胸突き八丁、試練の秋

 7月17日のマレーシア航空機の撃墜事件以来、米国を中心とするロシア孤立化政策がまたすすみ出したかのような報道が続いている。はたしてどこまで欧州がついていけるのだろうか。事の善悪・適否・好悪を別にすれば、米国政府や指導者がロシア非難に使っている言葉が10年ほど前に起きたチューリップやバラと名付けられたカラー革命の頃と全く同じであることに驚かされる。狙いも同じなのだろうか。
 中国の腐敗撲滅に名を借りた権力闘争は如何やら最終局面を迎えているらしい。石油閥の親玉である前常務委員の周永康氏が立件告発された。ここで終わりになるのか、その後ろにいる江沢民氏まで行くのかが注目が集まっている。江沢民氏が入院したとの情報もあるようだ。このクラスになると、不正の金額が「兆円」単位だ。中国の報道を読んでいて、中国は全く変わってないことに驚かされる。日清、日露の戦争の頃の清朝の大物政治家だった李鴻章は、日露戦争前に、秘密裡に満洲をロシアに売渡し、その巨額な代金を着服し、子孫は名前を変えて米国で大金持ちとして生活しているという。一方で、ウィグル人の反発抵抗は激化していることは明らかだが、厳格な報道規制もあって日本のメディアではあまり報じられていない。
 日本においては、左派のメディアの総力を挙げた悪宣伝によって、安倍政権の支持率は再び10%程度下落したものの、ついに公明党を抱えたまま、集団自衛権の行使容認を閣議決定した。しかし中国、韓国と日本の左派以外は、これを評価しているようだ。安倍政権が支持率を大きく下げたのは2度目だが、その前は特定秘密保護法だった。その施行細則が決まった後で考えると、特定秘密の対象は、どれも当然に秘密とすべき内容で、外国のスパイでもなければ国民が知る必要もない事項ばかりだった。興味深かったのは、その特定秘密法と前後して、ベネッセの個人情報流失問題が取り上げられていたことだった。どのキャスターも矛盾を感じなかったのようだ。個人情報より国家秘密を一層厳重に管理すべきであることは当然である。
 菅官房長官が進めていた河野談話の検証結果が発表された。河野談話は日韓両国の政治的な妥協の産物であることが改めて確認された。河野氏自身も、それ以上でも、それ以下でもないことを改めて認めた。この事案を論理的に先に進めるとすれば、国会が河野氏を喚問して、2つのことを質問すべきと考える。河野談話を発表した時の記者会見で、なぜ本文以上のことを言ったのか。また外務大臣を務めた時に、国連人権委員会で「性奴隷」との断定がなされようとしたときに、事務方で完全に出来上がっていた反論をなぜ止めたのかということだ。
 さてこれから、8月の終わりから9月にかけて北朝鮮の調査委員会の一回目の報告がなされ、拉致被害者や特定失踪者が返されることが期待されている。はたして最後の一人まで取り戻すことが出来るだろうか。小細工が弄されずに完全にその問題が解決されれば、日本国民の北朝鮮に対する態度は大きく変わるだろう。米国の国務長官が、報告だけではなくて、事前に自分に相談しろと言ってきたという。これからもその圧力は強まるだろう。だがこの問題に関する米国の学者の意見など日本人は誰も聞きたくはない。
 9月の初めには内閣改造がなされるという。そしてロシアのプーチン大統領は予定通り来日するだろうか。はたして北朝鮮、ロシアとの国交正常化交渉は、どのような形で始まり、どこまで進むのだろうか。日本にとっては胸突き八丁、試練の秋である。