守っているのはロシア側

 2月24日、ロシア軍の戦略核爆撃機が、竹島と中国・韓国が領有を争っている地域の上空を飛行し、韓国がスクランブルをかけたという。ロシアの女子選手が金メダルをとったことに対して、異常な抗議が韓国からなされたことへの反応だろう。韓国のロシア批判はその後、日本には聞こえてこなくなった。
 ウクライナ情勢が混とんとしてきた。チェルノブイリ原発事故の後、様々な資金援助、技術支援、医療支援などを行ったのは日本だった。そのため、ウクライナは大の親日国だ。直接の貿易額は少ないものの、大学では日本語教育が盛んだ。小学校から俳句が教えられ日本の文化にも親しみがあるという。カツレツで有名だったキエフの街には日本車が多く、日本食レストランもたくさんあるらしい。政治が安定すれば、4600万人の消費市場、EUとCISの間に位置する戦略的な地の利、全体として能力ある人材は東西どちらからみても魅力的だ。
 プーチン大統領は2月26日、ウクライナと国境を接するロシア軍に軍事演習を行うよう指示したという。ロシアの黒海艦隊の本拠地セバストポリ近くの民間の空港では、ロシア軍と思われる国籍不明の武装勢力が警備を始めたという。西側がクリミヤに、特殊部隊を送り込むことを防ぐためだろう。攻めているのは西側であり、守っているのはロシア側だ。やりすぎればロシアは反撃するだろう。
 EUは本気でウクライナの面倒をみるのかと思っていたら、支援金額を値切り始めたようだ。ウクライナは今後2年間に350億ドルが必要だとしていたが、短期的に必要となる資金はこれを大幅に下回っていて、EUは8.4億ドルを支援し、IMFと合わせて40億ドルの支援すれば「差し迫ったデフォルトの脅威はない」という。おおかた国際的なトバシでもやっているのか、ロシア側への返済を見込んでないのかもしれない。ロシアがこの騒動前に支援すると言っていたのは150億ドルと天然ガス価格の3割引き下げだった。ウクライナが西側に付けば当然これは実行されない。
 かつてウクライナに西側寄りの政権が誕生したオレンジ革命の後、ウクライナ天然ガスを欧米諸国にも安く提供するとしたが、ウクライナ天然ガス田はなく、ロシアの天然ガスを兄弟国値段で買っていたものだった。ウクライナの考え方には無理があった。部分的な価格破壊が起きると、全ての天然ガスの値段に影響する。ロシアがウクライナへの天然ガスの値段をあげると、ウクライナは、天然ガスの代金を支払わなくなったので、ロシアが供給を絞った。するとパイプの下流に位置するイタリアやスイスに天然ガスの供給が減った。そしてリ-マンショックでウクライナの財政が悪化すると、通常の大統領選挙によってロシア寄りの政権が誕生して、プーチン大統領ウクライナ支援を始めたというのがロシア側の見方だと思われる。
 クリミヤ半島地域では、ウクライナの大統領選挙と同日に、クリミアのウクライナからの独立あるいはロシアへの併合、そしてウクライナ国内での自治の強化をめぐる住民投票を実施するという。ウクライナの東側の親ロシア地域もそれに続くのかもしれない。