総選挙の争点と沖縄の提灯行列

 事実上の選挙戦が始まった。問題の本質を捉えるために単純化することは大事だと思うが、今回の選挙の争点をTPP賛成か否か、脱原発か否か、消費税賛成か否かとマルバツ式で単純に捉えるのには抵抗がある。街頭演説の動向を伝える報道で、民主党の大きな問題点に気がついた。それは、正しい問題設定ができない人たちが多いということではないだろうか。
 首相は、デフレの克服が課題だといっている中で、自民党への当てこすりでインフレが起きたら困るのは誰なのかを力説しているという。デフレ経済で日本を壊しているのは誰なのかを聞きたい。まともに情報をインプットされていないのではないか。質問されたり、反論されることのない、国際会議の後の記者会見でしか重要な政策を発表しなかったのは、それに対応できないということなのだろう。
 韓国政府は先週、危機管理対策会議を開いたという。急激なウォン高で韓国企業の輸出競争力が急激に低下したため、為替防衛に取り組むことが表明された。韓国の輸出企業はウォン高で厳しい状況だという。ウォン相場は6月初めの1ドル1180ウォン台から1080ウォン台へと5カ月で100ウォン、8%上昇した。日本円との関係で言えば、自民党の安倍総裁の発言もあって日本の円が2-3%下落しているため、日本円に対してウォンが12%も高くなり、韓国政府と企業が身構えているという。韓国のメディアは、ウォン高の最大の原因は、米国の連邦準備制度量的緩和、QE3であり、先進各国の中央銀行が景気を下支えするために事実上、無制限に資金を供給しているからだという。各国が外貨準備に円を組入れる中で、少し円高が修正されたのは、安倍総裁の発言が「無制限」に金融緩和をするとした点に市場が反応したのだろう。
 普通に考えれば、今回の総選挙の第一の争点は、ここ3年3ヶ月3代の民主党政権運営の評価であり、そのまま行くのか交替させるのかの選択であり、外交安全保障路線の選択だと思われる。自民党総裁選で、安倍さんと石破さんが浮上したのはそうした背景があった。中国と韓国が、日本の軍国主義化、右傾化が問題とだと騒ぎ出した。以前だったらどちらも大変なことになるが、日本を侵略しようとしている国、不当に名誉を侵害している国が言っても全く説得力がない。
 第三極の石原新党大阪維新の会が合流したが、みんなの党とは合流が進みそうではない。既に小選挙区でバッティングしているからだ。石原新党から立候補していた西村真吾さんは、堺の小選挙区では公認されず、大阪比例区から出ることとなった。転進に際しての言動、大義に生きるという志には感動させられた。しかし、そうした人は珍しいのではないか。資金面も含めて、追い風ばかりというわけには行かなくなったようだ。名古屋グループは亀井さんと合流し、小沢グループと連携するといわれている。
 先週、沖縄をご訪問された天皇皇后両陛下を歓迎して行なわれた那覇市国際通りの提灯行列には5000人以上の人たちが参加された。行列は、緑ヶ丘公園〜国際通り〜県庁前〜58号線〜奥武山公園へと進んだ。公園では天皇陛下万歳が行なわれ、君が代斉唱が響いていたという。アップされたビデオに写る沖縄の人々の笑顔は実に自然であり、ビデオをみているだけで嬉しくなるニュースだった。皇室はまさしく国民統合の象徴であることを改めて実感した。沖縄の新聞を読み、大手メディアだけ見ていると確かに判断が偏ってくる。
 加瀬英明先生が最近のコラムでこう書いている。「これまで日本は平和憲法の発想によって思考を停止して、世界の現実を直視する力を失って、ひたすら外国と摩擦を生じるのを恐れ、平和国家ぶって得意になってきた。・・・尖閣諸島という小島をめぐって日中が武力衝突した場合に、どうして独力で守ることができないのか。他人委せの平和を誇ることはできない。」
 自分たちの力で尖閣諸島を守り、沖縄を守り、日本の名誉を守ること、そのことが今回の選挙で問われている我々のもう一つの争点である。