内外情勢 2013年8月 戦後の終わりの始まり

1.戦後の終わりの始まり
 内閣法制局長官に駐仏大使がなることがきまった。集団的自衛権の議論を進めるシフトだという。同時に秋に向けて国土強靭化のための45プロジェクトの優先順位づけが議論されている。安全保障会議の創設は首相指示によって繰り上げられ、防衛大綱が最終的にはそこで見直される。ようやく安全はタダだと考えていた戦後が終わりつつある。
 米国は今後10年間に防衛予算を55兆円削減するので、年平均での削減額は、日本の防衛費を上回る。連携しつつも、より自律的な安全保障体制へ移行せざるを得ない。秘密保持やインテリジェンス体制も強化される。
2.異常な円高も修正された
 アベノミクスの評価は様々だが、理不尽な円高は是正されて日本企業の出血は止まり、収益力が回復しつつある。これでは労働組合は消極的にではあれ、アベノミクスを支持せざるを得ないのではないか。輸入物価の上昇を非難する声もあるが、それによって輸入品との価格競争をしていた国内の雇用の減少にも歯止めがかかることも指摘されなければならない。
 ドルに連動して為替相場を設定していた中国、韓国の経済は厳しいようだ。それは彼ら自身の社会内部の矛盾が拡大していることが大きい。両国政府は、反日宣伝を強化し、領土侵略と慰安婦問題を梃に事態を打開し、その責任を日本に転嫁しようとしているかのようだ。日本のメディアは財務省の発表をうのみにして政府の負債ばかり取り上げるが、普通の政府は資産と差引して差額の負債を発表しているはずだ。その意味では日本政府の負債に関するメディアの経済解説は信ずるに足りない。僭越ながら、浜田宏一先生の意見が最もバランスが取れているのではないか。
3.異常気象とTPP
 異常気象が続いている。気象解説がニュース番組の目玉の一つになりつつある。来週からまた暑くなるというが、海の家の経営も厳しいのではないか。気候変動の影響をもろに受ける農業、漁業はもっと厳しい。TPPの交渉は遅れ気味とのことだが、秘密交渉であるため委細がわかない。気候変動が大きくなれば、食料安全保障を重視せざるを得ない。ただ日本がTPPに参加したことによって、アジア太平洋はまとまり、米国と欧州の自由貿易協定の交渉も進みだしたかのようにみえる。中国もTPPに関心を表明しだした。
4.中国の見果てぬ夢
 大手のメディアはまだ報じてないが、ここのところ、訒小平温家宝クラスの中国の要人家族子孫の亡命の噂が絶えない。社会の上流階層ほど海外に脱出したい国が良い国であるわけがない。
 6月のカリフォルニアで行われた米中首脳会談以降、中国の習近平国家主席に関する評価が定まったような気がする。
 3月の全国人民代表大会の閉幕式演説で、彼は「中国の夢」を強調した。党、国家、軍の最高権力を一手に集めた彼は「中国を復興させる」との言葉を繰り返し、豊かで威厳のある強国を築くとの夢を語り続けてきた。
 しかし習氏の真意を探るには、内部での発言にもっと注目すべきという。習氏は党員との内部交流の席で、政治改革について「欧米の政治体制とその普遍的価値観を取り入れるという理解は、改革に対する『誤解』であり、中国の特色ある社会主義の道に沿って改革を行わなければならない」と説明しているという。
 習主席は「より効率良く、よりクリーンな政治」の構築を目標としているが、それは中国の現下の体制では見果てぬ夢ではないだろうか。日本は中国が冒険主義への誘惑にかられないように、着々と抑止力を構築していく以外にはない。
5.韓国の溶解あるいは雲散霧消 
 「歴史を忘却した民族に未来はない」との横断幕が日韓戦のサッカースタジアムに掲げられた。韓国の人は、慰安婦像の設置と同じく、日本のことを批判しているつもりのようだが、それは韓国の自画像ではないか。
 竹島について、韓国は「独島はわが領土」という歌を幼稚園から歌わせている。しかし朝鮮の文献に独島の地名が現われたのは1906年で、それ以前には、朝鮮の人々は島の存在すら知らなかった。「大韓民国の物語」という歴史の本の中で、慰安婦問題の存在を否定したため元慰安婦の前で土下座を強いられたソウル大学の李栄薫教授は、大衆的な思い込みが先にあるため、その認識に逆らう勇気を出すのが難しいという。つまり、教科書にも真実を書けないという。
 キーセン観光で外貨を稼いでいたのは韓国国家だったし、彼らの風俗産業だった。現在も女性の地位が低く、23万人が国内で、8万人が海外で風俗産業に従事しているという。海外8万人のうち5万人は日本に、3万人は米国と豪州そして欧州にいるという。しかも日本人を詐称している人も多いという。詐称でないとすれば、日本国籍を取得してから出稼ぎに行っている人もいるようだ。
 出稼ぎが多いのはそうした女性ばかりではない。今や韓国民の7-8割が海外に移住したいと考えているという。もはや国の存続自体が難しくなっている。米国でも韓国からの移民が激増している。この7月末にカリフォルニア州グレンデール市では慰安婦を象徴する少女像が設置された。図書館脇で行われた像の設置式典は、地元警察官が警戒にあたる中、韓国国旗や日本批判の横断幕を掲げた韓国系住民300人が詰めかける物々しい雰囲気だったという。韓国系団体が費用約3万ドルを負担し、ソウルの日本大使館前に反日団体が設置した少女像があり、韓国側の主張が刻まれたプレートがあるという。グレンデール市は人口19万人。北の山並みがアララト山に似ているため大量に流入したアルメニア系住民は9万人に上り、韓国系1万数千人で人口の半分を超える。両者が手を組めば市政がを握ることができるという。人口が1千人弱の日系人たちは今、像の設置が引き起こす影響を懸念している。多数決で歴史を決められてはたまらない。彼らが批判しているのは、日本という鏡に投映された自画像に思えてならない。
 韓国問題の専門家によれば、日本にとって慰安婦批判以上に本当に大きな問題は、米韓両国が2015年12月に韓国軍の戦争時の統制権を米国から韓国に返す予定となっていることだという。韓国の未来は韓国民が決めれば良いことだが、在韓米軍の兵力が大幅に削減される可能性がある。当初、統制権を2012年4月に戻すことになっていた。しかし、早期返還には韓国軍の元老や保守系メディアの強い反対もあり、その時期が2015年12月に延期された。朴大統領は選挙公約では2015年の返還を予定通り実施するとしていたが、時期尚早との国防省の建議を受けて考えを変え、米国への再延期の提案しているようだ。
 統制権の返還は、もともと韓国側が言い出した問題だ。反米を旗印に掲げて当選した左派の盧武鉉大統領が 自国の軍隊も指揮できないのは独立国としておかしいと米国に対し統制権を返すよう要求した。米国には、統制権問題を反米の材料に利用されてはかなわないという判断もあり、経済的な負担も減る。統制権を返せば、韓国防衛の責任も韓国側へと引き渡せる。ならば、陸軍中心の在韓米軍の規模も縮小できる。最終的には被害の多い陸上戦闘は全面的に韓国軍に任せ、海軍力は日本から、空軍力は日本やグアム、あるいは米本土から支援できるというのが米側の考えだ。しかし誰が考えても2つの指揮体系の下、戦争するのは極めて難しい。ここ数年、日本では日米の司令部が一体化しつつある。それは既に日本自体が最前線となりつつあることを示唆している。
 2007年に統制権の返還と連合司令部解体が決まった時、中国人民解放軍の関係者は「これで米韓同盟はなくなったも同然だ」と喜んだという。米国は連合司令部解体を機に、次第に軍を韓国から引いて行くだろうという読みだ。 既に、通貨スワップを中国だけに頼ることになり、国の命運を中国に託した韓国が中国にNOとは言えないだろう。韓国の内側からも、中国の圧力に応じる動きが出るだろう。北朝鮮の恫喝から黄海のテロまで中国に抑止してもらえると韓国は期待し始めたようだ。そして今後、選挙において左派が勢力を強めれば朝鮮半島は事実上、北に統合されることになる。再延期されたら、韓国は米国側にとどまるのだろうか。それも怪しい。「在韓米軍が存在する限り、中国と米国の紛争に韓国は巻き込まれる」との思い込みだ。米国の最大の仮想敵は中国であって北朝鮮ではない。韓国は結局その伝統に従って、中国に臣従し、溶解し雲散霧消する。
6.靖国参拝を希望する
 8月15日に安倍首相を靖国神社に参拝させない圧力が、国の内外からかかっているようだ。個人的には、平和を祈念し、祖国のために命をささげた人々の慰霊のために、首相自らが靖国に行ってほしいと考える。
 冠婚葬祭は土地の習俗であり、日本は中国、韓国とは文化が異なり、死生観も異なるようだ。外交論として考えても、中国・韓国から反対されればされるほど、内政干渉の誹りを避けるためにも断固行くべしというのが自分の考えである。そのことによって首脳会談の設営ができなくとも止むを得ない。こちらからは確たる会談の必要性はないと思う。