アフリカ・ノート 

 安倍首相は1月早々から全力疾走の感がある。トルコの首相を日本に招いて首脳会談を行った後、外務大臣防衛大臣は一か所ずつ訪問した足で、フランスとの2+2に臨んでいる。太平洋においても、タヒチにあるフランス軍との連携が強化されるのではないか。並行して安倍首相は、9日には、もう中東アフリカ歴訪に出かけている。首相は「アフリカは日本にとってフロンティアといえる」とし、「今年も地球儀を俯瞰した戦略的な外交を展開していきたい」という。
 アフリカ外交の目的は、第一に、現在10億人のアフリカ市場への進出だ。1日の収入が4〜20ドル(約420〜2100円)の中間富裕層が過去1年間に60%以上増加し、3億5000万人に達し、富裕層はさらに増えて、消費が拡大している。 日本とアフリカの貿易額は278億ドルだが、中国とアフリカは1386億ドル(14兆5000億円)と5倍あるという。第二はサハラ砂漠以南の資源の獲得である。この地域は、石油や天然ガスレアアースなどの埋蔵資源は豊富で、燃料電池用のプラチナの埋蔵量も世界の90%あるという。第三は、国連の常任理事国入りへの票集めであり54票ある。首相の中東アフリカ歴訪を機に、前から関心があったアフリカ・ノートをまとめてみた。今後はこれに、アフリカにおける中国などの諸外国の活動を加えて調査していくことが必要だと思われる。
  1.アフリカの概要 
  2.中東の海洋王国オマーン アラビア湾、アフリカとの交易の要路
  3.今回のアフリカ歴訪 
      (1)コートジボワール 西アフリカ
      (2)モザンビーク   南部アフリカ
      (3)エチオピア    東アフリカ
   *その他の注目される地域としてのケニア
  4.アフリカの食糧・農業問題から 平野克己さんの見方
1.アフリカの概要 
 一般に、 アフリカの地形は、大きく言えば、北アフリカとサハラ以南に大別され、サハラ以南は、南部アフリカの砂漠地帯、中央の森林地帯、東部の高地帯と3つに分けられるので都合4つ。地域グループとしては、森林地帯を北側のギニア湾に面するところと赤道周辺の地域に細分し、アフリカ全体を、東、西、南、北、中央の5つの地域に分けるのが一般的だ。
①東アフリカ地域(サハラ以南)
 東アフリカ地域は、アフリカ東岸の国々に加え、セーシェル(9万人、12000ドル)、コモロ(68万人、1200ドル)という島からなる。エリトリア(510万人、759ドル)、ジプチ(90万人、2400ドル)、ソマリア(1000万人、600ドル)、エチオピア(9400万人、900ドル)
 ケニア(4000万人、1700ドル)、ウガンダ(3300万人、1150ドル)、ルワンダ(1000万人、1050ドル)、ブルンジ(830万人、390ドル)、タンザニア(4500万人、1350ドル)の5か国は東アフリカ共同体を形成し、経済的つながりが大きい。
 エチオピアは、国土の大半を標高が平均2300mのエチオピア高原が占め、平均気温が13度と過ごしやすい。サハラ以南のアフリカでは、ナイジェリアに次いで二番目に人口の多い。アフリカ連合は、EUをモデルにしたアフリカの政治的経済的統合と紛争の予防解決のため発足した地域統合体でありエチオピアで成功することは、ショウルーム効果が高いか。
②南部アフリカ地域(サハラ以南)
 南部アフリカ地域は、多様で豊かな鉱物資源があるために、植民地の独立が遅れたが、国ごとの貧富の差と、国内の経済格差が著しく、エイズが蔓延している地域である。コンゴ盆地よりも南側に位置する緩やかな丘陵地帯以南(おおよそ南緯10度以南)が、南部アフリカと呼ばれる。マダガスカル島などの島は共通点は少ない。南アフリカ(5000万人、10100ドル)、アンゴラ(2000万人、6300ドル)、ボツワナ(200万人、15000ドル)、マダガスカル(2000万人、1000ドル)、モザンビーク(2300万人、900ドル)ザンビア(1300万人、1400ドル)、ジンバブエ(1300万人、190ドル)、マラウイ(1500万人、830ドル)、スワジランド(120万人、5600ドル)、ナミビア(220万人、6600ドル)、モーリシャス(130万人、12000ドル)、レソト(210万人、1300ドル)。
③西アフリカ地域〈サハラ以南)
 西アフリカ地域はサハラ砂漠より南で、大西洋とギニア湾に面した地域をいう。北部は砂漠、南部は熱帯雨林、中間地帯はサバンナとなっている。紀元前に文明が栄えた地域だが、15世紀末に欧州人が来ると、沿岸地域では奴隷貿易が盛んだった。内戦などで政情不安定な国が多い。ガーナはアフリカ随一の親日国。
 ガーナ(2400万人、2200ドル)、コートジボワール(2200万人、1650ドル)、ナイジェリア(1億7500万人、2150ドル)、カーボベルデ(51万人、3500ドル)、シエラレオネ(600万人、720ドル)、セネガル(1300万人、1740ドル)、トーゴ(700万人、810ドル)、ベナン(1000万人、1600ドル)、モーリタニア(330万人、2050ドル)、リベリア(400万人、370ドル)、ガンビア(170万人、1400ドル)、ギニアビサウ(160万人、500ドル)、ギニア(1000万人、1000ドル)、ニジェール(1700万人、740ドル)、ブルキナファソ(1600万人、1300ドル)、マリ(1300万人、1100ドル)。
***今回訪問しなかった地域***
④中部アフリカ地域(赤道アフリカとも言われる。サハラ以南)
 サハラ砂漠以南で赤道付近の南北に位置する国々。コンゴ川の流域で高温多湿。大半の国がポルトガルとフランスから独立。幾多のクーデタを経験。
 コンゴ民主共和国(6600万人、330ドル)、赤道ギニア(70万人、1万8000ドル)、カメルーン(2000万人、2150ドル)、サントメ・プリンシペ(16万人、1750ドル)、ガボン(150万人、1万4500ドル)、コンゴ共和国(370万人、3900ドル)、チャド(1100万人、1660ドル)、中央アフリカ共和国(440万人、700ドル)、南カメルーン連邦(210万人、NA)
北アフリカ地域(地中海に接するサハラ砂漠。歴史的にナイル川流域のスーダン南スーダンが入る)
 国土の大部分が砂漠。肥沃な大地は地中海沿岸などに限られている。石油、天然ガスリン鉱石などの資源が豊富。特にリビアチュニジアアルジェリア、モロッコを「マグレブ」といいベルベル人が先住民として住んでいる地域。アルジェリア(3800万人、6700ドル)、エジプト(8300万人、5900ドル)、チュニジア(1030万人、8000ドル)、モロッコ(3200万人、4350ドル)、スーダン(3100万人、2300ドル)、南スーダン(830万人、NA)、リビア(640万人、1万4500ドル)、西サハラ(27万人、NA)
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2.中東の海洋王国オマーン 
 安倍首相の中東アフリカ歴訪の最初の国がオマーンであったことは実に興味深い。アラビア湾、更にはアフリカとの交通の要路でもあり、石油や天然ガスも輸出している親日的な漁業国だ。若者には、サッカー試合での印象が強いかもしれない。
 アラビアは3つの地域に分かれる。第一は「砂のアラビア」、今のサウジアラビアを中心としてペルシャ湾岸にまで展開する広大な砂漠地帯の産油国グループだ。第二は「岩のアラビア」、シリア、ヨルダンおよび、その周辺の巨大な岩山がたくさんある国々でえある。そして第三は、インドと地中海を結ぶ要地に位置する「海と山のアラビア」で、オマーンとそのイエメンがそれに当たる。オマーンは、今も昔も、海上交通の要路である。
 オマーンの人口は、285万人アラビア半島東端に位置し、国の北東部はオマーン湾、南東部はアラビア海に面している。ペルシャ湾への入り口、ホルムズ海峡のムサンダム半島に飛地をもっている。湾岸諸国に出入する船を見張る要所だ。面積は、日本の4分の3の広さだが、国土の80%は砂漠で、山が15%、、平野部が5%ある。北部には、険しいハジャール山地が、海に平行して連なっている。この山が供給する水が、この国の東側の地域を緑のある多様で豊かなアラビアたらしめている。
 アラビア半島の東南端にある天然の良港マスカットは、昔からアラブ大帝国の都バクダットとインドやアフリカ東岸を結ぶ交易の拠点として栄えた。千夜一夜物語のシンドバッドは、オマーンの人ではないかと思うようになったのは数年前だった。分遣ではなかなか根拠がなかったが、日本オマーン協会のWEBに「シンドバットたちがつくりあげた海洋王国オマーン」と書いてあった。安倍首相はその協会の名誉会長だった。
 バクダットは9世紀から10世紀には人口100万〜150万人の世界で最も華麗で豊かな都だった。海路からは象牙、乳香、香辛料、白檀、真珠、宝石、金といった宝物がもたらされた。シンドバッドの冒険は、大海原を超えて交易の旅をしたアラブ商人の伝える土産話の中から生まれた。
 海洋王国なので、19世紀には現在中国が港湾を整備しているパキスタンのグワダルを飛び地にしていたり、アフリカ東岸タンザニアザンジバルに王宮をつくったりしていた。その後、ザンジバルとマスカットのグループが対立し、広大な商圏を支配した海洋王国は分裂して急速に衰退し、1891年には海廊交易をイギリスに奪われて保護国になった。
 オマーンが海洋王国であることを初めて知ったのは魚の本だった。アラビア海に1700キロの海岸をもつオマーンは世界有数の漁業国で、マグロ、モンゴイカ、アワビ、タイ、アジ、イワシなど150種類以上の魚がとれ、年間11万トンの水揚げがある(日本は遠洋漁業も含めると年間600万トンの水揚げ)。国民1人当りの漁獲量も年間46キログラムとちょうど日本と同じである。ノルウェイ、日本、オマーンなのだ。
 オマーン王室には日本とのご縁もある。昭和のはじめ、オマーンのタイムール王が退位後、日本にやってきて、日本女性と結婚し神戸でブサイナ王女が生まれたという。現在の王様の叔母さんにあたるかただ。1970年、宮廷革命によりカブース皇太子が30歳でサイード朝の第8代目の国王に就任し、鎖国政策を転換して新しい国造りに乗り出し、翌71年に独立した。内陸の砂漠では1967年に石油生産が開始され、その後2000年には可採量が140年とされる大規模な天然ガスの生産と輸出も始まった。
3.今回のアフリカ歴訪 
 安倍首相の歴訪には、商社や金融、建設などの首脳が延べで35人が同行して官民でトップセールスを繰り広げているという。昨年来の首相の外遊をみると、今までの首相とは異なり、政治経済と安全保障と一体となっている。今回、東西アフリカと南アフリカを訪問した。欧米さらには中国と差別化するために、人材育成プログラムと一体になった進出を求められているようだ。
 アフリカの経済成長と人口増に伴って日本企業は、豊富な天然資源だけでなく消費財や金融などでも本格進出を目指している。アフリカの人口は、現在の10億人強から2050年には約22億人へと倍増する見込み。中間所得層も増加基調にある。先行する欧米、中国、インドなどとの競争が激しくなっている。
 投資残高ベースで、日本は80億ドルだが、フランス、米国は日本の7倍、英国が6倍、中国は2倍だという。
(1)コートジボワール 西アフリカ地域
 大統領と会談するほか、西アフリカ諸国の首脳とも意見交換する。中心都市アビジャンの高架橋建設の調査を無償支援し、都市交通網を整え経済成長につなげる、コートジボワールの投資促進政策の立案を助言する専門家の派遣を表明する。ガーナやブルキナファソを含む西アフリカのインフラ計画づくりを、JICAが各国政府などから請け負い2年ほどで作成する。事業規模に応じて、円借款など金融支援も詰める。治安悪化が深刻なサハラ砂漠南部のサヘル地域に、避難民支援など地域の平和と安定のために87億円の拠出を表明し、内戦からの復興支援として、アフリカの若者を日本企業のインターンに受け入れることも明らかにする。
 西アフリカ諸国経済共同体に加盟する西アフリカの10カ国の首脳とも懇談し、フランス語圏の西アフリカで、インフラ整備支援などの関係強化の姿勢を打ち出す。
 コートジボアールでは、豊田通商は子会社を通じて仏小売り大手のカルフールと提携し、小売り分野に進出する。まず15年にコートジボワールで大型店を開業する計画で、日本の食品メーカーから引き合いが急増しているという。味の素は2013年4月に、うま味調味料の包装工場をコートジボワールで本格稼働した。
(2)モザンビーク 南部アフリカ地域
 南部アフリカの右上に位置するモザンビーク。近年、日本とモザンビークの関係が近くなっているという。6月1日、サハラ以南アフリカで初めてとなる日本・モザンビーク二国間投資協定が締結された。モザンビークは、金・銀・銅・ニッケル・プラチナ・マンガンレアアースなどの鉱物資源や、石炭・天然ガス・チタンなどのエネルギー資源も豊富。GDP成長率は8.4%を誇り、成長率の高い国で世界4位の位置付けとなっている。大規模農業開発も注目され巨額の投資も行なわれている。しかし同時に人権抑圧や治安の悪化、格差の拡大などの問題が懸念されている。
 大統領との首脳会談で、資源開発などに関する総合支援策「天然ガス・石炭発展イニシアチブ」を表明するという。現地の人材育成を支援し、関連産業育成に両国が共同で取り組む。アフリカ支援のモデルと位置づけ、アフリカ進出に力を入れる中国に対抗するという。
 具体的には、日本向けの液化天然ガス(LNG)基地の建設や炭田開発を進めるため、現地の行政官や事務管理職を日本に招き、今後5年で計200人の人材を育成する。石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)とモザンビーク政府が共同でエネルギー関連産業の振興計画を作る。石炭火力発電所建設のほか、家庭用燃料となる練炭作り、石炭が原料の肥料製造などが対象となる。新たな炭田開発に向けた地質調査にも協力を行う。円滑な開発のため、国際協力銀行JBIC)が同国の鉱物資源省と覚書を結び、法制度整備も支援する。三井物産がロブマ沖で進むガス田開発事業に参画し、2018年をめどにLNG輸出を計画し、肥料産業などの育成に協力したいと意気込む。同国の原料炭事業に参画する新日鉄住金は、原料炭の日本への安定供給を目指す。
(3)エチオピア 東アフリカ
 エチオピアの首相と、アフリカの産業発展の基盤となる人材を育てるため、初の「産業人材育成センター」開設で合意する見通し。人材育成を柱に、資源収奪につながらない「質の高い支援」をアフリカ諸国にアピールしながら日本企業進出を後押しする狙いもある。2013年6月の第5回アフリカ開発会議で「産業人材3万人の育成」や、若者1000人を日本の大学や企業に受け入れる「安倍イニシアチブ」の実施を表明している。人材育成センターはアフリカ各国に計10カ所設置する方針で、エチオピアが第1号で2014年度中の開講を目指す。センターでは、主に高校生や若者を対象に、溶接や重機・ロボットの操作など技術別の講座を設置し、日本から技術者を派遣して指導に当たる。エチオピアは、国内産業育成のため日本式の経営管理手法の導入に熱心で、2011年には「エチオピアカイゼン機構」(EKI)を首都アディスアベバに設立し、経営者などを対象にトヨタ流の「カイゼン」を学ばせている。両政府は同センターをEKI内に併設し、産業人材育成の一大拠点としたい考えだという。
 エチオピアではインフラビジネスにも注力しているが、三菱航空機は、国産初の小型ジェット旅客機MRJエチオピア航空に売り込むという。
*その他の注目される地域としてのケニア
豊田通商ケニアで自動車関連のメンテナンス技術に加え、建設機械や農業機械の技術者を養成するアカデミーの運営を4月に開始するという。日清食品ケニアで即席麺の工場を立ち上げる予定だという。
ケニアの首都ナイロビから60kmの地方都市マチャコスには、間口が1、2メートルしかない小さな店舗兼工場が密集するエリアがあった。零細企業の工場集積地である。このエリアは、自動車修理、金属加工、溶接、木材加工、衣料製造といった製造業の事業者約600社で構成されている。1つの工場の労働者数は数人〜5人程度。小型機械やさまざまな形の機器が無秩序に並び、火花があちこちで散っている。親方と若い弟子たちが忙しく動き回っている。ケニアには、ナイロビだけでもこのような工場集積地が5つアリ、最も大きい集積地では、10ヘクタールの広さに約2000の事業者があり、約5000人の労働者がいるとされる。日本ならば、町工場が集まる東京都大田区東大阪市のような地域である。こうした地域がないと製造業は育たない。
4.アフリカの食糧・農業問題から 平野克己さんの見方
 NHKの視点論点で少し前に、アジア経済研究所の平野克己さんが、サハラ以南のアフリカ諸国の食糧危機を論じていた。彼の議論を要約し紹介する。
 ソマリアコンゴ民主共和国中央アフリカ共和国南スーダンといった紛争国を中心に数百万人が、栄養不良や飢餓状態にあるが、もっと日常的なところで、アフリカの食糧状況は徐々に悪化している。
 アフリカでは人口の60%はいまだ農村に住んでいて、農業に従事している。しかしトウモロコシ、コウリャン、コメ、アワなどの穀物の土地生産性が低く1ヘクタール当たり1トンほどで、世界平均の3分の1以下しかない。土地生産性が低いだけではなく、一人当たりの農地も狭い。つまり労働生産性が、日本の8分の1、アメリカの300分の1だという。これでは貧困はなくならないし、食糧も自給できない。先進国ならわずか1%か2%の労働力で国民全体の食糧穀物を生産できるが、サハラ以南のアフリカでは労働力の60%を農業に投入しても食料が自給できない。
 アフリカの食糧穀物の対外依存度も大きく変動している。降雨量が安定していないことが最大の原因だが、激しく変動しながらも、徐々に自給力が下がっている。平野さんの計算では、アフリカの農村は人口比で15%分の都市人口しか養えない。だから経済成長して都市の所得が増えても、それが農村に回らない。所得が国外に流れていってしまうため、経済成長しても貧困がなくならない。
 世界最大の穀物輸入国は日本だ。年間およそ2500万トンの穀物を輸入している。東アジアは、人口密度が高くて、土地が狭い。だからコメは自給できても家畜の飼料穀物を生産するだけの土地がない。今ではアフリカ全体で2億人分の食糧を輸入され、東アジアを抜いて、世界最大の穀物輸入地域になっている。世界の穀物市場では、南北のアメリカとヨーロッパが主に輸出をして、これを主に、東アジアとアフリカで分け合うという構図だ。東アジアの輸入が比較的安定しているのに対し、アフリカの輸入量は増加の一途をたどっている。
 今後、世界の穀物市況がもし破綻するとすればアフリカが震源であり、その影響は東アジアに及ぶ。アフリカの総人口は2040年に倍増して20億人になるが、その食糧をどうするのかが問われている。 幾つかの国で、食糧自給に向けた政策的な動きが見られるようになり、国際開発の新たな最前線となりつつある。
 平野さんの議論に2つほど付け加えたい。
 一つは中国である。2000年以降、16世紀以来ヨーロッパ人がアフリカに来た延べ人数よりも、中国人がこの10年間にアフリカに来た人口のほうが多いといわれている。彼らが、中国流に、ダムを造り、鉄道を引き、無計画に資源を開発している。そして農地を買いあさって定住を始めた。そして現地の特権階級と結んで、中国と同じ環境汚染と腐敗を拡大している。だからアフリカの将来は平野さんのレポート以上に深刻になる。
 二つ目は、日本の食糧と貿易赤字問題である。国土の四分の一以上に渡る1000万ヘクタールの里山の活用することが重要である。山地酪農の導入によって飼料作物の輸入を減らし、山を整備し、林業も発展させて、バイオマスや地熱の活用によって輸入エネルギーを減らすことに注力すべき時期に来ていると思う。