延命政権の暴走 責任は野党に予算は与党で

 自公民の3党党首会談が決裂した。首相は衆院解散の時期を明示しなかったという。誰が見ても延命しか考えてない内閣だと思う。大臣の起用についても「滞貨一掃」とか「思い出作り」といわれても仕方のない面がある。
 首相は、予備費を活用して景気対策をと言ったといわれるが、その認識に唖然とする。今年は特に災害が多く災害復旧のための補正が必要だった。延命のために国会が開けず、補正予算が組めなかった。予算の執行に関しても、特例公債法案の成立見通しがなければ執行を延ばせるものは延ばすのが常識だ。景気に配慮して契約率をあげるわけにはいかないだろう。あるテレビ局が放送1日前に交付金の遅れに対するアンケートを46道府県に出したら44道府県がテレビ局に回答したという。それほど道府県はあきれている。それは野党の責任ではない。
 首相は、この期に及んで、北朝鮮やロシアと外交交渉をやり、「外交で大きな成果」を挙げ、「社会保障制度改革で成果」を挙げて選挙に臨みたいらしい。普通に考えれば、次期政権交代が確実とされ、国民的支持のない弱い政権がまともな外交ができるはずがない。不必要な譲歩を行い、外交的損失を招くだけだ。社会保障についても、普通に考えれば、選挙の当落が気になる人たちが将来を考えても、耳障りの良いことしか言えないまま制度が議論される。それでは現実的でまともな制度ができるわけがない。
 結局、野党との党首会談とは無関係に、臨時国会は29日に召集されることとなった。国会冒頭から与野党激突は不可避だ。それ以前に、民主党は議員の離党を止められず、衆院単独過半数維持も危ぶまれている。
 これから起こることは、所要の法案と、選挙で応援してくれる人のための変な法案を、与党が衆議院の多数で通して、参議院待ちという状況を作り、この法律が通らないのは野党のせいだと言い張り、野党に責任を押し付ける状況を作りたいのだろう。
 どうも、民主党には責任を他人のせいにする癖がある人たちが多いようだ。国家戦略相は尖閣諸島の問題は都知事が引き起こしたというが、その前に、中国が尖閣諸島を自らの核心的利益と宣言していた。既に外交的な棚上げは事実上成立しておらず、侵略宣言と同じ意味であることは日本国民周知の事実だ。だからあれだけ寄付が集まった。復興予算の流用は、疑いもなく民主党政権の大臣が了解したからできたことだ。たとえば、総事業費72億円の青少年国際交流事業では全体の3割が中韓との友好促進2団体に支出され、2団体のトップは、民主党の大物議員と外務省OBが占めている。次のホープとされる政調会長氏は、消えた年金問題を起こした自民党政治の反省がない中で、政権に帰る資格はあるのか聞きたいといったという。その問題が議論されたのは2007年のことだった。
 この3年間、民主党には聞きたいことが山ほどあったし、現在も数え切れない。多すぎてどれから取り上げるべきか考えているうちに、次の問題が起きてしまうというのが常だった。こうした人たちがリーダーならば、民主党に明日はないと思う。
 そんな政党が来年度予算を組みたいと主張している。予算を組んだ後に解散だという。まるで予算で利益誘導して選挙を戦おうとしているかのようだ。正気の沙汰ではない。この事態は「延命政権の暴走」と呼んでも良いと思う。
 多少、経済その他に問題が出ても、早く選挙をやったほうが結局はお国のためになるのではないか。自民党の長老の中には、衆議院で勝ったにしても、参議院のネジレは解消しない。それならば衆参同日選挙まで待ったらどうだという意見があるという。一見もっともだが、それに耐える国力とそれを許す国際環境があるかどうかで見方が異なってくる。そんな余力はないというのが自分の見方だ。