中国の反日デモの裏の混乱

 反日デモを報じるテレビニュースの中に異変を感じた。動画でみるとハッキリわかるが、反日デモに迫力がないのである。その一方で中国の新聞各紙が大々的に反日デモを報じているという。奇異だ。中国で大々的に報じられるためには、共産党の指導が必要である。
 中国の習近平副主席は9月5日、予定されていたクリントン国務長官や、シンガポールのリー・シェンロン首相、ロシア代表団などの要人会談を直前に取りやめたという。中国外務省は「日程調整の都合」と説明しているが米国務省筋は習氏が入院しているという。6日、中国外務省は習氏が10日にデンマークのシュミット首相と会談するとしていたが、その会談も結局キャンセルされた。
 ネットで流れている噂は奇異なものだ。一説には、4日夜、2台のジープが習氏を乗せた車両を追尾し、故意に衝突し、後部シートに座っていた習氏は、すぐさま中国解放軍総医院の301医院に搬送されたという。一時、意識不明に陥ったが、現在、意識は回復しているという。その背景説明は衝撃的だ。薄煕来氏を支持する軍隊と警察関係の勢力が、薄氏に対する処罰に不満を持ったために暗殺計画を実行したという。指導部の中には、政治局常務委員の周永康氏が事件に関わりがあるとして、彼に説明を求めるべきと主張する者もいるようだ。周氏は7日に大連で開催され、出席を予定していた「全国公安庁局長座談会」に出席せず、文章だけが読み上げられたという。現在、習氏が入院している病院には厳重警戒が敷かれ、多くの患者は他の病院に移動させられているという。また新しい患者の受け入れも行っておらず、中央の他の指導者への警備も一段と厳しくなっているという。
 ウィキペディアによれば、周永康(1942年-)氏は第17期政治局常務委員で党内序列は第9位。1966年に北京石油学院を卒業後、石油資源畑を累進し、1998年、朱鎔基内閣で国土資源部長(大臣)に就任し2000年に四川省党委書記に転出。2002年に党中央政治局委員。公安部長で警視総監、武装警察部隊第一政治委員、国務委員など要職を兼任、2007年より、中央政法委員会書記(情報、治安、司法、検察、公安などの部門)。思想・宣伝部門を統括する李長春氏と共に、胡錦濤氏の政敵とされていた。
 李長春(1944年 - )氏も江沢民派である。第16期・第17期中国共産党中央政治局常務委員で党内序列第5位。中央精神文明建設指導委員会主任として思想を主管する。1966年にハルビン工業大学電機学部を卒業し、地方の市長、省長、党書記を歴任し1998年から広東省党委書記に就任し、同省の経済過熱を抑制。江沢民に反対する広東閥の排除に貢献し、朱鎔基の後継として総理に推薦されたが、朱鎔基の反対により総理の座は温家宝に奪われた。2002年に政治局常務委員に就任してからは、党中央精神文明建設指導委員会主任となり、宣伝部門を率いる。中共史観の見直しでは胡錦濤と対立した。反日的な宣伝活動にも深く関わっている。2007年、自民党山崎拓前副総裁、加藤紘一元幹事長との会談で、軍事費急増は、台湾の武力統一のためという理由に挙げた要人として知られている。台湾進攻のための橋頭保となりうるのが尖閣諸島であることもまた事実である。
 いずれにしろ、ここしばらくは中国のニュースから目が離せない。