時論 2014年3月

 ソチではパラリンピックが始まり、日本の選手が大健闘している。救難信号も出さずに行方不明となったマレーシア航空機はまだ見つかっていない。自衛隊も捜索に協力するという。3月10日は東京大空襲の日であり、3月11日は東日本大震災の日だ。あれから3年がたった。
 ウクライナ情勢の混とんとしてきた。クリミヤの議会はウクライナからの独立を宣言し、ウクライナはそれを否定している。国家安全保障局の谷内局長が12日から3日間の日程でロシアを訪問し、モスクワでパトルシェフ安全保障会議書記らと会談し、ウクライナ情勢を巡り、日本を含む米欧などG7の考え方を伝えるという。日本はクリミア問題でEUや米国に全面賛同しなければならぬ義理はない。話し合いを促す側に回るべきだと思っていた。ヨーロッパでは共産体制であろうとなかろうと、ロシアはやはりロシアであり、怖いというイメージあるらしい。
 中東の湾岸諸国でもカタールが周りの国から孤立しているようだ。それはカタールが中東の反体制派を支援しているからだという。日本の経常収支の大幅悪化が伝えられている。原子力発電を止めているために毎日100億円の国富が流失している。日本はLNGの2割弱をカタールから輸入している。天然ガスの値段について言うと、米国の取引価格を1とすると、欧州は2倍、日本は3倍の値段となっている。いずれにしてもカタールに対する動きに留意しなければならない。
 3月24-25日にオランダで開かれる核セキュリティーサミットで、日米韓の首脳会談開催が検討されつつある。外務省の斎木事務次官がソウルで韓国側と面談するという。米国は4月のオバマ大統領のアジア歴訪に向け日韓関係の改善を促している。河野談話の見直しはしないが、慰安婦問題の検証は行うというのが日本の立場だという。
 検証を行えば、慰安婦問題の根拠がなくなるので検証するなという反対者も日本にいる。村山元首相自身も最近の発言を読む限り「強制性」は認めていない。しかし彼の内閣にも責任がある。それは村山内閣の外務大臣河野洋平氏だったことだ。ジュネーブ人権委員会で日本が戦時に「性奴隷」を使っていたとの非難を受けることとなった時の外務大臣である。これに対して、きちんとした反論書ができていたにも関わらず、反論することを禁じたことが、その後の多くの結果をもたらした。その判断の誤りが、現在米国その他で「慰安婦」問題として在留邦人が、攻撃される根拠となっている。官房長官談話を出しジュネーブ人権委員会での反論をやめさせたのが河野外務大臣だった。思想の是非は問うべきではないが、少なくとも事実についての説明を求めるべきと思う。
 東日本大震災からの復興の遅れは、土地の所有権確定に起因する問題が多いことが多くの番組で指摘されていた。昨年もそうだった。現在の土地の所有者とその連絡先がわかないために、許諾が取れず、いじれない土地が多い。新たな土地収用法を定めることが必要なのかもしれない。標準的な対価の査定・支払い方法を決めるとともに、災害復興、公共工事、国防上の必要などの目的に限定して土地の私権を制限できれば、その他の多くの行政上の問題も含めて解決できるのではないだろうか。立法府の為さざるの責任を問いたい。
 沖縄では、3月2日の石垣市市長選挙において現職が左派の候補に大差をつけて再選された。左派の候補が、自衛隊の配備反対を打ち出したことも、その結果に影響していると聞いた。2月の半ばに始まった沖縄県議会では、仲井間知事が辺野古埋立を認めたことについて、百条委員会が設立されて、県知事が質問攻めにあっている。イルカを食べている沖縄の人たちに、ジュゴンの環境よりも安全保障が大事なことをどう説明するのだろう。
 ワシントンの古森さんは、安倍タタキに全力をあげる朝日新聞などの「オバマ政権が安倍首相の靖国参拝歴史認識を理由に日米同盟を軽視し、有事の日本防衛の誓約さえ守らない」という報道は事実と異なるという。ダニエル・ラッセル国務次官補(東アジア太平洋問題担当)の最近の議会証言からは、靖国問題などがあってもオバマ政権がなお日米同盟を揺るがせにしない姿勢や、安倍政権の集団的自衛権の解禁を歓迎する態度が鮮明に伝わってくるという。
 ただ同時に、中国との対決をあくまで避けたいとする対中融和の傾向も顕著だという。日本の領海や領空に頻繁に軍事的意味合いの強い侵入を繰り返し、日本の自衛艦に射撃の照準を合わせ、しかも日本領土全域を射程に収める弾道ミサイルを多数配備する中国が日米同盟の対象ではないという。中国が日米同盟適用の対象ではないとすれば、日本単独でも戦える準備を直ちに始めるしかない。