシャイマー教授が論文が書いていて、西側が攻勢をかけて、ロシアの恐怖心を煽ったことが、今回のウクライナ紛争を引き起こした原因であることを明らかにしていた。「合法的に選ばれたウクライナの前大統領をいびり倒し、最後は、アラブの革命のように武器を持つ街頭デモによって追い出した。これがプーチンにレッドラインを超えたと判断させた。プーチンは、西側が非合法で来るなら、こちらも非合法で対抗すると決意した」とみている識者もいる。自分も同様の見方だ。
 しかしこのところの米軍全体を見れば、毎年5兆円規模の予算の削減に対応し、軍事技術の発展もあるが、現実にはアジアシフトは行われずに、海空重視、米国回帰、中南米重視に動いていた。
 いずれにしても韓国や日本における米国の兵力の削減は、誰が米国大統領となっても、準備しなければならない事態である。日本について言えば、自衛隊の戦闘能力、技量は比較的高いものの、安全保障法制、交戦規程の準備、情報収集機関の整備と人材の育成、国民全体としての軍事常識の教育など、まだまだ普通の国になるためには準備を急がなければならないことが多い。

韓国との現在 2014年夏

都知事
 舛添都知事が7月に訪韓し朴大統領と面談した。都知事は、安倍首相のメッセージを預かってきたと言ったらしいが、親書も持たさずに、メッセージを預ける首相はいない。韓国の問題になると、都知事はいつもの分析のキレがなくなり説得力がないと思う。本人は自慢げだが、彼の行動を評価する人はほとんど聞かない。
慰安婦問題
 官房長官による河野談話の検証結果も報道され、それは本来、真実であるとかないとかは意味がなく、「外交的妥協の産物」であることが、改めて確認された。朝日新聞がこの8月5日、6日と「慰安婦問題」での弁明をついに始めた。水間政憲氏の戦前の朝日新聞アサヒグラフを使った一連の著作により現在の朝日新聞の嘘は既に幾つか証明されている。直前の産経新聞の阿比留記者の調査報道の影響も大きかったのだろう。慰安婦問題に限っても「強制性はなかった」が、「性奴隷という本質的な人権の問題は消えていない」と強弁を続けているが無理がある。更に言えば、少なくとも20年以上もこの問題を煽ってきた責任が全くとられていない。
朝日新聞の責任
 2つの責任がある。一つは、その誤報道の悪影響の是正である。報道の自由もあることから、司法や行政が責任を追及するわけにはいかないとすると、国会で集中審議をやって、この問題に対する国民の認識を一つにし、その誤報道の結果生じた認識の是正方法を国民として議論すべきと考える。
 もう一つは朝日新聞自体の責任である。最終的に経営陣を一新するような責任だけで済むのかどうかわからない。今は論点をずらしているだけで、何も謝罪をしていない。そのため朝日新聞が、別件について「嘘をつくな、責任をとれ、謝罪しろ」と書いても、おそらく「お前はどうした」といたるところで言われているはずだ。
 南京大虐殺の報道も是正も含めて、早く責任問題に終止符を打つべきと思う。他のメディアや評論家も、朝日新聞の不見識に無批判であったことの責任を問われざるをえないだろう。
光復節
 8月15日は隣の韓国では、1948年に3年間に及ぶ米国軍政から韓国が独立した日である。だが韓国では日本の植民地支配から解放された「光復節」だと主張している。ただ第二次大戦中、朝鮮人は日本人として連合国と戦った。特攻隊に志願して散った朝鮮人も少なくない。靖国神社には3万人の朝鮮人御柱が祭られている。だから戦時賠償の対象ではないし、連合国でもなかった。
 光復節の今年の式典で朴槿恵大統領は、日韓が2015年に国交正常化50年を迎えることにふれ、「慰安婦問題が解決されれば関係が進む」とし、日本の政治家の知恵と決断を期待すると述べたようだ。まだ日本に一方的な妥協と謝罪を要求しているようだ。
 韓国は何か勘違いしているのではないか。同じ問題で、しかもそれが嘘であることが明らかになりつつある問題で、どうして何度も謝罪させられ、お金をとられるのだろうと呆れている人が増えている。まして海外に根も葉もない銅像を建て、悪口を広め日本人子弟を差別させる原因をつくる国と妥協する日本の政治家がいれば、日本国民が許さないと思う。今韓国にしっぽを振っているのは、旧世代の政治家ばかりである。
⑤日韓関係
 韓国では、日韓首脳会談をすべきだという人が増えているようにみるが、日本では一部の政治家を除いてそうした人は少ないように思う。河野談話の検証で明らかになったように、河野談話は外交的妥協の産物であり、政治的決着だった。何度も同じ問題を蒸し返してくる外国とは交渉できないし交流できない。そのことを捉えて国交を断絶すべきと真顔で論じる人たちが日本で存外増えている。
 ヘイトスピーチには反対だが、感情的な問題を起こすよりは距離をおくべきと考える日本人が増えていると言った方が正確かもしれない。非韓三原則という言葉が一般的になりだした。つまり韓国については、「助けない、教えない、関わらない」という政策をとるべきという議論である。
⑥韓国の歴史教育
 現在の韓国の人々は、小学生の時から、偏った歴史教育反日教育を受けており、本当の歴史を知らない。正面切ってこう議論すれば彼らは煙を立てて怒るだろう。内政干渉だからだ。だが彼らは自分たちが自分たちの歴史観を日本に押し付け、内政干渉しているという意識がない。既に共通の歴史教科書をつくるというプロジェクトが何回も失敗しているのは、韓国に言論の自由がなく、歴史を政治の延長と考えているからだ。歴史教科書においては、歴史的事実よりも政治が大事という考え方は、日本には少ないと思う。
⑦米韓関係
 ワシントンDCの韓国人は10万人、中国人は7万人で日本人は6千人だという。少し前まで、米国さえ説得してしまえば、日本は言うことを聞くと中国・韓国は思っていたようだ。そしてそれはある程度真実だった。今までは日本の民主党政権の無能・無法が特にひどかった。日本政府は少ないなら少ないなりに広報のやり方を改めるべきと思う。安倍政権となって、少しずつではあるが、日本の外務省の人たちもやる気が出てきたように思われる。
 現在、米韓の間で議論されているのが、2015年の朝鮮半島有事の際の戦時作戦統制権の移管問題だ。時々新聞に載る。2007年2月に米軍が持っている戦時作戦統制権を韓国軍に移すことを決めたが、現在のところ2015年12月までに返還される予定だ。返還後、米韓連合軍司令部は解体され、各種作戦計画も練り直される。普通に考えれば、戦時作戦統制権が移管されれば、米国陸軍25千人の大部分が韓国から引き上げるだろう。それに対する警戒感が現在の韓国には少し出てきたようだ。韓国は再度延期したいとしているが、最終的にはどうだろうか。韓国は既に中国の影響下にあり、経済も中国に依存している。日本の態度が悪いから、中国と付き合うのだと米国に言って、それで通るのだろうか。
 現在の韓国の対外政策の基調を端的に考えれば、米国は次に起きる北朝鮮との第二次朝鮮戦争を防ぐための存在であり、中国は北朝鮮をコントロールする存在であり、日本は様々なことを理由に、資金や技術を出させる存在だと思っているようだ。
 「韓国は日本をなめている」というのが、ついこの間まで日韓関係に非常に穏健な見方をしていた韓国専門家のコメントである。日本における韓国の味方はどんどん少なくなりつつあると思う。

まだまだ続く「歴史の見直し」

 今月の初めの朝日新聞慰安婦に関する「強制連行」の記事取消は、北朝鮮が「拉致問題」を認めた時と同じかそれ以上の衝撃で、「歴史の見直し」をすすめていくことになるのではないだろうか。戦争を礼賛する訳ではない。戦争の真実がわからないと、次の戦争を防ぐことが出来ないからだ。
 日本の歴史叙述はまだ真面な方だと思うが、それでも現代史の本を読んでいると、多くの矛盾と間違いに気が付くことがある。新しい仮説を証明しても、世の中の通説を覆すことはかなり難しい。強制連行がなかったことはもう20年以上前に証明されていた。吉田という人もそれが嘘であることを認めていたからだ。
 何故これからも、まだまだ歴史の見直しが続くかと言うと、見直されるべき事実が幾つか控えているからだ。例えば、日本軍による「南京大虐殺」である。すでに数年前に記念館にある写真の全てが偽物であることを証明されている。ただ南京は支那の歴史の中で何度も虐殺起きた虐殺の地だという。日本軍にそのイメージをカブセたのだった。「性奴隷」という言葉も酷い。日本の歴史に奴隷制度はなかったと言われているが、奴隷制度の本家本元の国々が日本を奴隷制度で攻撃している。そんな歴史の嘘を鮮やかに証明して見せたのが、水間政憲さんの一連の著作である。戦前の朝日新聞アサヒグラフを資料として、現在の歴史の幾つもの嘘と真実を証明してしまった。だがそれが通説になるにはまだ時間がかかりそうだ。
 現代史の叙述は、現実の政治に左右されやすい。左右を問わず、今も賠償利権や謝罪利権をあさる人々がいる。占領史観やコミンテルンの影響下にあった恩師の見解を大事にしている歴史家もいる。事なかれ主義で他社の間違えを指摘しないメディアもある。過去は水に流して未来志向で行こうといって、何度も騙される国もある。日本にも、韓国にも、米国にも立派な人はいっぱいいるのに、なぜか、その人たちの声が消え、歴史の不当な評価を受けがちである。
 李完用閣下は、現在の韓国においては親日派売国奴の代名詞だ。盧武鉉政権下で、その子孫は政府に土地を没収されている。だが、彼は根っからの親日派ということは全くない。1896年に高宗をロシア公館に避難させ、その奇策に、小村寿太郎勝海舟をして、敵ながらあっぱれと感心させた政治家だった。しかしその後、ロシア公使と対立し、日露戦争勃発後は親日派となった。
 「庇護を求める国を転々と変えるオポチュニストのようにもみえるが、じつは、弱小国韓国として、その場でそれしかないレッサー・イヴル(次善の策)を選んだ。・・・李完用が、いずれは韓国が列強に併合される客観的状況は認めつつも、ロシアの専制よりも、伊藤の開明的支配に期待した」というのが岡崎研究所岡崎久彦さんの評価だ。
 李完用閣下は、親日派となってからも、日本語はけっして学ばず、日本語で会話したことはなかったという。1926年に亡くなったが、国葬でもないのに彼を惜しむ葬列は数キロに達したという。

17条憲法を読む

 英国には憲法がない。体系的な憲法をつくらず、議会の決議や裁判所の判例、国際条約などをから、国家に関するものを英国の憲法に相当するものとして扱う。英国では、1215年のマグナ・カルタから始まるらしい。「長く国民の生活を律してきた伝統および常識こそが法」というエドマンド・バークが生まれた国である。
 そうだとすると、日本では604年の聖徳太子の17条憲法を読むことから始めなければならない。自分は冒頭の3条をなんとなく思い出すのがやっとだった。改めてこれを読むと、実に面白い。経営学の教科書を読むようだ。17条毎に名称を付けてみた。

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一 和をもって貴しとなす Harmony should be valued
 和をなによりも大切なものとし、いさかいをおこさぬことを根本とせよ。人はグループをつくりたがり、悟った人格者は少ない。そのため君主や父親のいうことにしたがわなかったり、近隣の人たちともうまくいかない。しかし上の者も下の者も協調・親睦の気持ちをもって論議するなら、ものごとの道理にかない、どんなことも結論が決まる。

二 三宝  Respect the three treasures
 あつく三宝を大事にしろ。三宝とは仏・法理・僧侶のことだ。それは生命ある者の最後のよりどころであり、すべての国の究極の規範である。どんな世の中でも、いかなる人でも、この法理を大事すべきだ。人間には、はなはだしく悪い者は少ない。よく教えるならば正道にしたがう。その為には仏の教えに帰依しなければ心をただせない。

三 詔(みことのり) Obey an imperial order certainly
 天皇の命令をうけたならば、かならず謹んでそれにしたがえ。君主はいわば天であり、臣下は地にあたる。天が地をおおい、地が天をのせている。かくして四季がただしく巡りゆき、万物の気がかよう。逆に地が天をおおうとすれば、こうしたととのった秩序が破壊されてしまう。君主がいうことに臣下はしたがえ。上の者が行うことに、下の者はならうものだ。だから天皇の命令をうけたならば、かならず謹んでそれにしたがえ。謹んでしたがわなければ、やがて国家社会の和は自滅してゆくことだろう。

四 礼の精神  Be based on courtesy
 政府高官と職員は、礼の精神を根本に持たなければならない。国民をおさめる基本は、礼にある。上が礼法にかなっていないときは下の秩序はみだれ、下の者が礼法にかなわなければ、かならず罪をおかす者が出てくる。群臣たちに礼法がたもたれているときは社会の秩序もみだれず、国民に礼があれば国全体として自然におさまるものだ。

五 賄賂の禁止 Prohibit the officers from receiving bribes
 官吏たちは饗応や財物への欲望をすて、訴訟を厳正に審査しろ。庶民の訴えは、1日に1000件もある。1日でもそうなら、年を重ねたらどうなろうか。このごろの訴訟にたずさわる者たちは、賄賂をえることが常識となり、賄賂をみてからその申し立てを聞いている。すなわち裕福な者の訴えは石を水中になげこむように、たやすくうけいれられるのに、貧乏な者の訴えは水を石になげこむようなもので容易に聞きいれてもらえない。このため貧乏な者たちはどうしたら良いかわからない。そうしたことは官吏としての道に背くことである。

六 勧善懲悪 Encourage the good and punish the evil
 悪をこらしめて善をすすめるのは、古くからのよいしきたりだ。善行は隠すことなくく、悪行をみたら必ずただせ。へつらいあざむく者は、国家をくつがえすものであり、国民をほろぼす剣である。また媚びへつらう者は、上には下の者の過失をいいつけ、下にむかうと上の者の過失を誹謗するものだ。彼らは君主に忠義心がなく、国民に対する仁徳をもっていない。それは国家の大乱のもとである。

七 適材適所 A wise person must be appointed suitable job
 人にはそれぞれの任務がある。職務内容を忠実に履行し、権限を乱用してはならない。賢明な人物が任にあるときは賞賛する声がおこる。よこしまな者がその任につけば、災いや戦乱が充満する。世の中には、生まれながらにすべてを知りつくしている人はまれで、よくよく心がけて聖人になっていく。事柄の大小にかかわらず、適任の人を得られればかならずおさまる。時代の動きの緩急に関係なく、賢者が出れば豊かにのびやかな世の中になる。これによって国家は長く命脈をたもち、あやうくならない。だから、いにしえの聖王は官職に適した人をもとめるが、人のために官職をもうけたりはしなかった。

八 勤勉 Come to the office early in the morning and must work till late.
 官吏たちは早くから出仕し、夕方おそくなってから退出しなさい。公務はうかうかできないものだ。一日かけてもすべて終えてしまうことがむずかしい。おそく出仕したのでは緊急の用に間にあわないし、はやく退出したのではかならず仕事をし残してしまう。

九 真心 Faith is the foundation of justice
 真心は人の道の根本である。何事にも真心がなければいけない。事の善し悪しや成否は、すべて真心のあるなしにかかっている。官吏たちに真心があるならば、何事も達成できるだろう。群臣に真心がないなら、どんなこともみな失敗するだろう。

十 我ら凡人 All of us are mediocre people
 心の中の憤りをなくし、憤りを表情にださぬようにし、他の人が自分と異なったことをしても怒ってはならない。人それぞれに考えがあり、それぞれに自分がこれだと思うことがある。相手がこれこそといっても自分は良くないと思うし、自分がこれこそと思っても相手は良くないト思うものだ。自分はかならず聖人で、相手がかならず愚かだというわけではない。皆ともに凡人なのだ。そもそもこれが良いとかよくないとか、誰が定めうるのだろう。お互い誰も賢くもあり愚かでもある。それは耳輪には端がないようなものだ。こういうわけで、相手がいきどおっていたら、むしろ自分に間違いがあるのではないかとおそれなさい。自分ではこれだと思っても、みんなの意見にしたがって行動しなさい。

十一 信賞必罰  Make clear rewards and punishments with responsibility
 官吏たちの功績・過失をよくみて、それにみあう賞罰をかならずおこないなさい。近頃の褒賞はかならずしも功績によらず、懲罰は罪によらない。指導的な立場で政務にあたっている官吏たちは、賞罰を適正かつ明確におこなうべきだ。

十二 法定徴税主義 Don't impose a tax except official taxes
 国司、国造は勝手に国民から税をとってはならない。国に2人の君主はなく、国民にとって2人の主人などいない。国内のすべての国民にとって、天皇だけが主人である。役所の官吏は任命されて政務にあたっているのであって、みな臣下である。どうして公的な徴税といっしょに、国民から私的な徴税をしてよいものか。

十三 職掌熟知 Understand all your duties fully
 いろいろな官職に任じられた者たちは、前任者と同じように職掌を熟知するようにしなさい。病気や出張などで職務にいない場合もあろう。しかし政務をとれるときにはなじんで、前々より熟知していたかのようにしなさい。前のことなどは自分は知らないといって、公務を停滞させてはならない。

十四 嫉妬は厳禁 Don't envy the others for their intelligence and talent
 官吏たちは、嫉妬の気持ちをもってはならない。自分が嫉妬すれば、相手もまた自分を嫉妬する。嫉妬の憂いははてしない。自分より英知がすぐれている人がいることをよろこばず、才能がまさっていると思えば嫉妬する。それでは500年たっても賢者にあうことはできず、1000年に1人の聖人の出現を期待することは困難である。聖人・賢者といわれる優れた人材がなくては国をおさめることはできない。

十五 私心を去る Concentrate on official duties without one's own desire
 私心をすてて公務にむかうのは、臣たるものの道である。およそ人に私心があるとき、恨みの心がおきる。恨みがあれば、かならず不和が生じる。不和になれば私心で公務をとることとなり、結果としては公務の妨げをなす。恨みの心がおこってくれば、制度や法律をやぶる人も出てくる。第一条で「上の者も下の者も協調して親睦の気持ちをもって論議しなさい」といっているのは、こういう心情からだ。

十六 適時動員 Employ the people for public duties at better seasons.
 国民を使役するにはその時期をよく考えろというのは、昔の人の良い教えである。だから冬に暇があるときに、国民を動員すればよい。春から秋までは、農耕・養蚕などに力をつくすべきときである。国民を使役してはいけない。国民が農耕をしなければ何を食べていけばよいのか。養蚕がなされなければ、何を着たらよいというのか。

十七 独断を禁ず Discuss with others when you make an important decision
 物事はひとりで判断してはいけない。かならずみんなで論議して判断しなさい。些細なことは、かならずしもみんなで論議しなくてもよい。ただ重大な事柄を論議するときは、判断をあやまることもあるかもしれない。皆で検討すれば、道理にかなう結論がえられよう。

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 1400年以上前の憲法だが、今も新鮮であることに驚かされる。

胸突き八丁、試練の秋

 7月17日のマレーシア航空機の撃墜事件以来、米国を中心とするロシア孤立化政策がまたすすみ出したかのような報道が続いている。はたしてどこまで欧州がついていけるのだろうか。事の善悪・適否・好悪を別にすれば、米国政府や指導者がロシア非難に使っている言葉が10年ほど前に起きたチューリップやバラと名付けられたカラー革命の頃と全く同じであることに驚かされる。狙いも同じなのだろうか。
 中国の腐敗撲滅に名を借りた権力闘争は如何やら最終局面を迎えているらしい。石油閥の親玉である前常務委員の周永康氏が立件告発された。ここで終わりになるのか、その後ろにいる江沢民氏まで行くのかが注目が集まっている。江沢民氏が入院したとの情報もあるようだ。このクラスになると、不正の金額が「兆円」単位だ。中国の報道を読んでいて、中国は全く変わってないことに驚かされる。日清、日露の戦争の頃の清朝の大物政治家だった李鴻章は、日露戦争前に、秘密裡に満洲をロシアに売渡し、その巨額な代金を着服し、子孫は名前を変えて米国で大金持ちとして生活しているという。一方で、ウィグル人の反発抵抗は激化していることは明らかだが、厳格な報道規制もあって日本のメディアではあまり報じられていない。
 日本においては、左派のメディアの総力を挙げた悪宣伝によって、安倍政権の支持率は再び10%程度下落したものの、ついに公明党を抱えたまま、集団自衛権の行使容認を閣議決定した。しかし中国、韓国と日本の左派以外は、これを評価しているようだ。安倍政権が支持率を大きく下げたのは2度目だが、その前は特定秘密保護法だった。その施行細則が決まった後で考えると、特定秘密の対象は、どれも当然に秘密とすべき内容で、外国のスパイでもなければ国民が知る必要もない事項ばかりだった。興味深かったのは、その特定秘密法と前後して、ベネッセの個人情報流失問題が取り上げられていたことだった。どのキャスターも矛盾を感じなかったのようだ。個人情報より国家秘密を一層厳重に管理すべきであることは当然である。
 菅官房長官が進めていた河野談話の検証結果が発表された。河野談話は日韓両国の政治的な妥協の産物であることが改めて確認された。河野氏自身も、それ以上でも、それ以下でもないことを改めて認めた。この事案を論理的に先に進めるとすれば、国会が河野氏を喚問して、2つのことを質問すべきと考える。河野談話を発表した時の記者会見で、なぜ本文以上のことを言ったのか。また外務大臣を務めた時に、国連人権委員会で「性奴隷」との断定がなされようとしたときに、事務方で完全に出来上がっていた反論をなぜ止めたのかということだ。
 さてこれから、8月の終わりから9月にかけて北朝鮮の調査委員会の一回目の報告がなされ、拉致被害者や特定失踪者が返されることが期待されている。はたして最後の一人まで取り戻すことが出来るだろうか。小細工が弄されずに完全にその問題が解決されれば、日本国民の北朝鮮に対する態度は大きく変わるだろう。米国の国務長官が、報告だけではなくて、事前に自分に相談しろと言ってきたという。これからもその圧力は強まるだろう。だがこの問題に関する米国の学者の意見など日本人は誰も聞きたくはない。
 9月の初めには内閣改造がなされるという。そしてロシアのプーチン大統領は予定通り来日するだろうか。はたして北朝鮮、ロシアとの国交正常化交渉は、どのような形で始まり、どこまで進むのだろうか。日本にとっては胸突き八丁、試練の秋である。