南京陥落から74年目の東シナ海と日本海

 大阪のダブル選挙は、20時に投票が締め切られると、すぐに大阪維新の会の両候補の当確が出た。出口調査で明確な差があったのだろう。選挙終盤のメディアの橋下氏の生い立ちなどに対する個人攻撃は本当にひどかった。都知事の石原さんもこの攻撃に腹を立てて大阪に応援に行ったという。ちょっと救われた気になった。
 報道によれば、民主党民主党内の外国人党員の党内投票権制度を廃止したくないようだ。日常活動としてポスター貼りやその他の活動を手伝ってもらっているというのが理由だという。労働力の提供も金銭の提供も同じことだと理解できない人たちが真面な法律や条例を作れるはずもない。その一事を以て転職をお勧めする。
 南京が陥落した74年目の12月13日を選んで野田首相が中国を訪問するという。何事もなければ良いと素直に思う。中国は、2003年末を最後に交渉が中断している国連海洋法条約に基づく東シナ海の日中境界確定に関する協議の再開を提案しているようだ。いつもの手だと思う。対中強硬派と思われていた安倍首相が就任早々の2006年10月に訪中すると、日中中間線上の石油とガス田の共同開発を模索することになった。しかし結局、北京オリンピックが終わり関係悪化を抑える必要がなくなると交渉が中断するのである。今回も、中国側は日本がサインを見逃さないように、野田政権が親中政権なのかどうか態度を見極めたいと新聞に流していた。東アジアサミットでは、南シナ海に関する中国の意見が通らなかったために、何となく孤立感を感じさせられているはずである。あけすけな言い方をすれば、アジアのルールは、自分で意見が決められない日本を味方に付けたグループが主導権を握ることがはっきりした。これは野田外交の自覚せざる成果である。というよりは、米国外交の成果であり、日本の経済力の大きさなのだろう。前後して、米国は、南シナ海とインド洋の安全保障について中国の空母が出てきたときに備えて対策をとった。これによりアジアの国々は少し安心したと思われる。
 しかし東シナ海については、日本が相変わらずのため、まだ手が打てていない。中国にしてみれば、これ以上の手を打たれたくない。しかしそれは日本が単独で決められることである。沖縄の人には怒られるかもしれないが、それは例えば、辺野古への海兵隊基地の移転を決めて、日米の安全保障関係を安定させることであったり、下地島の空港に自衛隊の戦闘機部隊を配置することである。さらに言えば、尖閣諸島に守備隊を置くことである。そうなれば、東シナ海の安全保障はぐっと強化されることとなる。
 日本の政府にも少し腹を立てている骨のある人がいると思われる出来事があった。つい先日新聞の一面に、「サイバー攻撃を日本の大企業が受けて、その攻撃基地が中国であるところまではわかったので、中国政府に犯人逮捕の協力を求めたが、2か月たっても返事がない」と報道されたのである。
 オーストラリアの首相が、米軍に自国の基地を使ってもらうと発表した時の、中国メディアによる中国の軍事専門家のコメントには驚いた。「中国の安全保障の障碍になる」というのである。日本が日本国内に新たな基地をおいたならばもっと脅されるだろう。中国は、今年になってからも、台湾進攻に当たっては、先ず先に沖縄の基地や飛行場を爆撃して使えないようにするとの情報を流し、日本の反応をうかがっていた。米軍が存在する沖縄にそんなことをするはずもなく、あり得ないことだ。攻撃のことだけ考えれば、そうかもしれないが、それにどう反応するのか試験されているような気になる。いずれにしても反対運動へのテコ入れが行われ、観光カードを使って沖縄を動かそうとするかもしれない。それは内政干渉に他ならない。
 沖縄の安全保障が強化されれば、台湾は、少なくとも東側からの脅威は今迄ほど気にする必要がなくなるはずだ。日本では台湾のために、何かしたいという日本人が随分増えている。日本からの観光客も増えているはずだ。飛行機の乗入れも便利になったようだ。来年1月には台湾の総統選挙がある。東京の中国大使館は、その選挙を中国に有利になるよう動けと日本に盛んに運動していると報じられている。そんな内政干渉をできるわけがない。台湾の将来は台湾の人たちが決める。
 中国からすれば、それでは来年にも配備される空母の意味が減殺されるし、来年以降の適当なタイミングで、数千の漁船とともに空母を出すことによって、島を占拠することもできなくなる。だから時間を稼ぎたいというのが中国の意図ではないだろうか。先日、飛行機の着艦に使うワイヤーをロシアが売ってくれないため調達ができないというニュースが流れた。何故そんな安全保障にかかわるニュースが公然と流れるのか、別の事実を隠そうとしているのかもしれない。普通に考えれば、1年後に空母ワリャーグ6万トンは実戦配備につき尖閣諸島を訪問するかもしれない。安全保障は想定外のことを考えて初めて安全保障になるらしいが、これは数年前から専門家たちが想定していることである。
 自衛隊島嶼防衛のための奪還訓練と演習を熱心にやっているが、そうなる前に尖閣諸島に守備隊を置いておく方が、軍事的にも、政治家の決断としても、はるかに易しいと思う。その演習の目的にこだわるのは、もしかしたら日本海にある竹島奪還のためかもしれない。このまま竹島の軍事基地化を見逃せば、日本の自衛隊の戦闘機は紙飛行機と化し、陸上自衛隊は鉛の兵隊となってしまうため、中国は安心して尖閣諸島に来ることになる。領土の防衛は、どう考えても自衛のための戦いであり、日本が自衛隊を保持する本来の理由である。
 最近の韓国は、日本を試験しているのかもしれないと思われる事象が増えている。日本が5兆円の通貨スワップを提供したら、中国も同様の通貨スワップを提供し、通貨の下落が止まったばかりである。恩を着せる気などさらさらないが、ずいぶん高価な試験料金だと思う。日本の政府は、武力を使う前に、韓国に対して不快感を示すために、対馬への立ち入りを禁じたり、「ビザなし入国」の期間を短縮したり、労働ビザのない不法労働者の強制送還を検討すべきだと思う。
 つい先日、おおらかで明るい日本の元首相が、韓国での国際会議で、K-POPや韓流ドラマに触れたことが話題となったが、それだからといって彼が現在の韓国の日本に対する態度、在り様に満足しているわけではないと思う。彼の表現は、普通の人よりずっと洗練されているので、注意深く理解する必要があるからである。そしてそれは、多くの日本人の考えていることとあまり違いはないと思われる。