福建省の戦闘機と北のミサイル

 中国の新しい空母は「張子の虎」だと10月に書いた。その時は、実際には空母から離陸する戦闘機の写真はなかった。甲板の上に並べられた戦闘機の写真もなかった。超低空で飛んでいる姿が空母から写されて公開されただけだったため、この空母は最終的にはヘリコプター空母として運用されるとみていた。今でもその見方は基本的には変わらない。空母のエンジン出力の問題、戦闘機のエンジンの不安定さを克服できていないからである。
 すると1ヶ月後の11月に実際に離着艦する動画が公開された。武器をはずし、燃料の積載量を軽くすれば、今のエンジンでも対応できるらしい。着陸の際の制動ワイヤはスウェーデン製だといわれている。離陸の際の飛行機のエンジンは、ロシアとの関係が修復されエンジンが供与されたのではないかと見る人もいる。軽ければ中国製のエンジンでも大丈夫だとみる人もいる。いずれにしても日本を威圧したいという意図だけが明確だ。
 ニューヨークを本社とする独立系の新唐人テレビは、今週、福建省の基地に戦闘機が多数集められていることを報じている。それは日本の総選挙と新たな政権に「尖閣諸島の実効支配を強化するな」という脅しなのだという。それが新設された福建省水門の空軍基地だとすれば、春暁ガス田までは200キロ、尖閣諸島までは380キロの距離であり、戦闘機でそれぞれ7分、12分の距離である。こちらは張子の虎ではなく、実弾もつめるので、本格的な軍事的威嚇である。
 ここ数ヶ月、米国も含むあちこちの多くの専門家が、中国の尖閣諸島への上陸・占領の可能性を論じている。そこで効いてくるのは、先日の米国上院の決議である。あの決議は、中国のこの戦闘機体制への警告という意味が大きかったと思う。
 予想される侵略のシナリオは、ほぼ一様だ。悪天候を理由に、漁民に扮装した元軍人を尖閣諸島に上陸させる。漁民保護のために武装警察を派遣する。日本の海上保安庁が出て行くと、保護のために中国軍が出てくるというものだ。そのときわが国の首相は、離島奪還部隊を投入できるだろうか。中国には10万人とも13万人とも言われる邦人がいる。日本にいる中国人は今年になっても危険を感じたことがほとんどないはずだが、中国では、日本大使であっても、安全が確保されてはいない。漁船体あたり事件のときのように、国家権力に拉致される可能性もある。中国のシナリオでは、米軍が出てこないように、慎重にやるはずだったという。
 加えて今回の新たに北朝鮮のミサイル発射実験が行なわれる。北朝鮮のミサイル実験は、韓国のロケット打上げに対抗する措置だったのではないだろうか。韓国のロケットは整備不良で結局打ち上げ中止になったが、北が打ちあげに成功すれば国威が発揚し、韓国の大統領選に影響があるかもしれない。
 このミサイル騒動で、自衛隊は、再び、南西諸島に部隊を増援し迎撃ミサイルを搬入する口実を得た。もともと自国の領土なのだから、どこに自国の防衛拠点を置くかは、他国に遠慮をする必要もないの問題である。まして他国に侵攻しようという人は誰もいない国である。ただ、北のミサイル実験は、野田政権にとっても誤算だった。選挙の人気取りのために、北朝鮮への援助と引き換えに北朝鮮から拉致問題調査の確約を得たことを宣言し、選挙を有利にしたかったといわれているのがダメになった。沖縄の次々と起きる米兵の事件の不思議さは、国際情勢の推移とあわせてみると、実にタイミングよく事件が起きていることだ。