ウクライナの混迷が長期化することの意味

 昨年の秋の時点で、EUウクライナのような貧乏な国が構成国に増えるのを望んでなかったと想像される。歴史的な経緯からロシアが怒るのも理解していた。ウクライナのヤヌコビッチ前大統領は、EUと交渉してみてもお金がでないのに呆れていた。一方、ロシアの方がウクライナを自陣営にとどめるための好条件を提示していた。
 政権打倒を望んでいたのは、ウクライナ西部の過激派と米国だった。この2つが結びついて政変が起こった。そして、その過激派を排除してIMFが乗り込んでくる。IMFは米国の別動隊だ。緊縮財政が強いられる上に、ロシアの金融支援はなくなる。ウクライナは主としてウクライナ語を話す西部地域とロシア語を話す東南部地域に分かれる。西部地域はEUに共感を感じている地域であり歴史的にもポーランドとも関係が深い。東南部地域は宇宙航空産業とロシアの軍需産業がある工業地域である。あまりメディアで論じられない黒海北部にある海底資源は、クリミヤの周辺とウクライナ東南部にある。
 オバマ大統領が発した「(ロシアを)孤立させてやる」といった発言を感情におぼれた不規則発言とみる人もいる。たしかに、短期的には、シリアでの外交的な威信の低下もあり、中間選挙前にロシアに参ったといわせたいという気持ちもあるとは思うが、もし米国がウクライナの問題を長期化することに意味があると考えていると話は違ってくる。
 ヨーロッパのロシアへのエネルギー依存は長期的に減り、ロシアは経済制裁によって長期的にガタガタになる。米国を中心とするシェールガス革命によって価格が低下するとみられていたエネルギー資源は高止まりし、ヨーロッパの軍事支出は再び増大される。米国は軍事力を行使しないと宣言しているので、漁夫の利を受ける。
 現時点ではっきりしていることは、ウクライナの暫定政権は、行政府を住民が占拠し、米国がヤヌコビッチ前大統領に武力鎮圧をしないように働きかけた結果、旧政権が過激派に圧迫されて逃げ出して崩壊した後にできた政権であることである。
 当初、暫定政権はロシアを公用語から外す政策をとろうとした。そうなれば、東南部地域の住民はロシア語を使っているので「公務員や社会の主導的な立場から外される」という可能性があった。ロシアの外相が、言語、文化、社会経済的な権利と要求を尊重するべきだとしているのはそのことを指している。
 仮にウクライナが2つに分裂したところで、エネルギー資源のない西部地域の面倒を誰が見るのだろうか。そうであるならば、当面、連邦制に移行して、この地域を安定させること、無駄な争いをしないことが、この紛争の落ちどころであるように思えてならない。ロシアはそう考え読み切っていると感じられるコメントに終始しているが、米国はロシアの全面的な屈服を求めているように見える。自分の考えが的外れであることを願っている。