政治短観(2011年10月)  

 野田内閣が成立して50日がたった。「低姿勢と増税と米国追従」以外に何をやりいのかよくわからない。支持率は危険水準にはまだ落ちていないものの、この2週間、厳しい評価をする識者が増えている。
 その理由は、言葉は丁寧でも「政策に背骨と覚悟がない」からだと思う。円高対策は対策になっておらず、デフレは放置されている。970兆円の国の借金は強調されるが、資産を差し引けば350兆円だということは説明されない。復旧・復興のための増税と消費税増税は実質的には切り分けられていない。
年金の支給年齢繰上げには賛成だが、その前に現在支給を受けている人の分は別にして、年金を積立型に変更したらどうなのかと言いたくなる。デフレが続くなら、運用に失敗ばかりする役人OBに運用を任せるより、今迄の積み立て分を現金で払い戻して各人が自分の裁量で年金を運用するファンドを選ぶのも良いと思う。
TPP対策で農業の経営規模の拡大を図ると言っても、少し批判されると自分が決断した埼玉の公務員宿舎の建設を凍結するような現政権が、農地法、農協法の改正といった土地問題に手を付ける準備と覚悟があるとは思えない。再び、現在の戸別所得補償政策と同様に換骨奪胎される可能性が高いと思われる。個人的にはTPPとは無関係に大幅な政策転換が必要だと考えるが、政府が統一見解としてTPPについて説明を行うことがないまま、農協に1100万人以上の反対署名を集められてしまった。もはや、まともな議論ができる環境ではないかも知れない。おそらく交渉への「参加表明」だけだとしてハワイに行けば良いという考えなのだろう。安易だと言わざるを得ない。
欧州の信用不安で、欧州各国が追加拠出する欧州基金は10兆円となることが決まったが、韓国には言うべきことを何も言わずに、日本単独でスワップと称して5兆円の資金援助をすることとなった。それがどう日本の国益と関係するのかきちんと説明する必要がある。普天間基地の移転問題は、どう打開するのかの方針がないのではないか。
 どの問題も、覚悟を決めて国民の説得に全力をあげてこそ民主党の新たな活路が開けるものと考える。同時に何らかの決断の有無にかかわらず、復旧・復興のための第3次補正予算と選挙の定数是正案が決まれば、総選挙を促す動きは高まるものと考える。2013年7月に衆参同日選挙をやりたくない党があるならば、景気の先行きと次年度の予算関連法案の成立をにらんだ来年3月4月が一つの政局の焦点となると考える。