内外情勢 2014年2月 国民の統合

    1. グローバル化と国民の反発
    2.ウクライナ帰属意識
    3.エストニア国境
    4.日本国憲法
    5.日本の美学
    6.国際政治の非情さ
    7.オバマ政権のリバランス
    8.中国に対抗するインドとロシアそして日本      
1. グローバル化と国民の反発
 欧州を東欧・西欧と区分しなくなってしばらく経つ。その区分はあいまいで便宜的なものだったが、「東欧」とは中世の文化や地勢学的にはエルベ川以東をさしていた。冷戦終了後、EUとNATOは東側にその範囲を広げてきた。しかし不況の中で国民経済の重要性が再認識されてきたのは洋の東西を問わない。ユーロ圏の経済危機を反映して、5月の欧州議会選挙では、反EU政党が票を伸ばすと予測されている。その動きは大きく見れば、グローバル化によって自国の経済社会の在り方について、自分たちで将来が決められないことへの反発であり、大量の移民の到来によって普通の雇用が減少することへの反発である。
2.ウクライナ帰属意識
 ウクライナでは、ヤヌコビッチ政権がEUとの自由貿易協定の締結を拒否したために、反政府デモが3カ月以上続いていた。ここにきて首都キエフでデモ隊と警察の大規模な衝突があり、双方合わせて25人が亡くなり、250人以上が負傷したという。これから空挺部隊の投入されるという。
 従来からあったロシアにつくのか、EUにつくのかという路線対立が、ウクライナの東西の地域対立を顕在化させている。西側のNGO団体も入っているのではないか。ウクライナの東部はロシア語とウクライナ正教だが、西部はウクライナ語とカトリックである。歴史的にも帝政ロシアソ連の支配を好意的にとらえる人々と、悲劇と考える人々に分かれている。
 地政学的に考えれば、ロシアは地理的に近いだけでなくて、エネルギー供給や150億ドルの経済支援をしている。ロシアから見れば、ベラルーシウクライナは特別な国だが、ウクライナ西部の人から見ればEUに親しみがあるのだろう。バイデン大統領がウクライナ大統領に電話をしたというが、全般的な米国の政策から言って、本当にロシアと対抗してまで問題に介入する意思があるとは考えにくい。何が起こっているのだろうか。
 ロシアにしたところで、グローバル化についての意見は様々だけれど、かつてのようにイデオロギーを振りかざす一党独裁の帝国ではなく、インテルボーイングが進出している自由な資本主義の国である。
3.エストニア国境
 そうした紛争も影響しているのだろう。2月18日に、エストニアとロシアは、懸案だった両国の国境画定条約に調印したと報じられた。EUとNATOは国境を画定するように求めていた。旧ソ連時代の1945年に引かれた現状の境界線をロシアの主張通りにほぼ追認する内容だという。これでロシアが抱える大きな領土紛争は日本との北方領土問題を残すだけとなった。それでもエストニア人口の25%はロシア人だったと思う。
4.日本国憲法
 歴史と国際法を知らない弁護士が、安倍首相に芦部の日本国憲法の本をバレンタインデーに送るという。靖国神社参拝は合憲とする靖国懇の多数意見に対し、違憲とする少数意見を書いた法学者の本だ。左派の弁護士は、自分たちは頭が良いと信じているのだろう。だが、日本国憲法は、日本語で読むよりも英語で読んだ方がはるかに易しい。AMAZONでConstitution of Japanは158円だった。「Milo Rowell (著), Courtney Whitney (著), General Douglas MacArthur (編集)」とあった。表紙には、昭和天皇吉田茂首相の署名があった。絶版にならないうちにその解説を記録しておく。
 The Constitution of Japan has been the founding legal document of Japan since 1947. The constitution provides for a parliamentary system of government and guarantees certain fundamental rights. Under its terms the Emperor of Japan is "the symbol of the State and of the unity of the people" and exercises a purely ceremonial role without the possession of sovereignty. Thus, unlike other monarchs, he is not formally the head of state although he is portrayed and treated as though he were.
 マッカーサー憲法の前文には「日本は平和を愛する諸国民の信義と公正に依拠して国を保持する」とある。よその国は良い国で、悪口を言ってはならないという。悪口を言ったら国が保持できないようだ。日本の周りには、日本の領土の割譲を要求し、諸外国に嘘ばっかり言って回り、お金を脅し取ろうとする国がある。
 米国も改めて考えると、かなり底意地が悪い。マッカーサーは、憲法素案を2月11日の紀元節に提示し、2月22日に公布させる予定だった。2月22日はジョージ・ワシントンの誕生日だった。結局、新憲法は11月3日に公布された。この日は文化の日となっているが、日清戦争日露戦争に勝たれた明治天皇の誕生日だった。
5.日本の美学
 NHKの経営委員を務める作家の百田さんが原爆や東京大空襲の被害についてコメントしたので、米国大使館はご不満らしい。もうすぐ3月10日になる。B29による東京大空襲の日だ。325機のB29が東京に38万発の焼夷弾を落として10万人が亡くなった。3月10日は、日本が奉天会戦でロシア陸軍を壊滅させた陸軍記念日だった。米国は、その後も日本の主要都市への凄まじい爆撃を加えた。少なくとも50万の国民の命を奪った無差別爆撃の非人道性は、百田さんが言わなくとも、日本人なら誰でも知っていた。ただ、私たちは敢えてそれを口にしなかった。敗れたがゆえに、日本は勝者によって裁かれた。その不当性を識っているが、口にしてこなかった。それは、日本人ほぼ全員が深く反省したこと、敗者は言い訳はしないという日本人の美学のためだと誰かが書いていた。
 美学も良いが、誰かが時々言わないと馬鹿と無法がのさばる世の中となる。日本の隣りには、激しい日本非難を国家戦略とする中国がいて、中国に盲目的に従う韓国がいる。彼らは明確な意図をもって歴史を捏造する。
6.国際政治の非情さ
 太平洋戦争が始まる五年前、1936年(昭和11年)つまり日本が真珠湾を攻撃する五年前にルーズベルトは中国の蒋介石政権に、戦闘機とパイロットを提供する大統領令を極秘で発していた。英国を救うために、欧州の戦争に米国が参戦するためだった。米国世論は第一次大戦に懲りて孤立主義が支配的だったため、日本と戦争して欧州の戦争へ参画する方策を企てた。蒋介石政権には可能な限りの支援を行なった。米英が協力して日本に対して完全な禁輸を実施し、オランダにも日本へ石油を輸出させなかった。近衛首相は、政治生命をかけて日米首脳会談で日米間の障壁を除こうとしたが、会談しつつも日本と戦うことを決めているルーズベルトは、日本の攻撃を待っていた。そして暗号解読で日本が真珠湾を攻撃することを知りつつ、ハワイの太平洋艦隊を生け贄にした。戦後行われた東京裁判のパール判事は「(ハルノートと)同じような通牒を受取った場合、モナコ王国やルクセンブルグ大公国でさえも合衆国にたいして戈をとって起ちあがったであろう」と述べたという。自分は、このことを加瀬英明先生とヘンリーストークス氏の「なぜアメリカは対日戦争を仕掛けたか」という本を読んで再確認した。
7.オバマ政権のリバランス  
 オバマ大統領は、本当は外交にも国防にも興味がないという人がいる。リバランスというのは、「米国の衰退」だった。日本を弱いままにしておこうとしながら、中国の脅威に目をつぶっている。国際政治においても、ひたすら外交によって問題解決を図ろうとしている。その結果、冷戦終結以来の国際関係が大きく変わりつつある。シリアへの米国の不介入を受けて、サウジアラビア、エジプト、イスラエルが米国と少し距離を置き始めた。EUも「米国は外交、安保路線を変えようとしている」と思い始めている。ケリー長官が否定しても、その疑念が払拭できない。米国を軸に形成されていた冷戦後の国際社会の秩序が、本当に大きな変化を遂げている。良く尖閣諸島問題で、現状を変えてはならないという声が米国から日本に届くが、積極的に変えているのは中国である。
 11月4日の中間選挙を控えて、オバマ政権は何とか取り繕って、国民に成果を見せたいようだ。対中関係改善は、大仕事であるだけに人気につながるという。スーザン・ライスに命じて「中国に関しては、われわれは新型大国関係を機能させるよう目指す」と明言させ、アジア太平洋地域を米中の2大国で共同管理しようとしている。しかしその中国のボロボロの内側はほとんど見ていない。
 日本が、「成りすまし日本人」の政治家やジャーナリストに苦労しているように、米国内には、中国人による国際関係の分析があふれているらしい。活動資金も豊富なようだ。米国の大企業はどんどん中国から撤退しているのに、米国政界ではどんどん親中派が増えているという。
 中国政府が、必死にお金を貢いでいるのだろうと思っていたら、それに加えて米国の民主党政治家周辺が、EB−5ヴィザという「米国に最低50万ドル投資して10人以上のアメリカ人雇用すれば、グリーンカードを入手出来る」制度を利用して中国人富裕層が米国移住するのを手伝って利益を上げているという。
8.中国に対抗するインドとロシアそして日本
米国はアジアに関心がなく、中国にアジアが従う理由がないとなれば、その他のグループが形成されてくる。
 インド洋ではインドが海軍力を増強しており、中国の中東からの石油輸入ルートを脅かす存在になりつつある。インドはイランやアフガニスタンイラクも味方につけ、中央アジアからインド洋にかけて中国の動きを封じ込めるだろう。
 ソチのオリンピックの開会式で習近平国家主席と仲良く握手して見せたプーチン大統領だが、ロシアの中国警戒心は根深い。2012年に中国が砕氷船を北極探査に派遣し、オホーツク海に中国艦艇が進出している。シベリアへもぐりこむ中国の不法移民にロシアは業を煮やしており、ハバロフスクだけでも2012年一年に千人以上の不法移民を国境で追い返した。またモスクワの非合法屋台を一斉に手入れし、数百の中国人行商人を追放した。
 時代が大変革するとき、危機を察知しなければ国家は間違いなく没落する。危機を察知しても、対処する実力を備えていなければ国家は滅びるだろう。日本は普通の国なるための準備を急いでいるが、もう少し時間がかかりそうだ。