看板を架け替えても

 解散時期を明示できないため自民党公明党との話合いは決裂した。法務大臣が体調不良を理由に辞任した。年内解散論を主張する閣僚に執行部は不快感を示しているという。何が起こっているのか国民にはわかりにくい。既に民主党内閣は分裂していて収拾がついていないのではないか。民主党内の「年内解散派」は、民主党が次の衆議院選挙で負けるのは仕方がないが、来年7月の参議院選挙との間が開いていれば、むしろ参議院選挙では「浮かぶ瀬もある」と考えているのだろう。
 しかしここにきて急速に浮上しているのが、「看板架け替え派」だという。国民を人質に衆議院の定数是正、特例公債法案を野党主導で可決させた後、首相に辞任してもらい、長身でハンサムな政治家を看板にして衆議院選挙を戦おうというグループだ。溺れる者は何かにすがりたいのだろう。個人的には、看板を架け替えても、それほど見通しが良くなるとは思えない。人当たりは良くても、彼の言動に、あまり真実が感じられないからである。「身を捨てても、お国のために」という志があるならば、既に9月の代表選に出て代替わりしていたはずだからである。仮に一時的に党内はそれで済んだにしろ、結局は離党者が続出して総選挙となるのではないか。年内解散派もそこを主張しているが分が悪そうだ。もともと民主党はバラバラだという解説を聞いても何の解決にもならない。所詮は器ではなかったと歴史に記されるのかもしれない。
 問題は日本を取り巻く国際情勢と経済情勢は、そんな政治ゴッコに付き合う余裕が全くないことである。政局騒ぎに眼を奪われて、あまり注目されていないが、超党派の米国の東アジア戦略チームから圧力がかかって、国際司法裁判所への単独提訴も韓国に対する追加的な優遇措置の廃止がストップしている。通貨スワップの延長だけを10月末にやめることになった。どこかに迂回ルートを設定したのかもしれない。韓国債の評価格付け自体を信じている人は少ないだろう。三つ巴となっている韓国の大統領選に余計な影響を与えたくないのだろう。アミテージさんとナイ教授が、日本の首相と外相に会い、続いて共産党大会直前の中国に出かけていった。おそらく続いて韓国にも行くのだろう。
 日本国民からすれば、腹立たしいこと限りないが、中国政府、韓国政府とも、反撃しない日本を攻撃して国民の不満を逸らしたいのである。日本のメディアは、中国からの観光客が減ったことばかり伝えているが、日本から中国への行く観光客も、ビジネス客もぐっと減ったようだ。中国への駐在員が、レストランで日本語を話しているだけで暴行される事件が起こるような国に、誰も行きたいとは思わないだろう。韓国ツアーもあれだけ理不尽な反日感情を見せられれば行きたくなくなるだろう。韓国経済も雇用がガタガタのようだ。海外での就職を目指す若者とともに、海外での建設労働をいとわない中高年のことが報じられている。中国も、韓国も豊かになったといっても、昔とそんなに本質は変わってないのではないか。優しい人は、「それほど生存競争が厳しいのだ」といい、厳しい人は、「道徳の問題だ」という。