第3次アミテージ・ナイレポートへの共感と違和感

 やや旧聞になるが、8月15日、アミテージ元国務副長官とジョセフ・ナイ元国務次官補を中心とした超党派のグループが、日米同盟についての提言「第3次アミテージ・ナイレポート」を発表した。「武器輸出三原則」緩和と「集団的自衛権」容認を論じた2000年、2007年のレポートに続くものだ。日米同盟が漂流し、中国の隆盛と不透明性、北朝鮮の核や敵対的活動、アジアのダイナミズムの中で、瀕死の状態にあるとし、力強くかつ対等な同盟の復活を求めている。特に日本が今後の世界で「一流国」であり続けたいのか、「二流国」に甘んじるのかと問いただしているところに迫力があった。
 1、2次レポートで指摘された武器輸出3原則緩和と集団的自衛権については、既に民主党政権においても「武器輸出三原則」の緩和がなされた。紛争国に武器を輸出することはなくとも、価値観を同じくする同盟国にはもっと緩和をしても良いのではないか。あわせて武器購入価格のコストダウンを図るべきだろう。「集団的自衛権」は次の政権ができれば、政策転換がなされるだろう。自衛隊の名称も国防軍あるいは国軍に改称されても驚かない。集団自衛権は持っていても使えない権利という理屈は、いかにも変な理屈だった。
 具体的には、日本への提言9項目、日米同盟への提言11項目、米国への提言7項目の27項目が論じられている。いくつかの点で異論があるが、大筋では現在の日本政府の政策よりはずっと共感できる内容だと考える。
日本への提言
(1)原子力発電を推進すべき 
(2)海賊対処、ペルシャ湾の船舶交通の保護、シーレーンの保護
(3)環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)や経済・エネルギー・安全保障包括的協定(CEESA)などへの参加
(4)日韓両国における歴史問題の直視 
(5)日本は、インド、オーストラリア、フィリピンや台湾等との地域フォーラムへの関与を継続強化 
(6)日本の防衛力の増強、特に相互運用性のある情報・監視・偵察(ISR)能力と活動の強化
(7)イランがホルムズ海峡を封鎖する意図もしくは兆候を示した際の単独での掃海艇派遣
(8)防衛力の強化 
(9)国連平和維持活動(PKO)へ適切な交戦規定と装備を持ったの付与 
日米同盟に関する提言
(1)安全な原子炉の設計と地球規模での健全な規則の実施
(2)天然資源同盟を結ぶべき メタンハイドレート代替エネルギー技術の開発協力
(3)日米韓の歴史問題に関するアプローチへのコンセンサス
(4)日米同盟による中国への協働対処 
(5)人権に関する具体的なアクションアジェンダの構築と北朝鮮への韓国との同盟
(6)米国の「エア・シーバトル構想」と日本の「動的防衛力」などといったコンセプトの連携
(7)陸上自衛隊の水陸両用で機敏かつ展開容易な部隊への進化
(8)日米の共同訓練の質的向上と、グアム、オーストラリア等での訓練の強化
(9)将来兵器の共同開発機会の増大
(10)米国の拡大抑止に関する韓国との対話をサポートすべきこと
(11)日米で「ジョイント・サイバー・セキュリティー・センター」の設立
 米軍との協力推進については異論がない。日本は「航行の自由」を確保するため、沖縄を基点とした東シナ海南シナ海の航行の安全にも積極的に関与していくべきだろう。
 最も違和感があったのは、米国が日韓の「歴史問題」に関し、一定の関与することを明言していることだ。歴史を直視すべきことには賛成だが、今までの事なかれ主義に基づいた安易な謝罪や賠償は相互の理解を生まず、かえって誤解・反目の種となっていたことに日本国民は驚き呆れている。口には出さないが、韓国とは基本的に災害復旧と安全保障を例外として、普通の隣国として冷静で淡々とした関係を築くべきと考えている人が増えていると思われる。