春の嵐と裸の王様    

 前原外相が外国人からの政治献金を禁止している政治資金規正法違反のため辞任した。これで前原氏が新たな内閣を組織して総選挙を戦うというシナリオがなくなった。民主党はお金を払えば代表選挙に外国人が投票できる仕組みをとっており、彼らの支援を受けるのが常態化していた。ことは前原氏個人の問題では済むとは思えない。菅首相の側近議員が、日本は竹島の領有権主張を辞めるべきだとの韓国国会議員との共同宣言に軽い気持ちで署名し、日本に帰って全ての役職を辞めざるを得なくなった。年初以来、外相、官房長官とも竹島は日本の領土だと主張しなかったことの延長上にこの事件がある。厚生労働省では年金未納問題の独断的救済措置の不適切さが混乱を招き、大臣、政務官が給与全額を国庫に返納したという。それで済むはずもない。
 中国は、日本の外相が不在の際のドタバタを機に、日中境界線にある海底油田の生産開始を公式に認めたばかりか、中国の沿岸警備隊のヘリコプターが日本の護衛艦に再び異常接近する事件が起こしている。挙句の果ては中国政府は尖閣諸島事件が2度と起こらないように注意しろと言い出した。これに対して日本政府は音沙汰もなく、抗議の暇もないようだ。中国内部に目を向ければ、ジャスミン革命の飛び火を恐れてチベット自治区には観光客の立ち入りが禁止され、新疆ウィグル自治区も厳戒態勢にある。北京などの大都市では、デモに参加しようとする人々の考えを取材しようとした西側ジャーナリストへの取材制限、拘束、暴力行為が頻発している。中国は自国内部の矛盾が大きくなればなるほど、内部の圧力を外に向けたい誘惑が高まり、外に対して声が大きくなる。博文公ゆかりの新外相の真価が問われるが、大きな期待はするまい。
 菅内閣がこれから3か月の間に、普天間の問題を解決し、消費税を引き上げを決め、社会保障を建て直し、TPPに参加して農業を構造改革し、サービス分野を全て開放し、国会の議院定数を削減し、歳費を大幅に削減すると言っている。おそらく首相以外の誰も本気だとはとても思えない。どれをとっても、予算関連法案さえ通せない内閣が抱えられる問題ではなく、6月になれば全てが解決する話でもない。
 現実的な判断や処理ができない内閣では、災害がおきても、国際紛争が起きても的確な対処はできそうもない。北アフリカの政情不安でエネルギー価格が高騰し、天候不順もあって穀物価格が高騰し始めている。もうすぐ選挙のシーズンに突入する。裸の王様が北国の桜が咲くまで続くとは、とても思えない。