この1年の困難 (2)大人の対応 外交安全保障

(1)中国の負の遺産と歴史の見直し
 1月4日に鳥居民さんが亡くなられた。尊敬すべき歴史家だった。2004年に日中衝突を予見し、その原因は、中国共産党一党独裁を守るための江沢民時代の「愛国主義教育実施綱要」にあり、と見抜いたことでも知られている。中国の新体制について、昨年11月の産経に寄稿した論文を「政治と経済が密着した中国共産党の世界では、汚職と腐敗は一つの文化を織り成している。改革開放政策の副産物でもある莫大な負の遺産を、習総書記は引き継いだのである」と結んでいた。
 この見方に立つとき、昨今の鳩山元首相の中国における不適切な言動は、捏造された反日教育の正しさを証明する材料として使われることになる。そのことによって、彼は日中の衝突を加速・拡大する戦犯となった。目立ちたがりなのか、よほど弱みを握られているのかのどちらかである。
 支那人の行動の本質はこの数百年変わっておらず、戦前の「支那通」と呼ばれた人たちのものの見方が正しかったと考える人が増えている。そのことによって日中関係近現代史の全面的な見直しが進む端緒となるものと思う。つまり現在の尖閣周辺と沖縄本島でやっていることは、支那満州事変前に満州でしていたこととそっくりなのである。その意味では現在も昔も在野の歴史家の見方が正鵠を射ているようだ。
(2)第二期オバマ政権 
 第二期オバマ政権がスタートした。様々な考え方はあるが、安倍首相は、引越し最中のドタバタしているときに米国に行かなくてむしろ良かったのではないかと推察している。大統領との顔合わせもあるが、国務長官と国防長官がかわるからだ。オバマ大統領もクリントン国務長官も、4年前に就任されたときと最近では中国に対する見方もだいぶ変わった。
 国務長官となるジョン・ケリー上院外交委員長は、母上がフォーブス誌の創業家の出身であり、2004年の大統領選の民主党候補だった。外交・安全保障の専門家として知られている。日本ではあまり言われてないが、従来、親中派だとされ、中国は大歓迎している。本当かどうかはわからないが、中国の要望を断ったことがないというのが中国側の評価である。
 国防長官になるチャック・ヘーゲル氏は1997年からネブラスカ選出の上院議員を2期務めた方だ。共和党右派とは距離を置く現実主義者だという。ともに、それそれの地域の力を上手く使って米国の国際介入の負担を減らすべきという考え方だという。米国の新チームはどのような考え方をするのか、しっかりと理解するところから始めなければならない。
(3)日本の安全保障
 中国では、今年になって、日本との「戦争準備命令」が出ていることが明らかになった。日常的な訓練の一環だとしてもあまり気持ちの良いものではない。中国で最も強硬なのは人民解放軍、特に海軍だという。軍事費の大幅増強を要求しているという。
 しかし現時点で、武力衝突になっても、制海権・制空権ともそう簡単に中国の思い通りにはならない。中国の空軍基地から飛来したJ10戦闘機は全て自衛隊のF15、F2によって撃墜されるという。制空権は完全に日本のものだという。日本に押し寄せた中国海軍の戦艦、巡洋艦も全て自衛隊によって撃沈され、最後には復讐戦に乗り出してくる中国の原子力潜水艦海上自衛隊の最新鋭潜水艦によって撃沈されるという。
 尖閣諸島は、漁民に変装した中国特殊部隊によって占領されるが、海戦の結果、完全に孤立させ、F2戦闘爆撃機によって爆撃されて甚大な損害を被り、最後は強襲揚陸艦おおすみ」から放たれた自衛隊の精鋭200人によって完全武装解除され逮捕されるというのがシミュレーションの結果だという。しかし広報効果からいうならば、攻撃軍は中国で、防衛軍が日本でなければならない。
 米国の安全保障政策は2011年11月に大きく変わった。南シナ海を中国の内海にはしないという政策が明確に打ち出された。ただ防衛ラインも今までよりぐっと南下させ、空軍、海軍の部隊で南シナ海を守るという方針は軍事費削減の手段でもあるようだ。
 第二期オバマ政権でもそれは変わらないとすると、その防衛ラインの外側にある沖縄の海兵隊は徐々に削減される。日本やその他の国々は今まで以上に自らの力で自国の防衛を担わなければならない。尖閣諸島日米安保の範囲という言葉はありがたいが、尖閣・沖縄についても自分で守る覚悟が必要だろう。
 少し時間軸を長く考えれば、米国の有力な国際政治学者が指摘するように、2020年を超えて日米安全保障条約が続くことは期待できないのかもしれない。「自由と独立、平和と繁栄」という価値観を重視した国々と連携しながら、抑止力をとしての自衛隊を坦々と強化していく必要がある。今からそれを見据えて動いても、一通り揃えるのには少なくとも10年かかるという。そうした大きなコンセンサスを年内に形成しなければならない。
(4)国内の政局 「維新の会+みんなの党」連合
 年が明けて、本年の政局はゆっくり始まっている。維新の会は石原氏と橋下氏の共同代表制となった。橋下氏は、フランスの政治制度のように、地方の首長と国会議員の兼職を可能にする制度を作りたいといっているが、それは7月までの時間軸では難しいだろう。維新の会とみんなの党は、参議院選挙を意識すればするほど、合流するのではないか。ハッキリしていることは、彼らが7月に戦う主たる相手は自民・公明ではなく民主党だということである。民主党は、全ての世論調査政党支持率で「維新の会+みんなの党」連合よりも劣勢である。上手く候補を選べれば、次の参議院選挙で野党第一党となる可能性がある。民主党幹部は組織を立て直そうと労働組合巡りを始めているという。しかし労働組合幹部がなんと言おうと、円高を是正できずに雇用の危機に直面させられた人たちが、民主党を支持するとは思えない。
 テレビ番組で今回のアルジェリアの事件への対応で安倍内閣の対応を批判しようとした民主党の政治家がいた。同席した評論家がムッとして、2011年2月のカダフィ政権崩壊時、中国政府は10日間にリビアにいた36000人の中国人を避難させたこと、韓国は韓国人1400名とともに韓国企業で働いていた外国人労働者を避難させたこと、その時の日本の内閣は、邦人17名のために、自衛隊を出すべきか出さざるべきか議論していて結局何もしなかったことを指摘した。
 加えて鳩山元首相の言動がメディアで騒がれれば騒がれるほど、民主党の支持率は落ちていくだろう。
(5)「9.11」事件と日本への経済制裁
 「9.11」といえば2001年のニューヨークの世界貿易センタービルの惨事など米国で起きた同時多発テロを意味するものだと思い込んでいたが、中国では日本が尖閣諸島を国有化した日を指す。もともと日本人の所有者がいて、借地人がいて、日本に固定資産税が支払われていたので、領土・領海に関して新たな出来事があった訳ではないので、何で中国が興奮するのかというのは理屈がわからない日本人が多いと思う。それは理屈ではなく口実だからである。何故自分たちの国土に灯台や防波堤、通信施設を整備できないのか、日本国民は全く納得していない。都への寄付金は15億円ほどになったという。
 「9.11」のあと、中国のメディアは、当初、日本を経済制裁せよとの主張一色だった。しかし「日本が中国から輸入しているものは他の国から代替可能でも、中国が日本から輸入しているものは代替できない」ことが明らかになると、日本経済制裁論は急速に下火になった。具体的になされた経済制裁は、書店からの日本関係の書籍の撤去と病院における医薬品の撤去だったという。総書記になる直前の習近平氏が決めたという。
 日本では逆に、出版不況の中で中国をテーマにした書籍販売がことのほか売れるようになった。これからの中国で何が起こるかについて、多くの人たちが自分の頭で考え始めている。黒田耐閣下の「中国の大戦略」は今読んでも透徹したものの見方だと考え、ブログに「再掲」させていただいた。今後も中国とのイライラは続かざるを得ないだろう。
 中国にある日本の企業や工場へのデモ・破壊活動が著しかったために、操業は止まってしまったことに加えて、被害が補償されないために保険がかけれなくなった。労働ビザも出ないので、日本企業の中国投資は自然に止まった。個人的にはジニ係数だけみても「投資不適格」な国だと1月8日に書いた。今でもその考えに変更はない。中国は、中国だけにしかない生産基盤があるため、日本企業は離れられないという。しかし重金属と刺激物が混じった水と空気でどう生活し、どう工場でモノを作れというのだろうか。
 それでも、日本の流通グループ、イオンは今月になって、中国広東省広州市に食品スーパー「マックスバリュ」の中国1号店を開業したという。広東省では子会社のマックスバリュ東海が、2020年までに100店の開設と年間売上高1千億円をめざすという。マックスバリュ中部江蘇省マックスバリュ西日本山東省への出店を進めるという。食品スーパーはリスクは少ないのでそれもまた一つの考え方だろう。
(6)軍事的な緊張の高まり
 1月17日に米国の国務次官補や安全保障会議の部長が日本にやってきて中韓両国との関係改善を要請したという。もとよりそれに異存があるわけではない。こちらから仕掛けたわけではなかったからだ。そんなこととは無関係に連日、尖閣諸島と沖縄地域の軍事的緊張が高まっている。米軍は既に1月半ばより、バージニアからF22戦闘機1個中隊12機と300名の部隊を嘉手納基地に配備した。4ヶ月間の予定だという。岩国からもFA18も来ている。 沖縄のメディアは負担の増大だけを言うが、この軍事的緊張には全く触れない。
 四国沖では米軍のFA18と自衛隊のF4戦闘機が、空中戦を想定した訓練をしている。日米とも、東シナ海上空に空中警戒管制機(AWACS)を投入し中国機への警戒を強めている。AWACSは接近してくる航空機をいち早く探知する早期警戒機能に管制機能を併せ持つ。安倍首相はこの南西地域・空域の防衛力強化に11年ぶりに防衛予算を増やすことを指示したという。沖縄県尖閣諸島周辺の領空侵犯に対処するよう指示を出しているという。
(7)辺野古の人々 
 防衛大臣が1月16日に沖縄で県庁幹部や基地所在市町村の首長との面談をし、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設への理解を求めたという。辺野古区長や区民の人たちとも懇談したようだ。驚いたことに、彼らは条件はあるものの辺野古基地の拡張に全く反対していないことだ。反対のためのテント村は不法占拠している外人部隊のもので、辺野古の人ではないようだ。地元は彼らに出て行くように求めているという。
 もう一つ驚いたことはその事実が全国メディアに報道された後の、沖縄タイムスの記事である。「県民の総意を打ち消すごく少数の容認意見を看過できない」と報じ、「利害や価値観を共有できず、地域で孤立を深める懸念もある」と脅すような文章だ。調べてみると、名護の市長選挙は3年前の2010年1月24日に開票された。投票者数34553人(投票率77%)で、反対派の現市長52%、容認派の前市長48%の僅差だった。ほぼ半数は少数ではない。1年後に次の市長選がある。
 沖縄の2大メディアが事実を報道しないならば、沖縄に内閣がいって、そこから安全保障や沖縄の問題について国としての議論を発信する機会を設けるべきではないか。