2014年後半の見通しと覚悟

 4月の半ばから、しばらくブログを書くのがなんとなく億劫になっていた。外国のこととはいえ、何も手を打たずに、300人以上の方が亡くなる韓国珍島でのフェリーの痛ましい沈没事故の報道を延々とテレビ・ニュースで見させられたこともある。報道された事実をみると、嫌韓本と言われるものに書かれていることが事実である事が次々論証されたような印象を受けた。被害者代表として発言していた人が被害者と無関係だということがわかったり、真っ先に船から逃げ出す船長の映像は衝撃的だった。安全管理に問題があるとは聞いていたが、その点においては全く信用できないことが明らかになった。
 オバマ大統領のアジア訪問があり、日本政府は結果良しとしたようだが、米国との関係の難しさを改めて実感した日本国民は多かったのではないだろうか。南シナ海では、5月末にはベトナム漁船が40隻の中国漁船にとり囲まれ、体当たりされ、沈没させられた。また公海上空で情報収集にあたる日本の自衛隊機に対し、中国戦闘機が30mまで接近する事件が起きた。当初は中国軍の統制がとれなくなっているとの説もあったが、今は指導部自身が現実的な判断することが出来なくなっているとの見方が有力である。困ったことは、日米に対し挑発的で危険な行動をとった軍人が中国軍の中で昇進していることだ。そのこと自体がアジアを一層危険にしている。北京ではすでに動乱に備えて武装車両を前面に出しての市中警備が始まったという。
 オバマ政権は当初、中国が日本を挑発しているのか、それともその逆なのかがわからなかったようだが、ここにきて、ようやく中国の危険性に気が付いた。シンガポールで行われた安全保障に関するシャングリラ会合での安倍首相の演説が良かった。「日本は、法の支配のために。アジアは、法の支配のために。そして法の支配は、われわれすべてのために。アジアの平和と繁栄よ、とこしえなれ。」と締めくくったようだ。強引な中国のやり方に、半年前と比べてもASEANがまとまりつつある様な気がした。
 6月初めのブリュッセルでロシアを除いたG7が行われた。中国の現実の行動と発言の後押しもあり、極東情勢に関するサミットの「対中宣言」は安倍首相がリードしたのではないだろうか。またロシアをこれ以上孤立させることなく、責任ある国家として国際社会に関与させることが重要であることはヨーロッパにおいては明確な流れとなっているのではないだろうか。そのあとのノルマンジー上陸70周年記念の式典に前後して、プーチン大統領は欧州各国の首脳と会談し、米国大統領と立ち話をしたことが報じられている。G7の後、安倍首相はイタリアにまわり、イタリアの首相と会談するとともに、ローマ教皇台下にお会いし、2015年の訪日を要請したという。
 5月の末には、日本と北朝鮮スウェーデンで行っていた会合で、北朝鮮拉致被害者の全面調査を約束したという。北朝鮮国内でも同様の報道がなされているところから、事態は少し解決に向けて進みそうだ。確たる成果が期待できれば、日本は独自に課している上乗せ制裁の部分を解除することになるという。北は、米と医薬品がほしいようだ。岸田外相は、上手くいけば安倍首相が北朝鮮を訪問する可能性もあるという。北朝鮮は、事実上の庇護者だった中国と冷戦状態にあり、韓国との関係も最悪だという。中国が韓国の大統領を先に中国に招いたことにも腹を立てているようだ。
 6月に特別調査委員会が立ち上げ、1ー2か月で外相会談で北朝鮮からの調査結果が提示され、早ければ8ー9月にも安倍訪朝があるという。すでに「万景峰号」は北部の自由貿易都市「羅先」に回航され、大規模補修工事に取りかかっているという。もし本当に全面的に拉致被害者、特定失踪者全員が帰ってくれば、日本と北朝鮮との国交回復交渉が始まるのではないだろうか。多くの人が忘れており、また本当に腹立たしいことでもあるが、1965年の日韓基本条約においても、その交渉を最終的に促進させたのは、李承晩ラインで韓国に不当に拿捕された日本人漁民の解放だった。
 9月に安倍訪朝が実現すればその勢いを借りて、選挙制度の改定の結果を踏まえた総選挙を行うことも検討しているようだ。多弱と言われる野党が再編の動きを早めているのも、この動きを踏まえたものだという。基本的にはこの総選挙で安倍政権の優位は動かないとみる。維新の会は、橋下グループ37名と石原グループ23名に分離した。はたして橋下グループは民主党前原グループと合流して大きな政治の流れを作り出せるだろうか。焦点は、今年行われる総選挙ではなくて、次の参議院選挙にあることははっきりしている。
 11月にはロシアのプーチン大統領が日本にこられる。5月末には33人の日本の国会議員が、ロシアのサハリン島のガス田から東京近郊まで天然ガスを運ぶパイプラインを検討していることが報じられた。以前に大阪の中山太郎先生が取組まれたプロジェクトである。個人的には、それに加えてシベリア鉄道を北海道に延伸することも含めて極東ロシアと日本の経済活性化策を一緒にやるべきだと思えてならない。そのことによって、モンゴル、カザフスタンウズベキスタンキルギスタンタジキスタントルクメニスタンといった国々との交流も深まり、ヨーロッパとの物流コストも大幅に引き下げられるのではないだろうか。産業を創造し、雇用を作り出すというアベノミクスの本当の3本目の矢は、ロシアにあるというのが自分の見方だ。そうした検討の中で初めて、北方領土について何らかの進展が期待されるのではないだろうか。出来うるならば、そのプロジェクトを本当の意味で国際的なものにして、日本に友好的な多くの国々の参加を促していくことが必要である。
 気がかりは、中国が日本の法体制整備が整わないうちに、偽装漁民を尖閣諸島に送り込んでくることだ。安倍首相が集団的自衛権の解釈変更を急いでいる理由はそれ以外にない。実力で戦えば、自衛隊が中国に負けることなどはありえない。早急に防衛費を積み増し、予備自衛官の充実を図るべきと考える。そのことが、最大の防災対策にもなる。日本が拉致問題を解決して北を支援し、ロシアの経済を強化することは、中国の覇権拡大を妨害する策ともなる。中国は先日、ロシアから天然ガスを長期輸入する契約を結んだが、そのことによって、中露の結束を防ぐために、日本がロシアから天然ガスを買うという理由も明確になった。そのことは日本の天然ガスの購入価格の適正化も促すことになるだろう。