政治短観 11月14日

 特例公債法案の合意と選挙制度改革の0増5減を先行することで、解散の条件が整い、ここにきて1週間ほど前から年内解散説がメディアの一致した見方となっていた。首相もその意向を固めたと伝えられたが、12日の民主党常任幹事会の総意として解散に反対だとなった。離党やクーデターを示唆するグループもあった。政権維持への妄執がむき出しにされ混乱が拡大すると考えられた。
 そのため首相は14日の党首討論では、11月16日の解散を明示し退路を断って、次の首相とされる安倍氏に消費税増税とセットでの衆議院定数削減の確約をせまるとともに、党内クーデター派に反撃した。自らの政権に対する名誉ある幕引きを考えたのだろう。12月4日に公示され16日が投票日となる。都知事選挙の投票日と同じだ。この判断によって、次の総選挙は厳しいものの、民主党の保守派には政治的に生き残るための光が生じたとみる。
 一方で、民主党は人権救済法案の国会提出をしている。この法案が通れば逆差別が固定化し、言論の自由が制限される。それは民主党の支持母体への選挙対策なのだという。少し前から、TPPを選挙の争点にと前原氏が言い出した。財界と大企業の労組の支援獲得を目的としているらしい。奇異な感じがしていたが、解散総選挙のニュースに隠れて、日中韓FTA交渉が政治的な対立の反作用として進みだしていたことが公表された。米国への配慮を意識してのTPP参加を総選挙の争点にしたいと言い出したのではないか。
 個人的には、総選挙の争点は「ここ3年の民主党政権の評価と対応」だと考える。集団的自衛権行使の宣言、軍備の充実、デフレ脱却と雇用の確保がポイントだと考える。憲法改正手続きの容易化も進むのではないだろうか。どのような勢力が政権を構成するにせよ、こうした政策への大枠の合意はできているというのが自分の見方である。
 「国民の生活が第一」の小沢氏の裁判は2審でも無罪となった。「疑わしきは被告の利害に」という法理である。しかし彼らは総選挙において過去の民主党政権運営の責任を負わなければならないだろう。石原都知事の新党は「太陽の党」という党名となった。みんなの党と、日本維新の会という3派に減税日本が加わって大同団結されるならば、民主党に替わって第二党となるという。
 政策の違いを言う人もいるが、外交安全保障政策が大きく違っているわけではない。石原さんが先頭に立って発信することによって、維新の勢いは復活し、みんなの党にも脚光があたった。どこまで伸びるかは、最終的には個別選挙区での候補者個人の魅力次第だ。彼らに時間を与えないことが、既存政党を総選挙に追い込んだ理由の一つであったとも考えられる。
 解散総選挙のニュースに隠れているが、大阪市では特別区の区割り案が幾つか発表されたようだ。都市部において、最も行政効率の良い区分が、30万人基準なのか、45万人基準なのか、その行政権限と責任の関係がどう説明されているのかが気になっている。