正義のための戦争をしてはならない

 3月19日に硫黄島で69年前に敵味方に分かれて死闘を繰り広げた日本とアメリカが、合同で戦没者の慰霊祭を行ったという。日本軍の死傷者23千人、米軍の死傷者29千人。日本側のほうが少ないようだが、日本側は22千人、米側は7千人が亡くなっている。本年から遺骨収集が加速するはずだが、レーダーサイトの建設が先になるようだ。硫黄島は空母艦載機の発着訓練に用いられており、年間3000機以上の航空機が飛来する。これにより小笠原諸島の防衛防空は飛躍的に向上すると思われる。
 オランダのハーグの核安保サミットで日米韓首脳会談が開かれるようだ。北朝鮮への対応を話し合うとのことだが、日韓首脳会談は見送られるらしい。米国は、オバマ大統領の4月訪日のとり止めをちらつかせて河野談話見直しをしないと約束させたという。米国に言われれば仕方がないが、特に韓国と話すことなどないのではないか。正直に言って、法律や条約を守らない韓国と、どこに「共通の価値観と利益」があるのか良くわからない。米軍には義理があるということだけだろう。
 G7が開かれるかどうかはわからないが、ウクライナの件でオバマさんを誰が止めるのだろう。ウクライナの暫定政権の中の過激派は「ロシアを困らせるため、ウクライナを通るガスパイプラインを破壊しよう」と言っているようだ。そんなことをいう人たちのために、お金を出して戦争をさせるのだろうか。6万人に軍事訓練をして親衛隊を作るという。彼らが、国内のロシア系の弾圧を始めれば、誰もが望んでいない内戦が始まる。
 「前進すると困難が増大し、退くと著しく名誉を損ずるようなところに国家をもって行ってはならない」というのが国際政治学のモーゲンソーの教えだった。「正義のための戦争をしてはならない」というのが悲惨な戦争の歴史を経た国々の知恵だ。正義の旗の下では悪とは交渉はできないので、相手が無条件で降伏するまで戦うことになる。中立も許さず、中立は敵とみなすということになる。米国がそういう状態に入り込まないように願っている。相手に無条件降伏を求めれば、あまり良い結末は期待できない。
 米国内では、シリアの外交官が国外退去となったようだ。シリアとの外交関係は維持するといっても、相手の外交官がいなければ国交断絶と同じである。ロシアは在米シリア大使館の閉鎖命令はシリア和平の「共同保証人」の地位を放棄していると米国を批判している。シリアはロシアとイランの下で安定し、イラクも反米的なスタンスとなりつつある。トルコも、ロシアやイランに接近する傾向にあり、中東でロシアの影響力が拡大している。おそらくサウジアラビアイスラエルもギリギリしているのではないだろうか。気に入らないからと言って外交ルートを切断しては次の話し合いができない。
 大胆な見方だが、もしかしたら米国は「攻勢終末点」を迎えたのかもしれない。20世紀に入ってからの米国はずっと上り坂だった。「攻勢終末点」とは、その地点で、勢いが止まり、そこからは退却に退却を重ねるざるを得ない地点のことである。長い間、戦争をしていると戦争をしている相手と考え方が似てくるという。無人機で抵抗できない相手を攻撃していると、相手が何を考え、どう反応するかなど気にならなくなってしまうのかもしれない。テロを相手にしているとテロのような考え方になりがちである。そうなってはいないことを信じたい。