転換点にきた中国の経済社会

1.中国と韓国の「反日
 黄文雄先生は、中国・韓国の「反日」は一部の国民だと主張されている。その理由はここ数十年、日本への密入国帰化、さらには日本人と結婚した人数において、中国、韓国は常にトップを争っているからだ。生理的に「反日」なら、この数字はありえない。実際は中国も韓国も、日本に憧れにも近い感情を抱いているという。中国人にとって、安心で安全な日本はリラックスできる場所であり、何でも人のせいにしたがる韓国人は、日本人のせいにすると謝罪し賠償してくれると考えているという。日本人の気質の良さ、文化の高さは多くの国で評価されており、世界は中国と韓国の正体を見抜いているという。
2、日本人の「反感」
 国内における韓国人・中国人の反日とそれに対する「反感」の起源をたどると、近くは戦後の混乱期に行き着く。浜松事件、直江津事件、坂町事件の経緯を細かく調べるべきという。つまり占領軍当局GHQの指示により韓国人・中国人には日本の警察権限が及ばなかった時期があり、その時期の無法な活動が全国各地で問題となった時期があった。場所によって駅前の一等地の土地や商店街が彼らに占拠された。彼らが警察に殴りこみをかけるという事態もあり、警察と任侠団体としてのヤクザが協力して彼らに対抗するという時期があったという。この辺を扱ったのが、ヤクザ映画「三代目襲名」(東映、1974)である。現在はヤクザの構成員も在日が3割を占めており、暴力団対策法による指定団体となっている。
3.統計ではわからない中国 
 IMFや世銀のエコノミストは、修士号や博士号を持った当該国のエコノミストが派遣されることが多いために、当該国の政府の了解を得ないで経済見通しが発表されることは少ない。たとえば、日本に関するコメントについては財務省の主張の学術的表現だとみるのが常識だ。だからIMFによる中国経済の見通しの数字も中国政府の数字に準じているはずだ。
 ただ中国の内部では、歴史も経済も、政治なので、中国共産党の常務委員クラスの幹部でさえ、そんな統計数字など信じてはいないという。経済動向を判断するのに、発電電力量と輸送統計と貸し金統計だけを見ていると何かの本に書いてあった。
 今年報じられたニュースから2つ事例を挙げる。大きな公共投資がなされていても、それが本当に国民経済の発展に寄与するのかどうか疑問なのである。今年の6月、香港のサウスチャイナ・モーニング・ポストが、上流に建設された複数の大型ダムが原因で三峡ダムが深刻な渇水に陥っていることが報じられた。三峡ダムは世界最大級の水力発電所だが、水が不足すれば十分な発電ができない。上流に位置する複数の大型ダムが貯水し始めると、下流に位置する三峡ダムに必要とされる水量の確保がほぼ不可能だとのことである。上流のダムが貯水するようになったのに伴い、その下流域では深刻な干ばつによる 被害が頻発するようになってしまった。長江流域では、発電に必要とされている水量は長江の総流量をすでに超えていると専門家が指摘している。四川省の地質学者も、もし政府が 大型ダムの計画を見直さなければ長江はいずれ干上がってしまうと警告しているという。江沢民は発電の専門家であり、胡錦濤清華大学水力学部出身であり、温家宝は中国地質大学の出身なので、何が起きているかはよくわかっているはずである。問題はアジア全体の水源であるチベットで、多くのダムが計画されていることである。またアフリカの大河でも中国は同様のことを行っていると考えられるからである。
 アフリカの記事にはこんなのもあった。アンゴラの首都ルアンダから30キロの場所に、中国の投資による大型衛星都市がある。750棟の8階建て高級アパート、十数の学校、100を超える店舗。2800戸が売り出されたものの、そのうち220戸だけが売却されたというのである。不気味な静けさが漂っているという。それが、中国の国際信託投資公司が3年35億ドルを投じて建設した衛星都市「キランバ新都市」だという。橋や道路を含め、中国は住宅とインフラを提供した。すべてのアフリカの人々にとって有益で、またアフリカの経済成長ベースに適ったものだというが、英国のBBCは、「キランバ新都市」は、人々が移り住むにはあまりに遠く、非常に高価であるためゴーストタウンとなっているという。1部屋はだいたい12万ドル〜20万ドルで販売されているが、アンゴラ人の3分の2は一日につき2ドル未満で生活している。
 こうした町は中国にも数多くあることが知られている。中国国内の6000万戸の空室率はこうして積み上げられたのである。そうした会社を運営している人たちは、共産党政権や軍の幹部の子弟なので、銀行はお金を提供し続けるしかないという。そんな経済が続く訳がないのである。
4.転換点にきた中国の経済社会
 中国の4つの大手銀行とは言っても不良債権が開示されないから続いているのではないか。先頃、次期最高指導者の習近平氏が校長を務める共産党中央委員会直属の幹部教育学校で、「中国はいま、3千年に一度の変局に直面している」と分析されていることが報じられた。
 中国社会の問題点として道徳が崩壊し、イデオロギーは破綻し、価値観は欠如し、近視外交になっている。包括的な視野・戦略や具体的な道筋に欠け、国際情勢の変動も有効に利用できていないこと、政治改革が進まず、民主化発展が停滞していることなどが分析されているようだ。ただ大胆な改革も、共産党統治を守るための改革であることが強調されているという。
 米国経済の見通しも厳しいが、中国経済はもっと厳しいのではないかというのが自分の見方だ。中国で日本への経済制裁が発動されても、粛々と対応し、守りを固め、深追いすべきではないのではないか。中国の将来がどう動くかについて幾つかのシナリオが用意されるべき時期に来ているのかもしれない。