国軍創設に関する議論 新たな日本の創造

 東日本大震災から3ヶ月がたった。いまだ瓦礫の処理は終わらず、福島の原子力発電所周辺の遺体は回収されず、家畜は見殺しとなり、国土の汚染除去に対する抜本的な措置はとられていない。復興は大事な課題だが、それだけが日本の政治であるはずもない。

 普天間基地の移転問題はこう着したまま1年が過ぎた。個人的には、この数か月で、国民における米軍と自衛隊という軍隊の意味の認識が大きく変わったと考える。防衛大臣は、宮古島近くの下地島に空港設備を活かした日米共同の防災復興拠点を作りたいとの考えを明らかにした。また山口県の岩国に拠点が移される米国空母の艦載機の発着訓練場を馬毛島としたいと鹿児島県との調整が始まったようだ。今年の秋には遅れていた次期主力戦闘機の決定がなされる。航空自衛隊は今まで3つの機種の戦闘機を運用するという考え方でやってきた。そのうちF-4戦闘機の老朽更新が待ったなしだという。世界最強とされるF-22は米国が売ってくれないため、F-35 ライトニングⅡ、F-18E/F スーパーホーネット、ユーロファイター・タイフーンの3つが候補となっている。ここにきてF-35の開発の遅れが報じられており、時間的な観点と国内生産基盤の育成という観点から、次期戦闘機F-Xには、制空能力に優れライセンス生産に積極的な英国のタイフーンを選び、F-35は、結局、次期次期主力戦闘機F-XX(F-15の後継)候補にまわるのではないかとみる向きもある。F-18スーパーホーネットは、空母の艦載機として知られている機種である。

 機種の選定については専門家の判断を重視すべきだが、国民の一人として知りたいのは、それで大丈夫かという心配である。中国、ロシアはすでに第四世代の戦闘機を数多くそろえ、第五世代機の投入もスケジュール化されている。アジアの中で何も考えずに一国だけ軍縮を続けるのはバランス感覚を失している。またかつてより国連軍として海外に派遣されることがずっと増えた。現在、尖閣諸島付近の海域は海上保安庁の巡視船が常時警戒しているが、数多くの漁船が、空母とともにやってきたら、今のままでは対応できないだろう。離島奪還作戦にゴーサインを出すことのできる資質と器量を持った最高指揮官(首相)を国民は選んでおかなければならないし、思いつきでは揃えられない実戦を意識した自衛隊の装備拡充が必要ではないか。それが2010年から2011年にかけて学んだ認識だ。政治は結果責任であり、災害においても安全保障においても「想定外」という言葉は責任逃れ以外の何物でもない。「想定外」を考えながら、どのように国を守るか、どのような国家を創造するのかを考えるのが政治であり、それができない人たちには退場してもらうしかない。

 平和を維持するためには、きちんとした抑止力が大事だろう。日本は、現在も事実として、ロシア、中国の核兵器に狙われ、北朝鮮の核の脅威にさらされている。他国にいわれなき中傷をなされ、普通の国民が他国に誘拐され、海外に仕事で出ている国民が突然不当逮捕され脅迫されても何もできず、固有の領土である離島を占領されても、自国の艦船に体当たりされても、文句も言えない国で良いわけがない。同盟国といえども、自らを守ろうとしない、共に戦おうとしない国を助けてはくれないことを学んだ2年間だった。自分には、誇りある日本を創造するためには、自衛隊を、きちんとした国軍へと発展させていくことが必要だと思えてならない。

 航空幕僚長だった田母神俊雄閣下は、これから20年かけて、今の自衛隊の戦力を1.5倍にすれば中国にも対応できると主張されている。(「田母神国軍」2010年10月産経新聞出版)特に現在の自衛隊に不足しかけている攻撃力と情報集能力を強化すべきと主張されている。攻撃力が最善の抑止力になるという考え方なのだろう。二度と核攻撃を受けないためにも核武装も必要だという。世界第6位の海洋大国として10万トン規模の原子力空母が3隻必要だという。18千トンの戦略原潜を4隻、護衛用に8千トンの攻撃型原潜を4隻配備し、輸送機のC-2やP-1をベースにした戦略爆撃機を10機程度を硫黄島におく。これに陸自の持つ地対地ミサイルを強化し、海自には新たに巡航ミサイル搭載のイージス艦を3隻配備する。このための要員を2万人増やしたうえで、陸上自衛隊の部隊の半数を離島奪還を意識した海兵隊のような部隊に再編成すべきとしている。また様々な機械による情報収集と人的なインテリジェンスによる情報収集力を強化すべきとしている。そして独自の軍事技術の開発が必要としている。また、そうした技術開発は機密裏に行われべきとしている。年々の維持費は装備取得費の1/20でカウントするのが普通のやり方らしい。そうしたものを合算すると専門家チームの試算では年々1.6兆円程度の費用増額が必要となるらしい。これに情報機関の費用や独自の技術開発の費用をかなり加算してもGDP500兆円の0.5%程度に相当する額である。現在の防衛費をGDP比率で1.5%とみて、これに0.5%を加えて2%程度の防衛支出は世界的にはそう高い軍事費比率ではない。こうした見解に対する徹底した議論が、なぜ国会で行われないのか不思議でならない。日本国憲法の想定していない事態に対する議論は政治の大きな役割であり、官僚だけではできない議論の一つである。