新嘗祭と金融政策 インフレ率は3%

1.時論
 モンゴルで日本と北朝鮮の政府間協議が行なわれ、できるだけ早い時期に再び局長級協議を行うことになったとという。北朝鮮もお金が必要なのだろう。その交渉経緯を説明した外務大臣が次の交渉が選挙の投票日の直前になることを今から気にしているのが、奇異だった。外交問題を選挙に利用しようとしなければ良いのである。
 12月に予定されていたロシアの大統領との面談はキャンセルされたのだろうか。天然ガスの購入や電力の購入で民主党の政治家が利権をあさっているとの噂が絶えない。一般に、原油価格とロシアの経済成長率は比例している。シェールガスの出現によって国際エネルギー価格が下落しているので、ロシアの経済成長率も減速せざるを得ないという。じっくり構えていることが国益になる。今でも極東のロシア軍は、日本の漁民に対する漁業権の販売などによって維持されているという。漁民に対して10年ほどロシア領海に行かなくても生活できる算段をしてロシアと北方4島の交渉に当たるべきなのではないか。
 民主党の鳩山元首相が民主党のTPP参加に反対なので選挙には出ないという。事実は元首相が出ても落選するので出たくないだけだという。TPPにしたところで民主党の方針は、今もって正式には決めることができない。メディアを通じた民主党の政治家の発言は未だ大きく取り上げられてはいるものの、世襲批判であったり、公共工事批判であったり、自民党の政策への批判ばかりで、日本の将来の姿を論じてはいない。既に心は野党となっているのかもしれない。というより、将来を論じても信用されることがないのではないか。それならば相手の批判をということなのだろう。とても付き合いきれない。
2.安倍総裁の金融政策
 自民党の安倍総裁の金融政策が話題となっている。有力な次期首相候補より再任はしないと明言されて、日銀総裁までが政治の議論に参戦し始めた。馬鹿げたことだ。首相から金融大臣までもが、中学生が習う決まり文句を使って、安倍総裁を攻撃し始めた。外資系銀行のエコノミストや英国系のメディアまで文句を言い出した。不思議なことだ。岩田規久男先生やエール大学の浜田宏一先生を持ち出すまでもなく、米国、中国、EUが「無制限」にお札を印刷しているときに、日本は10兆円もお札を増刷しましたといっても何の効果もないことは明らかだ。各国の中央銀行がドルを売って、円を外貨準備に組入れているという。日本以外の国がやっている政府と中央銀行の政策目的の共有を法律に書いて何が悪いのだろう。安倍総裁は「首相も題目を述べてきたが、デフレ脱却、円高是正ができなかった。私たちはご託を並べるのではなく、しっかりと結果を出していく」といっているという。安倍総裁の「無制限」という発言がなければ、円高は更に進んでいる局面ではないか。
 東日本大震災があって、福島の原発事故があって、政府が増税をしようというのに、なぜ円高が続くのか。自分の頭で考えたことのない人たちの議論が日本の製造業を潰し日本の雇用をなくしていく。
3.新嘗祭 1400年の伝統
 夕方のニュースで皇室のご様子が以前より多く報じられるようになった。内外の政治が騒然とし、殺伐とした事件報道が続く中で、皇室のニュースが流れると、少しほっとする。個人的には国の来し方の歴史を想い、行く末を考える貴重な時間となっている。
 近くは、秋篠宮ご夫妻とご長男の悠仁様の奈良の神武天皇陵参拝のニュースがあった。今週は天皇、皇后両陛下の沖縄ご訪問のご様子と、皇太子時代からの沖縄との関わり、お子様たちへの教育、大田実中将からの電文のことなどがまとめられていた。6月5日の海軍次官宛の「沖縄県民斯ク戦ヘリ 県民ニ対シ後世特別ノ御高配ヲ賜ランコトヲ」の決別電文がまだ防衛庁に保管されていることを知った。6月13日大田中将は自決されたという。54歳だったそうだ。こうした話と教科書の沖縄戦に関する断絶が気になっている。
 もうすぐ11月23日だ。勤労感謝の日であり、新嘗祭(にいなめさい)の日である。天皇陛下が五穀の新穀を天神地祇(てんじんちぎ)にそなえ、また、自らもこれを食して、その年の収穫に感謝する飛鳥時代皇極天皇に始まる宮中祭祀だという。五穀とは古事記では、稲・麦・粟・大豆・小豆であり、日本書紀では稲・麦・粟・稗・豆だという。皇極天皇は後の天智天皇天武天皇の母親であり、その在位は642年から645年だという。大化の改新の頃始まった儀式である。一時中断し、元禄時代に復活したとされる。伊勢神宮には天皇の勅使が遣わされて、大御饌(おおみけ)すなわち神様が召し上がる食事を供えるという。
4.荻原重秀のインフレ率は3% 300年前の経験
 新嘗祭が復活されたのは今から300年ほど前の元禄年間である。元禄・宝永地震は、これから起こるとされている東海・東南海・南海の3連動型の大地震であり、それに続いて富士山の噴火があった。
 時の幕府では、勘定奉行荻原重秀が金融財政政策を動かしていた。荻原重秀は、課税を強化し検地を推進したが、改鋳という手段によって、通貨の発行量も増やした。重秀は、政府に信用がある限りその政府が発行する通貨は保証されることが期待できる、したがってその通貨がそれ自体に価値がある金や銀などである必要はない、という貨幣国定学説を200年余りも先取りした財政観念を持っていたといわれる。幕府の改鋳差益金は500万両にもなった。従来この貨幣改鋳は経済の大混乱を招き、未曾有のインフレをもたらしたと考えられてきたが、元禄期貨幣改鋳の後11年間のインフレ率は名目で平均3%程度と推定され、庶民の生活への影響はさして大きなものではなかったという。