内外情勢 2012年7月

1.ジリジリとした暑さの中で
 オリンピックが始まった。サッカーU23の日本男子が優勝候補のスペインに勝った。最大の番狂わせだが実力で得た結果とのことである。メディアは、オリンピック一色になりつつあるが、スポーツ以外にも、幾つかの記録すべき出来事が起きている。
 国会は、一体改革と称して25年前の消費税導入論議の時と全く同じ議論を繰り返している。世界で一番高い国会議員給与をとりながら、出来の悪い大学生のような議論では話にならない。決められない政治が問題だというが、果たしてそうか。むしろ、いま世界で起きていること、現実の世界の大局がみえていないことが最大の問題と思えてならない。小細工をして選挙を先延ばししても、民主党の評判がそれほど回復するわけではないと思う。
 大阪維新の会は、世論調査では既に3大政党の中にくい込んだと言われるが、個別の選挙区で誰が選挙に出馬するかも発表されてはいない。本当に間に合うのかどうかわからない。現実の候補者がでてがっくりさせないためには、自民党民主党以外で旧民主党小沢系以外の政治勢力を統合してまとめ上げられるかどうかにかかっていると考える。
 世間では、与野党ともに現代表が再選確実と言われているが、個人的には選挙用に看板を架け替えるという可能性をまだ捨てきれない。この国会で解散がないとすれば、自民党は厳しい代表選挙をするのではないか。東京へのオリンピックの招致活動には、石原都知事に替って、先頃引退を表明された森総理が行かれているはずだ。石原都知事の体調も心配だ。一度総理にしたかった。彼の去就によって秋からは次の都知事候補の名前が取りざたされることになる。
 しかしその間にも日本の誇る世界に冠たる家電メーカーの株価が急落してている。同時に不可解な事件も起きた。野村ホールディングスの経営者がインサイダー取引の責任を取って辞任するという。おそらくまだオープンになっていないことがあるのだろう。
 ジリジリとした暑さの中で次の展開への起点が準備されている事だけはハッキリしている。
2.異常気象
 今年の梅雨前線の停滞と大分や熊本への集中豪雨による水害はひどかった。1時間に100ミリの豪雨が数時間続くと、川はあふれ、山は崩れた。昨年、日本は東日本大震災の後始末で手いっぱいで1年が過ぎたが、海外では大型ハリケーンやタイや中国南部での大洪水、アフリカ東部の干ばつ、ブラジルの豪雨と土砂崩れがあった。今年も世界的に異常気象が続いているらしい。米国では、国土の64%で干ばつがおきている。農作物への被害が世界的に深刻化しているのではないか。
 北京では集中豪雨で77人が亡くなったと言われている。北京市の南部にある房山区では、460ミリの雨が降ったという。元来は、雨が降らない地域であり、道路に充分な排水設備も無いというが、車が幾つも流されるといった状況から推測すれば、九州であった豪雨と同じようだ。だとすると、排水設備があったところで致し方ない。ただ被害総額は16億ドルに上ったという。シベリヤでも熱波によって森林火災が拡がり、川が干上がり、作物はほぼ枯れたという。シベリアの気象局によれば26度から34度の熱波は9月まで続くと予測されている。降水も9月まではほとんど期待できない。森林火事は1930年以来、最悪のペースで発生しているという。
 天災は皇帝が「天命」を失った兆しと解釈されることはないものの、中国の胡錦涛国家主席は団結を呼びかけ、25日には市の共産党書記に昇格が決まっていた北京市長、副市長の突然の辞任が発表された。災害で市責任者の辞任まで発展するのは極めて異例だという。
3.空気による支配
 暑さの中で政治に対する国民の不満が高まっていると思う。その原因は、よく言われるように、政府が適切な政策決定をできないからではない。なぜそう決めたのかに対して全く論理的な説明ができていないからだ。良く総理の判断ですとか、閣議決定ですというが、そんな物の価値はとうになくなっていることに政治家が気が付いていない。政府ゴッコをいつまでやっているのだろう。
 関西電力の首脳陣が次の原子力発電所の稼働に触れると、経済産業大臣や取り巻きの役人が「空気の読めない人だ」と不快感をあらわにしたようだ。しかし個人的には空気でエネルギー政策を決められたら困ると考える。空気で原子力発電所の稼働を決めたのだろうか。いつからこうした役人と政治家が出てきたのだろうか。彼らにどんな大局があるのだろうか。
 再生可能エネルギーの固定価格買取制度が高すぎると、経済白書が批判しているという。誰が考えてもそうなるだろう。東電の値上げ8%台で一般家庭で月間360円だという。でも7月からは、再生可能エネルギーで一軒当たり120-130円程度の負担を強いられている。値上げの比率にすれは2-3%となるが、太陽光発電などは、米国でもメーカーがつぶれ、ドイツでもメーカーがつぶれている。普及が進むことによって量産されて、安価になり、発電コストも下がるというが、大幅な技術革新があれば別だがそんなシナリオはない。現在の買取価格では太陽光発電は利権そのものだ。
 再生エネルギーで可能性があるのは、地熱発電だけだと考える。日本の電力は世界に比べて現在でも2倍となっているので、あるべき電力の姿から言えば、このコストを半減しなければ産業が続かない。政府は再生エネルギー30%と決めたというが、それに至るまでの投資費用と発電コストを怖くて明らかにできないだろう。具体的計画の無いマニフェストそのものであり、空気に支配された決定だったからだ。被害が大きくなる前に直ちに固定価格を見直すべきだろう。
 未だに京都議定書を云々するメディアや人たちがいるが、温暖化に関する考え方は別としても、京都議定書は事実上失敗だったと考えている人が多いはずだ。その証拠にあんなに熱心だった民主党政権もその議定書は延長しないと表明している。そして排出権取引は胡散霧消した。ようやく騙されたことに気が付いたようだ。その事実を明確にすると、メディアも政治家も役人も責任をとらなければいけないので、隠れて方向転換をした。その総括がなされないうちに、福島原子力災害が起きた。温暖化しているのか氷河期の入り口にあるのかはっきりしないが、異常気象が増えてきたこと事実である。そして日本が馬鹿げた地球温暖化の議論に巻き込まれている間に、世界では資源獲得競争がし烈になり、公害がまき散らされ、シェールガスという新たな資源が見つけられた。円高、デフレ、貿易赤字への対応策のない政治家の話は聞いても仕方がない。
4.今後の東アジア情勢
 北朝鮮は、どうやら先軍政治から経済開放に重点を置いた親中路線に転換を図りつつある。明確にはされてはないが、おそらく今年は中国からの援助がなければやっていけない状況に陥っていたのだと推察される。総参謀長の病気解任報道の前後で、銃撃戦があったとされているが、今週は少し前まで対外秘密折衝窓口だったミスターXが既に銃殺されていると報じられた。
 7月になって、金正恩第一書記が夫人を同行して各地を訪問する映像が公開されるようになった。おそらく中国の了承のもと、米国との関係改善を図りたいとの意図なのだろうと推察される。どう考えても米国好みの映像であり、韓国民を安心させる効果を期待している。米国を懐柔し日本にお金を出させるというのが彼らの作戦だろう。
 このままいけば、12月には韓国で盧武鉉政権のような従北政権が誕生するのではないか。そうなれば、朝鮮半島は中国の影響下に置かれる。そして韓国の巡航ミサイルは日本を狙うミサイルとなるだろう。韓国は公言してないが、済州島の海軍基地は日本に向けられたものであり、対馬の韓国領化を主張しているグループもいるので、油断がならない。そしていずれは反米基地闘争を韓国内で始めるのだろう。
 それと並行して、沖縄における米国のプレゼンスを低めておきたいだろう。そのために在米中国人と、在米韓国人を使ってアメリカで反日運動を再び加速するものと思われる。現在の原発反対やオスプレイ配備反対の運動に対する中国、韓国の期待はかなり大きいと感じられる。それが自国の利益になると考えているからだろう。
米軍基地を抱える日本の14都道県による渉外関係主要都道県知事連絡協議会(渉外知事会)は27日、都内で定期総会を開き、米軍垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ岩国基地への陸揚げについて「安全性より配備を優先した感がぬぐえず、大変残念だ」と批判し、安全確認されるまで飛行を行わないよう日米両政府に要請することを決めたと報じられている。その数日前に都道府県で初めての北京に事務所を開設した沖縄県の仲井間知事は、北京市内でレセプションを開いていた。沖縄側の訪中団と現地の日中政府関係者が集い、観光や文化、ビジネスの相互拠点となる事務所開設を盛大に祝ったという。県関係の海外事務所としては上海、香港、台湾と韓国ソウルに次いで5カ所目だという。
 良く民主党の迷走は鳩山総理の「最低でも県外」といった選挙公約にあるというが、その前年の2008年に出された沖縄ビジョンにのとった発言であることはハッキリしている。現在の民主党の政権幹部はこれを今どう考えているのか明確にできないようだ。個人的には空気しか読めない政治家がもっとも危ない人だと考える。