時代の終わり

 10日に菅首相がようやく自らの辞任を口にし、月内に辞める可能性が出てきた。訪米を希望しても外交日程が組めず、財務大臣の辞任が日程に上り、とうとう進退窮まった。2つの外国人献金問題への野党の追求も存外きいていると感じる。
 日本の政治が空白を続ける中で、世界では一つの時代が終わろうとしている。米国は国庫債務負担上限問題は何とかクリアしたがその傷は大きく、連邦準備制度は2013年までの金融緩和を宣言した。米国の株式市場は安定せず乱高下を繰り返している。金融を緩和すればドルはさらに下がる。韓国では外国人投資家の株の売り越しが続いている。ヨーロッパではギリシアをはじめとする信用不安が解消されず、ユーロの持つ本質的な矛盾と分裂の可能性が論じられている。個人的にはノルウェーの銃乱射事件や英国で多発している暴動の映像には衝撃を受けた。また中国では高速鉄道事故ばかりが取り上げられていたが、ここ数か月、労働賃金の上昇とともに、インフレ率の上昇、少数民族との軋轢が噴出している。バブルの崩壊を避けようとすれば、物価の上昇で庶民の生活は苦しくなる。中国の工場が安い労働コストを求めて海外移転を始めている。先日、大連であった1万人の大規模デモの原因となった化学工場の閉鎖移転問題は驚くべきことに即日認められた。明らかに今までの政府当局の対応とは異なっている。
 他の主要通貨の不人気もあって円高が急速に進み1ドル76円台となった。国内の増税派の御用学者やマスコミが説く「借金漬け、ハイパーインフレーションの危険性」が事実ならば、もっと円安にならなくてはいけない。そんな心配よりも目の前のデフレ克服と経済活性化があらゆる政策に優先しなければ、財政赤字も解消されない。政治の空白が続いていても製造業としての強さと隠れた基軸通貨としての円の存在感は否定できなくなった。しばらくは1ドル70円を模索する動きが続くとみる。そして企業や個人は中期的に60円、50円となった場合の対応を考えておかなければならない。古典的な為替相場の決定原理を考えれば、経常収支の余剰が続き、物価上昇率に差があれば円高は進む。通貨供給量を主体に考えれば、日本のお札を刷る輪転機のスピードが遅すぎるのかも知れない。