離島奪還訓練の中止と尖閣諸島の価値

 11月3、4日の共同通信世論調査で野田政権に対する支持率が11.5%下がり17%台となった。もう一つ唖然とすることが報じられた。11月5日から16日まで行なわれる日米共同演習で、沖縄県無人島で計画されていた離島奪還訓練が岡田副首相の中国へ配慮すべきという主張から中止になったという。共同演習自体は、南西諸島の防衛を想定した洋上訓練となり、全面非公開で行われているという。
 離島奪還訓練が中止になったことについて、米国の国務次官補は強い不快感を示したというが、当然だろう。中国従属派の前中国大使の起用を進めたのもこの副首相だった。
 尖閣諸島では、連日のように中国の公船による領海侵犯が続いている。既に侵略は始まっており、平時ではなく準戦時となりつつあるのではないか。軍事的衝突はないものの、中国は、中国国内での反日行動や外交上の激しい言葉による威嚇で日本に領有権を放棄させる行動が続けることは間違いがない。だから中国にある3万社の日系企業、13万人の邦人、そこで働く1000万人の従業員にとっては落ち着いてはいられないだろう。しかしここで威嚇に動揺し、譲歩をすれば、さらなる攻勢や侵略を招くとみるのが常識である。
 米国にとっての最悪の事態は、日本が反日デモなどに脅かされ、尖閣諸島の主権に関する譲歩をして、中国の進出や侵略を許し、抵抗をしないままに、尖閣を失っていくというシナリオだという。
 尖閣諸島の価値は、その周辺資源だけにあるのではなく、その地理的な位置自体にあるようだ。尖閣は、台湾有事の際に米軍が応援に駆けつけるルートを制する位置にあり、台湾は、日米両国の中東やインド洋から太平洋へ至る海上輸送路でもある南シナ海の出入り口に位置している。
 もし尖閣諸島が中国軍の支配下に入ると、日本は従来の海上輸送路から切り離されてしまう。また南シナ海と台湾東方にある深い海域が中国の支配下に入ると、そこは中国の戦略原子力潜水艦の聖域となってしまう。
 尖閣諸島にはもう一つ別の価値があるというのが、鳥居民さんの見方だ。8月の尖閣諸島上陸事件の騒ぎで、その前後に行なわれた薄氏夫人の裁判は目立なかった。単なる殺人事件として処理した。薄氏の正規所得は20万元、米ドル換算では2万8千ドルなのに数十億ドルの資産が海外にあるという事実から眼を逸らしたかったという。204人の中央委員のうち187人の直系親族6百人が欧米で暮らし、中にはその国籍を取得している人も多いこと、そして、ここ数年の欧米の高級住宅地の最大の顧客は中国人であるという事実から眼を逸らしたかったというのである。
 もうすぐ最高指導者になる習近平氏は、4月に党の上級幹部の会議で、子弟子女を海外に移住させ二重国籍を持たせている「裸官」を批判し、中国は「亡党亡国」の危機にあると警告したという。日本は、その余波で「存亡」の危機を迎えた。まさしく中国は大国である。