節句働き 不退転の決意だけでは迷惑だ

 民主党の動きを見ていて、「節句働き」という言葉が頭に思い浮かんだ。社会保障と税の一体改革で消費税増税に理解を求める説明会が全国で始まったことが報じられているが、それ以外にも様々な法案が多く出されているようだ。 少し人気が取れそうだと思える法案が、次の選挙の言い訳をするためにいろいろ出されている。復旧復興はどこかに消え、外交安全保障、エネルギー資源のことは論じられず、経済成長のシナリオ、農家の経営規模の拡大はどこかに行ってしまった。無位無官の自分が全体像を論じる義理はないが、国会は総選挙前の「節句働き」の様相を呈している。(だからと言って法案が成立するとは思わない。)
 大手のマスコミは、皆、政府・財務省折伏されたようだ。首相が政府専用機で外遊するのは、番記者の接待工作だというのが常識だった。昨年秋から暮れにかけてが首相の外遊が続いた。内閣改造で、野田政権が持ち上げられたのはそのせいではないかと勝手に思っている。増税に反対するメディアに、国税庁の査察が入るのも常識だった。日本で報じられるIMFは日本の財務省の別動隊でIMF本流とは別だ。
 民主党が意見を変えるのは構わない。マニフェスト通りやられたら大変だからだ。ただ理由はきちんと説明し国民を説得しなければならない。首相も、財務相も、副首相も、本当に国民を説得する気があるのか、能力の問題なのか、疑問に思っている。不退転の決意だけでは迷惑だ。自分は税率を上げるならば消費税しかないという考え方だが、自民党は消費税増税案に賛成するにせよ今の方針でいくにせよ、経済政策全体の中での位置づけと、自民党の考え方を独自に示めさないと自民党も大変なことになると心配している。それは自民党のみならず日本の更なる漂流を意味する。
1.橋下徹市長はアントレプレナー 新しい組織作りはイノベーション
 朝まで生テレビの終わりの部分を50分ほど見ることができた。大阪の橋下徹市長が、「独裁」だとか「劇場型」だとか批判を浴びていたが、個人的にはその批判は当たらないと思う。発言に過激なところはあっても、結論は妥当なところに落ち着いているからだ。評論家の議論は評論用だったが、橋下市長の議論は、意思決定者の議論だった。
 彼は地方制度の改革を実現するために、国会議員を巻き込む必要があると言っているだけだが、それならば、核武装についてどう思うか、憲法第9条はどうなんだと質問されても答えようがない。思っていることがあっても答えるべきでない。彼は、少なくとも、もうしばらくの間は、地方制度を改善しようとしている政治家であって、首相公選に出ている政治家ではないからだ。評論家は橋本氏のグループが、自分たちの仲間を選挙で結果的に落選させることを恐れているにすぎない。橋下氏がハッキリさせようとしているのは、国と都道府県と基礎的自治体の役割分担を明確化し、地方のことは地方で決めれる仕組みを作り上げて、それによって大阪と関西を立て直すのが自分の仕事だと割り切っている。
 大阪市長橋下徹氏はシュンペーターが示したイノベーションの5類型のうちの一つ、「新しい組織の実現」をはかるアントレプレナーにあたると思う。だから経済は次の段階に進む。日本の地方自治制度はその成功の故に中央を含めて巨大化し活力を失っていた。前の自民党政権で公務員改革を担当していたグループも彼の陣営に集まりだした。
 次の国政選挙において関西の民主党は閣僚クラスも含めて総崩れになる可能性がある。ただ選挙が今年半ばとすると、その影響は関西にとどまると考える。しかしここにきて、石原都知事を中心とする保守新党の形成が語られるようになった。名古屋のグル―プもこれに同調しそうなので、3大都市圏のグループにみんなの党が加わって、国政の第3極となる可能性もある。民主党小沢グループもこれに同調したい人は多いようだが、彼らをそのまま受け入れるほど橋下グループが、人集めに困るとは思えない。
2.ミャンマータン・シュエ氏のこと
 最近読んだ日本財団の笹川会長のブログが興味深いかった。ミャンマーの首都ネピドーは、対英の植民地戦争に立ち上がった陸軍発祥の地に近く、海からも遠く山に囲まれ、安全保障上の戦略的見地から決定されたという。仏教国ミャンマーでは国家指導者も厳しい修行に耐えた僧侶に助言を聞くことは珍しくないという。国家元首だったタン・シュエ氏も、新首都ネピドーの必要性を助言者の僧侶に詳しく説明して同意を得たという。笹川会長が、2003年4月に、森喜朗元首相とミャンマーを訪ねた時の様子が記されていた。
 タン・シュエ氏は、予定外の夕食会まで開き3時間半に亘る長時間の会談となったようだ。その折、タン・シュエは問わず語りに「私自身、軍事政権が良いとは思ってもいない。ただ、辺境地域には多くの少数民族武装勢力が活動しており、安定するまで軍事政権を継続せざるを得ない。さもないとミャンマーバルカン半島になる」と発言したという。
 それにしてもタン・シュエ国家元首の引退は見事であったと笹川氏は評価する。西側の厳しい経済制裁と批判を耐え忍び、民主化への準備を整え、憲法改正、国政選挙、大胆な民主化政策への礎を築き、自ら軍事政権を終焉させたタン・シュエ氏のように、見事な引退をした独裁者は稀だからだ。功罪半ばするものの、評価したいとのことである。
 ミャンマーの現状について初めて腑に落ちる文章を読んだ。ミャンマーへの見方は、アウンサンスーチー女史が選挙で勝ったにもかかわらず自宅軟禁されたというところから歴史をみるか、ビルマが英国植民地にされたところから見るかによって全く違う理解となる。ミャンマーに対するイギリス統治の歴史を知れば、欧米と違う評価となってもおかしくはない。むしろ米国に追随してミャンマーを中国側に追いやった日本外交の安直さと頼りなさをを反省したいと考える。
 福島の原発事故の後、チェルノブイリの経験がどうのこうのという評論家の発言があったが、チェルノブイリのことは笹川さんに聞きに行くしかないのではないかとずっと思っていた。チェルノブイリ事故の後、ソ連で最も尊敬されていた人が笹川さんであり、日本財団だと知る人は少なく、この国は少しおかしいのではと勝手に思っていた。だからチェルノブイリのデータも日本が一番持っているはずである。
 森元首相の活動について、もっと評価すべきと思えることが本当に多い。ミャンマーにも、いらしてたのかと思った。インドやアフリカの記事を読んでいると森さんの記事が出てくる。かつて「日本は神国なり」と神皇正統記の冒頭をスピーチで引用しただけで批判された。何か悪意のあるマスコミに囲まれていたようである。 
3.非正統的NHKと皇室典範のこと
 NHKの大河ドラマ平清盛』の視聴率が良くないという。皇室のことを王と呼称する非正統的な歴史観に基づいて作られている。ところがそこはチェックされないで、NHK上層部は視聴率だけを気にしているようだ。一本1億円以上の予算を投入する大河ドラマが、一話の制作費2000万円の民放ドラマに負ければ、仕分けの対象になるからだという。その対策はお色気路線だという。過激で激しいシーンを入れて視聴率をとる方針だという。どうして国民の金を集めてポルノを作るのか。 その料簡が根本から間違っている。
 女性宮家の創設問題で皇室典範の改正が問題となっている。古事記神皇正統記も読んだことがない人達が皇室典範を議論しているという。現在の皇室典範は占領下で作られた。旧皇室典範は、明治のグランドデザインを起案した井上毅が作った天皇家の家憲であり、法律ではなかった。だから本来は宮様たちの意向も重視されるべき特別な法律であると考えられる。
 井上毅熊本藩の家老配下の武士の子息であり、小さなときから学問好きで、熊本藩家老である米田家の家塾必由堂に学び、選ばれて藩校の時習館の寄宿生となった。明治3年に開成学校で学んで司法省に仕官し、フランスで法律を学んだ人だ。学んだだけでなくて、明治政府の法律顧問を選んだ人であり、伊藤博文の下で明治憲法を起案した人でもある。儒学、洋学、法律学を学んだあと、国家制度を起案するにあたって、彼は国史国学を徹底的に学んだことが知られている。最高裁判所の裁判官であっても、大学の教授であっても、こと日本の伝統とありかたについては、井上毅の考え方を超えることは並大抵ではない。井上毅の書いたものを徹底的に学ぶことから始めるべきかもしれない。