着眼大局 日本の希望

1.民主党政権の終わり
 民主党の代表戦が始まった。選挙用の看板に期待された議員は福島復興を理由に代表選挙に出なかった。福島を理由にするなら上ばかり見ていないでもっと働けと思う。「できもしない、やれもしないと、わかっているけど大衆受けするような政策を掲げる政党は国民政党とは言えない」とある候補が大阪維新の会を批判した。それが自己批判ではないことが民主党最大の問題だ。
 新聞が報ずることによれば、政府は「尖閣諸島を国有化し固定的な施設を作らなければ中国は反日運動を激化させない」との読みが外れ慌てているという。日本の実効支配が進展することには何でも反対だろうが、今は、とにかく習近平氏以外に関心を逸らしたいという意図で反日運動を煽っているというのが自分の見方だ。しかし10月の党大会と体制固めが終われば、いずれにしても日本と尖閣諸島への圧力は増すというのが基本的な筋だ。だから今回の反日活動は徐々に激しくなる。早く大使の後任を決め、対応をとるべきではないか。慌てる方がどうかしている。なぜ安全保障会議を開かないのだろうか。
 今回の中国共産党上層部の内紛は天安門事件の時よりも深刻で、革命に転じる可能性もあると専門家が観ていると報じたのは、大紀元日本という法輪功系のメディアだ。米国ブルッキングス研究所の主任研究員の観方として報じた。十年に一度行われる共産党の指導部交代という時期に、まさに中国経済はハードランディングをしていること、そして共産党政権の統治の正当性は1989年の天安門事件当時よりもかなり疑わしく考えられていることが原因だという。
 秋の第18回共産党大会では、大規模な指導部交代が行われ、党と軍の幹部の7割が入れ替わる。そのため権力闘争で敗北することに備え、すべての高官が自分の資産を国外に移している。薄煕来氏は1000億円、鉄道部の前部長は2200億円を着服していたという。そのことが共産党の正当性を一層傷つけている。日本とは無関係に、中国の国内事情で反日運動のさじ加減が決まる。
 民主党政権選挙対策のために内閣として原子力発電をゼロにもって行くとしたいようだ。この方針には米国、英国、フランスなどからクレームがついたという。世界一安全な原子力発電所を作れる日本が、よく考えもせず考え方を変えるべきではない。現に、国際的な機関は日本以外の国での原子力発電所の増加を予測しているし、日本人の原子力技術者を韓国、中国の企業がスカウトに来ている。民主党の政治家は、世界のエネルギーの需給や世界経済のことなど考える能力と暇がないのだろう。
2.日本の希望
 自民党総裁選も候補が出揃った。石原、石破の戦いといわれるが、個人的には安倍さんが良いと思う。石原幹事長は、気難しい父親への対応に慣れていることもあって長老からの受けは良いかもしれないが、行革担当大臣の時の評価は最悪だった。その当時の見識・迫力からどれほど成長したのかはまだ判らない。言動に都知事のような重みや切れ味が感じられない。石破氏は法務大臣には向いていると思えるが、果たして最高指揮官としてはどうか。防衛大臣当時、自衛隊の制服組の評価が存外低かったのが気になる。上から下を正しく評価するのは至難なことだが、下が上を評価するには3日とかからない。彼は、その後、器が大きくなったのだろうか。それがこれからの選挙戦でメディアで報道してほしいことだ。
 誰もはっきり言わないが、今回の総裁選挙は、次の衆議院選挙と参議院選挙を戦う中で、政界をどう再編して、どう新しい日本を創るかの戦いの旗頭を決める前哨戦である。わかりやすくいえば自公民路線なのか、自公維新の会による大改革連合政権なのかが問われているのではないか。その答えは国民が決めることだが、そのためにも、自民党総裁には安倍さんが良いというのが自分の考え方だ。
 今の時点で維新の会をそれほど大きく評価すべきかどうかは意見が分かれるところだろう。ただ年来の道州制論者として一言付言すれば、昭和30年、1955年に道州制行政改革の課題とされたが、橋下市長が圧倒的な市民の支持で市長に転じられるまで、道州制は必要だと思ってはいても可能だと思ったことは一度もなかった。それにより3重行政の無駄を省くとともに、その余力を新しい地域経済の発展に向けることが可能になった。
 維新の会と自民党が国会で多数を占めればようやく憲法改正が可能となる。この数年間、中国の軍事的な拡大、北朝鮮のミサイル、民主党政権運営によって、何が安全保障政策としてが正しいかも身をもって経験した。領土や歴史認識の問題で、中国や韓国の性根もはっきりわかった。またこれ以上、米国依存の安全保障を続けるのも不健全だし、米国も経済力回復に力を入れなければならない。集団的自衛権を認めるだけでなく、憲法改正を通じて新しい日本の形を創るべき時期に来ている。ただ自らの老後の心配ばかりしていればよいわけではない。年はとっても産業を強化し、果たすべき使命がある。そこに日本の希望がある。
 各国の元大統領や首相をメンバーとする国際会議であるインターアクション・カウンシル、通称OBサミットが、興味深い報告書を今月出している。人口増加に伴う食糧需要の拡大に対応するためには、2025年までにナイル川20本分の水を確保する必要があるとのことだ。世界の人口は2025年までに約10億人増える。そのため農業用水だけでも年間1000立方キロメートルが必要になる。この量は、ナイル川20本分の年間の流量に相当するという。だから水がある地域では、それを有効に使って食料を生産しなければならない。世界的に考えれば、メガソーラーなどと言って、貴重な休耕田を浪費すべきではない。カナダの元首相は「将来の水不足による政治的影響は甚大なものになるだろう」と警告しているという。報告書では、国連安全保障理事会が水問題を最大の懸念事項として扱うべきだと提言した。国別に見ると、人口の増加や経済成長によって水が最も必要なのは中国、米国、インドだという。
 米国の食糧生産は日本のみならず、世界の食糧供給に大きく影響を与えるだろう。チベットの水利はアジアの平和の大きな要素になる。日本は他国と国際河川を持っていない数少ない国として、この分野でさまざまな貢献が世界にできる。ありがたいことだ。