尖閣諸島侵略の目的はアジアの覇権

1.中国の外交攻勢
 公明党山口那津男代表は習近平総書記に対し安倍首相の親書をようやく手渡せ、日中首脳会談の早期開催を働き掛けた。習近平氏のコメントを読むと早く中国に挨拶に来いといっているようだ。東京の中国大使館は、鳩山元首相に続いて、引退した旧社会党の村山富一元首相、落選した自民党加藤紘一官房長官まで中国に招待して日本国内の親中派を総動員している。自民党内の親中派の大物は引退し、李克強氏と親しいとされる小沢氏に昔日の勢いはない。次は日中友好議員連盟の会長をされている自民党副総裁の高村正彦氏の動きが注目されている。 
2.尖閣諸島の軍事的な意味
 連日のように領空侵犯が起き、接続水域・領海への中国政府の船の侵入が繰り返されていること、総参謀部が全軍に(日本との)戦争の準備をせよと指示していること、中国軍の高官が自衛隊機や艦船への攻撃すれば「賞金を出す」などとの発言していることが報じられていることもあって、普通の日本人にも中国が軍事的な圧力を高めていることは分かっている。本気で尖閣諸島と沖縄の侵略を始めたと観ている。機密情報に接することのできない一般人でも、軍事的な緊張感のレベルを知る方法がある。それは新聞に載る米国の空母とF22などの戦闘機の配置である。また米国の国務省国防省の高官・元高官の来日頻度と面談相手である。このところ動きが激しい。
 尖閣諸島について、漁業資源やエネルギー資源の問題を言う人がいる。それに異論はないが、尖閣諸島がとられれば、与那国、石垣、宮古とともに台湾の安全保障に影響がある。また沖縄本島では、どこかの国に示唆されたグループのデモが頻発するだろう。台湾が中国に編入されるということは、戦略原子力潜水艦の隠れやすい海の深い南シナ海と台湾の東側が、中国海軍のものとなることを意味する。そうなると、海南島の三亜を基地とする戦略原子力潜水艦の意味が出てくる。南シナ海の北側と東側は中国のものとなる。そうなると、中国は、核戦力として米国と対等な戦略能力を持つこととなる。南シナ海が聖域化すれば、これから世界で最も経済が活発になるはずの東南アジアの国では、華僑の人々の影響力もあって中国の影響力がぐっと増す。
そのことは、チベットやウィグルの人々が苦しんでいる中国共産党の統治がアジア全域に広がることにつながる。
3.オスプレイ反対デモの正体
 昨日東京で、沖縄の人たちのデモがあった。4000人が参加したと報じられている。驚いたのは、オスプレイ反対デモだという。米軍(陸軍・海軍・空軍・海兵隊)全軍の主な航空機の最近10年間の事故率(FY02〜FY12)、全軍の主な航空機の初期10万飛行時間での事故率、オスプレイのクラスA,B,C事故の詳細などを読むと、オスプレイの危険性は今までのCH-47チヌークなどよりかえって少ない。オスプレイに早急に替えてほしいというならば理屈が立つが、ワイヤーを仕込んだ風船を基地周辺で飛ばすことなどは正気の沙汰ではない。どんな機体でも初期不良はあるものの、オスプレイは導入初期の段階で事故率が低いことは誰が見ても明らかだ。
 「オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会」実行委員会による東京集会が昨日開かれた。県内外から主催者側発表では約4000人が参加したという。実行委共同代表の翁長雄志市長会会長は「沖縄が日本に復帰しても、0・6%の面積に74%の米軍専用施設を押しつけられ、基本的人権は踏みにじられ、今回のオスプレイの強行配備で怒りは、頂点に達している」と沖縄の現状を説明し、「安保体制は日本全体で考えるべきだ」と訴えたという。 地方自治体の首長や県議会議長などの政治家が144名が参加したというが、多くの参加者は本土の新左翼労働組合員ばかりで、イメージが違ったのではないだろうか。それは沖縄のメディアを牛耳る2大新聞がオスプレイは危険という虚偽の情報を扇動しているからである。2大新聞に反旗を翻せば、選挙は戦えない。マスメディアが偏向していては正しい選択は行なえない。
 基地負担の軽減のため、辺野古に基地を移転することになったが、辺野古の人々の7割が基地の拡張に賛成していても、本土からきた基地反対闘争の専門家が基地反対の旗を振っている。外務省の見解では、既に「辺野古埋立てと海兵隊のグアム移転は切り離されている」こともあって、沖縄の了解を得られる見通しを勘案した上でゆっくり丁寧に申請時期を判断するべきとの判断があるという。しかし遅れれば遅れるほど日米同盟の基礎は揺らぎ、中国は喜ぶ。当然、基地反対派を支援するだろう。反対派にしてみれば少人数で日本の安全保障政策に影響を与えることができるので、反対闘争に力も入るという構図がある。
 日本政府と自衛隊がもっと前面に出て、沖縄と日本、そしてアジアの安全保障をマトモに論ずる必要がある。自衛隊は、南西地域の即応体制を強化するため那覇基地に十数機のF15戦闘機を新たに配備し、2個飛行隊にする計画だという。
 日米の動きに対抗して、つい先日、中国が、ロシアから、珍しく最新の戦闘機と爆撃機の大量購入を決めたことが報じられた。今までロシアの航空機を数機導入して、それを元に、中国国内でコピーするということを繰り返し、ロシア側の怒りを買っていた。数は多くても航空機自体の性能・稼働率が悪かったが、ここに来てロシアに頭を下げたものと見られる。本気で準備を始めたのではないか。
4.中国からの脱出
 日本政府が指導しているわけではないが、中国における日本の企業も動き出した。軍事的緊張の高まり、貧富の差により暴動が発生しやすいこと、暴動発生時に日本人の保護がなされないこと、売り上げの不振、共産党に指導された労働組合との団体交渉の強引さ、生産性・技量の向上なき賃上げの要求もあって、日本から中国へ進出した企業の撤退検討が始まっている。中国側に撤退を申し入れると、契約にもない法外な撤退賠償金を要求される事例が報告されている。最も安全な中国事業の撤退方法は「夜逃げ」だと主張する人もいる。
 中国国内の調査でも、中国人と中国企業に、現在、第3次移民ブームが起きているという。個人資産が1億元(12億円)以上の超富裕層では、27%の人がすでに海外に移民し、47%が移民を考えているようだ。個人資産が1千万元(120百万円)以上の富裕層は、6割弱が既に投資移民の手続きを終了したという。その理由は「中国旅券の不便さ」「治安の悪化」「幸福度の低さ」だという。2011年の薄煕来の重慶事件以降、ダメージを受けた多くの企業は不安を感じており、大企業ほど営業拠点を海外へ移転しているという。中国からの脱出は、日本の企業だけの問題ではないらしい。台湾の企業も日本シフトを始めたのではないか。
 NHK朝日新聞日経新聞などを大手メディアは、中国との関係を重視するあまり、正しい歴史認識や事実報道からの乖離が見られ、かつてほど、信頼される情報ソースではなくなった。中国に不利なことは報道しないとの日中記者協定はまだ破棄されていないのかもしれない。中国脱出の動きは報じられていない。
 尖閣諸島与那国島石垣島下地島沖縄本島への自衛隊の配置を強化するとともに、沖縄の産業振興と経済社会の一体化に注力すべきと思えてならない。尖閣諸島侵略の目的はアジアの覇権だと考えれば、棚上げ論など出てくるはずもない。正しくは、棚上げして守りを固めよである。