年末の国内政治を巡る様々な議論

 3年3ケ月に及ぶ民主党政権の政治的な閉塞感が完全に打破されて、安倍政権は日本の安全保障の強化を急ピッチで進めている。臨時国会終了後に、来年度の税制を決め、ASEAN10か国との特別首脳会合が行われ、防衛大綱の見直しと中期防衛力整備計画の改定が行われた。
1.理不尽な猛攻にも10%しか低下しなかった支持率
 杉浦正章さんがブログ「頂門の一針」に書かれているように、安倍内閣は、あれだけ激しい特定秘密保護法案反対の嵐の中を突っ切っても、まだ50%前後の高支持率を維持している。内閣支持率はおおむね10%低下した。反対しているメディアのねつ造と偏りには本当に驚いた。朝日新聞は「米国の情報を守るために日本国民を罪に問う法案」などと書いた。デタラメな報道もいいところで、杉浦さんの50年の報道生活の中で、不偏不党を唱えるマスコミが、これほどの一方的な偏向報道をした例に初めて遭遇したという。詳細に比較したわけではないが、中国・韓国の新聞の主張をそのまま日本語にしたかのようだった。
 賛成派の読売新聞は、その社説で「国会審議の中で戦前、思想犯の弾圧に用いられた治安維持法になぞらえた批判まで出たのには驚く。戦後の民主主義国家としての歩みや政治体制、報道姿勢の変化を無視した暴論と言うほかなかろう」とまで書いた。治安維持法は戦前の国体維持のための法律であり、秘密保護法は、スパイなどから特定秘密を守り、国防を確保するための法律だ。日本にもようやく米英など他の先進国並みの機密保全法制が整った。後はデフレ脱却に全力をと、杉浦さんはいう。大筋において異論はない。
2.政界再編、道遠し
 みんなの党が分裂した。旧民主党勢力との連携を図る江田さんのグループ15名と、安倍首相に近い渡辺喜美さんのグループ20名に分かれた。ただ比例選出議員13人の会派離脱を渡辺代表が認めておらず、みんなの党は、議席を党へ返還することを求めている。まだまだ紆余曲折あるだろうが、彼らが連携を考えているのが、民主党の細野グループであり、民主党から維新の会に移籍したグループなので、力強さに欠けると言ったら失礼だろうか。
 元々、みんなの党は公務員改革、維新の会は地方制度の改革が、最大の政策的主張だった。しかも安全保障政策はそれぞれの首脳陣が安倍さんと近かった。とかく注目を浴びる細野さんだが、政権担当時の行動からみると、八方美人の域を超えることができないのではないか。
 個人的には国会議員の西村真吾さんの見方に賛成だ。特定秘密保護法案に対する賛否を切っ掛けにして、再編の動きが、党派を超えつつある、とでも言いたげな民主党や維新の会の、「もっともらしい若手」のしたり顔が気にくわない。政界再編は、現在の我が国を取り巻く「明治維新期に匹敵する国難」を克服する為に行われる。侵略からどう領土を守り、拉致された同胞をどう救出するのか。その為に戦後体制から脱却するのか、脱却しないのか、脱却すべき戦後体制が日本国憲法体制ならば、自主憲法を制定するのか、しないのかだという。西村さんは、時に感情的発言で損をするが、その見方にはいつも教えられる。
3.都知事選挙が始まった
 徳洲会からの5000万円事件で、都政は航行不能に陥った。徳洲会は日本を代表する2大病院チェーンの1つであり、その売上規模と利益率から試算される政治資金からいって、氷山の一角であり、事件がどこまで広がるか、未だはっきりと見えてこない。病院チェーン自体の地元での評判が悪いわけではないので残念だと言わざるを得ない。
 猪瀬知事が12月19日に辞表を出したので、50日以内である2月9日(日)投票日ということで都知事選挙の調整が進みそうだ。次の都知事は順当にいけば、少なくとも2期8年都政を担当することになるので、2020年のオリンピックを担当する都知事となる。既にカンの良い東国原氏が参議院議員を辞めているが、都知事選挙を狙っているのではといわれている。舛添さんの名前も挙がっている。与野党の候補者探しがスタートした。
4.沖縄の動向
 12月13日には、沖縄政治において大きな動きがあった。仲井真知事が、名護の市長選挙の結果とは関係なく、辺野古埋立申請の可否を「年内に決める」と言い出した。名護市長選挙では3人が立候補する見込みであり、保守系は容認派と推進派で分裂し、統一しなければ、現職の反対派が勝つと言われていたが、1月12日告示の市長選の前に結論を出すことになった。
 政府は政府で、来年度の予算で沖縄は3400億円の一括交付金と産業特区としての税制優遇措置の拡大が打ち出し、普天間基地の跡地利用として沖縄初めての鉄道建設が普天間を起点として始められるという。
 同日発表になった防衛大綱は、尖閣をはじめとする離島防衛への重点シフトを明らかにした。自衛隊にも、オスプレイや水陸両用車も導入し、陸上自衛隊海兵隊化が図られる。知事が、年内に決めるというのは、辺野古の埋立許可を出すモノと考えられる。しかしその仲井真知事が体調不良で入院された。74歳と高齢でもあり、公務に復帰されても、2014年11月の任期満了前に勇退される可能性があるのかもしれない。
 個人的には、菅官房長官が夏休みをとって沖縄に静養に行き、県知事がその静養先のホテルまで出向いたという会談が現在の流れを方向づけていると考えている。目立たないが、この二人の信頼関係で、沖縄の政治が動いていくと思われる。
5.朝鮮半島
 ここ数日は北朝鮮のナンバー2の粛清事件でニュースはもちきりだ。彼に関係する人は皆、排除されるという。それは必ずしも、拉致問題の解決が遠のいたことにはならないという。むしろ変化はチャンスだと見る政府関係者もいるようだ。
 韓国大統領の「反日告げ口外交」がおさまらない。しかしそれとは無関係に徐々に韓国の経済が追いつめられているように思えてならない。韓国の国会は、日本の集団的自衛権行使に反対だとの決議をしたという。内政干渉もここに極まれりと言っても過言ではない。今しばらく近づかない方が良いとの考え方が国民のコンセンサスになりつつある。
 経済制裁をやるべきという意見もあるが、将来的にも経済崩壊の引き金を日本がひいたと言われるのでやめた方が良いと思う。むしろ日本に5万人いるとされる韓国人風俗嬢の国外追放を毎週、継続的にやったほうが効果的だと思えてならない。
 テレビ朝日の大野というソウル支局長が「日韓首脳会談が開かれない本当の理由〜日韓関係の構造的変化〜」というレポート出した。日韓関係の悪化が止まらず、首脳会談が行われないまま1年が終わろうとしている。このような状況に陥ったのか。関係が改善に向かわない理由の一つは、日韓関係の構造的な変化だいう。これまで日韓関係のパターンは、「韓国が傷つき怒って、日本がなだめて譲歩する」というものだったが、日本国民の「いつまで歴史問題で謝罪すればいいのか」という長年の不満が加わり、嫌韓感情はかつてなく強まっている。「日本が怒る」という初めての状況になったと分析している。そこまでは同意しよう。
 しかし、彼の結論は、もう一度元のパターンに戻って日本が謝罪しろということらしい。日本政府内で慰安婦問題にかかわってきた人間に共通するのは、韓国政府の言葉を信じて河野談話を出し、アジア女性基金をつくったのに、結局韓国政府が国内からの反発に耐えられずに梯子を外したという意識であることに間違いがない。
 しかし日韓基本条約の交渉経緯を読めば、これからも梯子を外され続けるだろうと容易に予測できるはずだ。「日本はこれ以上何をすればいいのか」という思いが問題解決の歩みを極端に遅らせている。韓国政府はまず、この条件なら責任を持って国内世論や市民団体を説得して問題を解決できるという「具体的なゴール地点」を水面下で日本政府に提示してはどうだろうかという。それができれば苦労はない。
 しかし事実を明確にする以外に解決はないというのが自分の考え方だ。嘘偽りの妄想の歴史の上にゴールなどあるはずがない。大野さんが言うように、日本は「慰安婦問題が中国や北朝鮮に広がったら大変」との懸念から「法的責任」は認めない立場をつらぬいてきた訳ではない。そうした事実がないからねつ造だと言っているだけなのだ。日韓基本条約50年というがその条約交渉の経緯を日本側も明らかにすべきと思われる。それを読めば、日本がずっと譲っていることだけが明らかになる。
 慰安婦問題は、戦後、日本共産党から立候補したことのある吉田清治の嘘と、朝日新聞の植村記者の報道に始まった。それが今年3月8日の水間政憲氏の論証と中山成彬議員の国会質疑で明らかになった。
 南京大虐殺本多勝一の調査不足の報道に始まった。朝日新聞が、南京陥落後、イの一番に南京に大報道陣を送り込んだことは確かだ。その責任者は戦後、自民党の幹部となった。1927年に早稲田をでて朝日新聞社に入社し、満州を皮切りに中国で記者生活を送り、1937年8月まで南京支局にいて、その年の12月に南京を日本軍が占領した際には、15人の記者を連れて一番乗りしたのは橋本登美三郎さんだった。しかし戦後の聞き書きでも日本側に南京事件の証拠は何一つ見つからないのである。それも嘘をつくとも思われない良識ある人たちの証言である。
 靖国神社A級戦犯合祀の問題も、朝日新聞加藤千洋氏の記事に始まった。彼はその時、国際法におけるA級戦犯の歴史的解釈の問題が何であるかの本質を考えたこともなかったのかもしれない。
 いずれにしても、コミンテルンをはじめとする情報機関の逆宣伝と米国を中心とする東京裁判史観の合成の上に成り立ったタメにする証言と歴史が流布拡大していくことに歯止めをかけて事実を明らかにすべき時期に来ている。韓国との問題では、安易な謝罪と賠償が何も事態を解消しなかったというのがここ50年の経験だった。千年韓国を植民地にしてきたのは中国であって日本ではないことは言うまでもない。