増税、新党、エネルギー

1.それを日本ではサギと呼ぶ 
 民主党にも税制調査会があるという。議論する前から結論が決まっているならば調査会は必要ない。その会長氏が、「ゼロ成長でも増税できる」と述べたという。デフレから脱却できなくても消費増税は可能との見解を示したという。法律に書かれている経済成長率は努力目標で守る必要がないということらしい。
 財務省出身の会長氏は、日本の究極の競争力の源泉である相互信頼社会を壊そうとしているのではないか。デフレ脱却の努力もせずに、関係ないと言い張ることは、法律上問題なくとも、日本では騙したということになる。
 民主党内にも、 「名目3%、実質2%」の経済成長率に届かない場合の増税には慎重論があるというが本当だろうか。あれほど偉そうにこの条項を強調していたのは、どこの政党の政治家だったのか忘れているらしい。復興増税の流用に国民が怒こっているのは、法律違反だからではなく、震災復興のために国民は増税に賛成したのに、自分たちの好き勝手に使っているからである。それを日本ではサギと呼ぶ。
 御国のために誠心誠意、騙したならば、涙を流して辞任をすれば拍手を浴びるが、説教すれば醜悪だ。きっと解散総選挙となるまでそう考え続けるだろう。
2.最後のご奉公
 10月25日に石原都知事の辞任会見があった。新党をつくり、衆議院選挙に出馬するという。春先にこんな観察を本ブログに書いたことがある。「石原慎太郎都知事が動き出した。彼は、このまま、日本が衰退していくのをみるのが我慢ならないのだと思う。やるべきだと思ったら、一人でも戦う覚悟があり、先への構想力がある。気難しい老人だが、見識があり心と涙がある。個人的には首相として活躍していただきたい方の一人だ。しかし現実にそうなるかどうかは、わからない。ただ彼が保守再編の旗を揚げることで、日本の政治は大きく動きだすと考える。橋下徹大阪市長のグループとの連携が話題となっているが、それ以前に、2人がお互いの志と能力を認め合っているところにもっと重点が置かれるべきだろう。」
 平沼氏を代表とする「たちあがれ日本」が解党して合流するという。「たちあがれ日本」には、藤井厳喜氏をはじめとして30−40人の国会議員候補がいるという。「たちあがれ日本」の国会議員は、一般受けするかどうかは別にして、重厚な保守派の人たちで人格識見が優れていて、今の内閣よりは遥かに強力である。新党は大阪の橋下市長のグループとの連携を模索するという。原子力発電に関する考え方が異なるものの、そのスタンスはきわめて明確であり、橋下グループを通して、みんなの党と連携すればさらに大きな第三極となる可能性を秘めている。
 今年の春に報じられた政策を挙げれば、外交・防衛分野では「自立日本」を掲げ、日米同盟の深化と憲法9条改正による国軍保持、防衛産業の育成、「南西防衛戦略」推進、核保有に関するシミュレーションの実施、男系存続のための皇室典範改正、首相公選制などを明記した保守色を前面に押し出した内容となるという。経済・財政政策は、100兆円規模の政府紙幣発行、国の財政の複式簿記化などがあげられている。このほか、国家公務員3分の1削減、新しい教育勅語の起草、フラット税制などが盛り込まれるのではないだろうか。
 翌日より、内閣の大臣、幹部は口を揃えて石原氏の攻撃を始めたが、小中学生の弁論大会のようだった。28日に補欠選挙が行なわれている鹿児島の結果が出れば、民主党の崩壊は更に加速するとみる。
3.エネルギー政策
 各党間の政策で差が最も大きいのはエネルギー政策だ。個人的にはエネルギーや資源を考える際に日本のことだけを考えていても正しい方向は見出せないと考える。エネルギーや資源は世界的に考えなければいけない問題であり、将来の競争力を規定するものだからである。
 2011年10月末に世界の人口は70億人を越えたという。2050年までに世界の人口は90億人を突破し、今世紀中に100億人に達することが見込まれる。2050年までには、アジア、アフリカ、中南米が世界の人口の85%を占める。アジアの人口は2050年の50億人をピークに減少に転じる。中国も、2040年を過ぎると人口の伸びが止まり、急速な高齢化に直面する。それまでの30年間、如何にアジアの平和を守るかが、日本の外交安全保障の課題である。
 福島の惨状を考えれば、原子力発電を廃止するとと言いたくなる気持ちはわかるが、原子力のエネルギーなしに世界の人々の貧富の差を縮め、充分な食料供給ができるとは思えない。石炭も石油・天然ガスシェールガスもその分布には偏りがある。
 米国では「シェールガス革命」が始まったといわれる。米国での石油と天然ガスの価格が大幅に下落することによって米国経済が復活する可能性が出てきたという。まだその革命の全体像について、しっかり評価ができてはいない。エネルギー関係の技術開発は、再生可能エネルギーだけでなく、送電線を超伝導ケーブルに替えて送電ロスの大幅な低減、蓄電池の普及による電力使用の平準化、コジェネの普及、スマートグリッドを含むスマートエネルギーの普及などやるべきことはいっぱいある。材料をはじめとして様々な複合的な総合技術を持つ日本が、世界で最も安全で効率的なエネルギー技術を開発できる。長粼、広島を経験し福島で苦労している日本だからこそ世界一安全な原子力発電所を作ることができる。
 エネルギー政策について最近、最も感銘を受けたのは、京セラ名誉会長の稲盛氏が10月におこなった外国人特派員協会の講演だ。以下、その講演の質疑回答を要約しておく。
 現在の日本の高度な文明社会を維持していこう更に発展させていこうと思えば、原子力発電というエネルギーは必要だろう。原発ゼロという希望はあっても、それは難しいのではないか。
 不幸なことに日本の原子力政策は、実は鬼子のような育ち方をしてきた。つまり大変危険なものであるだけではなくて、発電後に出る高濃度の核廃棄物をどう処分するのか、なんの解決がついていない。青森県六ヶ所村にためたまま、使用済み核燃料の処理方法も未解決、それを国民に知らせないままに、原子力政策をどんどん進めてきた。それが大変大きな問題だった。全てのことを国民に知らして、こういう危険もあり、こういう問題も未解決のままだけど、どうしてもエネルギーが必要なので必要悪として使って行きたいと言っていれば、もっと正常な育ち方をした。
 今からでも遅くないから、赤裸々に全部国民に知らせながら、なんとか原子力を使っていかなければならないという事を訴えていくべきではなかろうか。原発なしで高度な文明社会を維持していければいいが、現在の科学技術では不可能だ。
 私は太陽光発電を日本で最も先駆けてやってきた技術屋で現在日本で一番生産量も多く、設置もしているのは京セラの太陽光発電なのですが、主エネルギーにはなり得ないと思っている。原子力発電は必要悪として、どうそれをコントロールして使っていくかということに力を入れなければならないと思う。
 稲盛さんは早生まれだが、増税、新党、エネルギーの第一線で活躍するこれらの方々は、1932年生まれの80歳だ。