内外情勢 2012年9月

1.東アジアの動き
 8月のこのブログは意図したわけではないが韓国特集のようになってしまった。民主党政権はあまりにも無警戒すぎた。首相官邸や議長の公邸にお出入り自由の韓国や中国の大使館員が多いと週刊誌に書かれ始めた矢先だった。韓国の様々な日本非難の原因を調べていくと、それらが李承晩時代の反日教育に行きつくのではないかという仮説を持つに至った。そしてそれが在日の人々の歴史と深く結びついていることに気が付いた。事実に基づかないことで言い争うのは馬鹿げている。ところがその後も韓国の言動はドンドン加熱している。オリンピックでの韓国サッカー選手の政治アピールに対して国際的な批判が集まると韓国は旭日旗に対するキャンペーンを始めた。攻撃は最大の防御と言わんばかりである。
 彼らが理不尽な非難をすればするほど、日本における左派の説得力はなくなりつつある。憲法改正の必要性が明確になり、教科書の近隣諸国条項、河野官房長官談話、村山談話などの見直し廃止の意見が大きくなっている。むしろきちんと予算をとって反論すべきは反論しないと不健全であるように感じられる。
 北京駐在の日本大使の公用車が市内で襲われ国旗が奪われた。CGで模式的に再現された犯行の様子は映画でテロリストが車から要人を誘拐するのと同じやり方だった。もはや北京では武装警備兵の付添なしに移動はできないのではないか。それでも犯人は逮捕はされずに罰金処分となるだけらしい。日本政府がまともに抗議もできないので呆れてモノが言えない。それが、警備が強化されつつある北京で起きたことも衝撃だった。指導体制が、習近平李克強へと一新される予定の中国共産党第18回全国代表大会を10月に控えて、「大会防衛」を合言葉に、完全武装の正規軍38軍団が北京を警備し始めたとの報道がなされたばかりだった。
 経済については、発電需要が減り発電用の石炭の在庫が堆積場に積み上がっているという。月餅の生産量は景気を反映し昨年の半分になったと言われている。全国で反日デモが起きていると言われているが、日本企業よりも市や党の事務所がひどく荒らされているという。
 北朝鮮との数年ぶりで外交交渉が北京で始まった。気候の変動が北朝鮮の食糧生産に影響を与えていないはずはない。やはり民主党の間に交渉した方が得だと判断しているのかもしれない。拉致被害者の人々を取り戻すことは全ての国民の願いである。金主席一家の日本人の元料理人との面談ビデオの公開されたことは、北の政権が明らかに変わったとの印象を日本国民に与えたいのだろう。少し前に中国を訪問した北朝鮮の大型代表団が中国に大規模な経済支援を求めたと報じられている。
 起きている現象は様々だが、その背景には世界的な景気の後退と、異常気象による食糧生産の変動と値上がりが大きく影響している。秋から冬にかけて、その影響がもっと明確になるのではないか。
2.新しい日本
 ロンドンオリンピックで最も印象的だったのは、試合に負けて大粒の涙を流し打ちひしがれていた「なでしこジャパン」の選手たちが、表彰式には満面の笑みをたたえながら電車ゴッコをしながらピッチに出てきたことだ。表彰台での屈託のなさと緻密な試合運びのコントラストに新しい日本の姿を感じた。
 石原都知事は8月の半ばに野田首相とひそかに面談し、石垣島の漁民のための避難施設の整備を条件に、集まった寄付金の国への移管を申し出たようだが、一週間たっても何の返事もないことが月末明らかにされた。政府は、中国の反発と強硬な姿勢を招くような措置は取るべきではないという判断しているらしい。しかし、そんな優柔不断な内閣では領土は守れない。8月29日に参議院で首相への問責決議が可決された。国会はこれで空転し事実上閉会となった。民主党衆議院の定数是正が決まってないこと、その周知期間が必要なことを理由に年明けまで政権を延命しようとしている。百害あって一利なし。
 どうやら日本の政治の話題の中心は、自民党民主党の党首選に移った。民主党は、野田首相でほぼ決まりかも知れない。細野という声もあるが、もはや首相に対抗を立てるだけの力が民主党に無いのではないか。引き続き崩壊過程にあるとみる。
 自民党の谷垣総裁は民主党政権を攻めきれなかったので厳しい状況にある。複数の政治家の名前が挙がっている。何れも働き盛りの論客揃いだ。次の総選挙を誰の下でどんな政策とどんな政権構想で戦うのかを良く議論してほしい。注目は、大阪維新の会との距離感である。安倍元首相は大阪維新の会との連携を主張し始めた。政界再編を目指す一つの旗が揚がったと感じられる。
 もう一つ焦点は経済政策だと思う。あらたな雇用を創出するための政策が必要だと思う。ただ新しい経済政策が単なる公共工事の増加という形をとらないために多くの人の合意を形成するのが難しくなっている。通貨政策であったり、土地制度、医療制度、教育制度の改革変更、研究開発予算の投資が、産業の消長と結びついている。気候変動の増大を視野に入れれば、休耕田や里山、豊富な水資源、海洋スペースを使って食料を増産することが世界のお役に立つのではないか。
 大阪維新の会には、与野党の主流派とはなりえない自薦他薦の議員が殺到しているようだ。橋下市長、府知事も国会議員選挙に出ると報じられている。そのあとの後任も決まっているのかもしれない。どの国会議員が新党への編入を認められるかで、この政党の性格と寿命が決まると考えられる。民主党からは逃げ出したい人が多いようだ。編入選考がうまくこなせれば、選挙の準備は自然に整うだろう。
 大項目の政策で個人的に違和感があるのはエネルギー政策だった。政府の戦略会議もそうだが、多くの人たちが原子力のことだけを集中的に勉強をしている。ただ再生エネルギーや石油・天然ガスの現状と将来にまで目が行き届いていない。オイルショックの時の異常さを覚えている人間が少なくなったのかもしれない。エネルギーについてのアジアの需給、世界の需給の将来を考える視点が足りない。再生エネルギー買取法の価格設定は間違いだったと思う。その是正廃止が早ければ早いほど経済全体としての被害は少ない。