見事な沖縄訪問

 2月2日、安倍首相は首相就任後には初めて沖縄を訪問し仲井真知事と面談した。メディアの論調はさまざまだが、見事な動き方だったのではないかと思われる。内閣成立後、すぐ年末に福島に行き、年初に伊勢に行き、外遊から帰って、予算編成をこなした上で、次の地方訪問地が沖縄だった。今回の訪問の目的は、何よりも「まずはこの3年間で失われた国と沖縄県の信頼関係を再構築することから始めたい」という首相の言葉に集約される。
 県知事との面談以外の日程を仔細に見れば、沖縄の防衛と産業振興を通じて沖縄県民との信頼関係を構築したいという意図がはっきりするのではないか。戦没者慰霊碑への献花、普天間基地を高台からの視察するとともに、昨年の秋から学生を入れ始めた恩納村沖縄科学技術大学院大学を視察した。沖縄の振興は教育からという考え方に基づいて設立された5年制の大学院大学だ。1学年20人の少数精鋭だ。その他には、自衛隊、県警、海上保安庁をそれぞれ個別に訪問したという。「我が国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しており、我が国固有の領土・領海・領空や主権に対する挑発が続いている。私も先頭に立って、今そこにある危機に立ち向かい、我が国の領土・領海・領空を断固として守り抜く決意だ」と激励した。
 多くのメディアには書かれて無いが、仲井眞知事の言葉の使い方は、前の政権に見せていた表情とは全く違っていたように感じられる。それは沖縄振興予算の金額の大きさだけではないというのが自分の見立てだ。
 沖縄に行っていないのに何故そんな判断ができるのかというと、知事との面談の公開部分や、面談後の両者への囲み取材の様子が、無修正の動画としてアップされていたからだ。もう一つは、昨年8月の沖縄青年会議所が主催した「祖国復帰40周年記念シンポジウム」で、衆議院議員の肩書きで沖縄振興論について話す安倍さんの基調講演の動画を見たからである。簡単に言うと、安倍さんの言っていることは、付け焼刃ではなく彼の持論なのである。自分の沖縄振興論を、首相として主張し実行していると見て良いのではないか。加えて、山本沖縄振興大臣はこの訪問前に5回、県知事と会ったという。那覇空港の第二滑走路の早期着工を決めたことも大きかったと思われる。