今後の政治経済政策論の焦点(試論)

 菅首相民主党の代表選で再選された。国会議員票はほぼ半分に割れた。ポイントでは大差があるものの地方議員、党員票の実数では6対4だったので、厳しい政治運営を迫られている。「厳しい時こそ知恵と力を出せ」というのが日本のやり方であり、それには与党がまず補正予算から歩み寄らなければならない。
 尖閣諸島で領海侵犯し、なおかつ日本の巡視船に体当たりしてきた中国漁船の乗組員は中国政府の依頼により、逮捕された船長を除き中国に帰した。これはわが国が中国との平和と友好を願った寛大な措置だ。隣国の経済水域でも中国漁船団の行動は目に余ることが報じられている。中国在留邦人の方々にはお気の毒だが、反日運動の高まりも懸念されている。残念なことに、報道が規制されている中国で一般の人たちに事実の正しい説明や主張を直接伝える術をほとんどもっていない。ただ眼をアジア全体に広げれば、フィリピン、ベトナムをはじめ、東南アジアやインドなどの国々が今回の事態の推移をじっと見ている。この夏米国が南シナ海の安全保障は米国の国益と表明してくれたが、それがなければアジアは中国の支配地域となっていただろう。この秋、自衛隊は大規模な離島奪還訓練を行う計画だが、奪還訓練ではなく問題が起こる前に事前の配備を行うべきと考える。
 政府・日銀はようやく為替相場に介入した。いったんは1ドル85円まで戻した。しかし今回の為替相場の本当の問題は、人民元が変動相場制に対応した国際通貨となっていないところにある。変動為替相場制の国際金融システムにおいて、経済大国の中で世界第二位になった中国の通貨だけが完全に交換できず、人民銀行によって管理されているのは異常だ。現在の元の実力から言えば1ドル5元(1元17円)から1ドル4.5元になっても驚きはしない。1ドル6.75元(1元12.6円)に調整したといわれても、まだ大幅なギャップがあり、世界に失業と過剰消費を輸出しているとみる人もいる。マージャンの点数計算器の特許を持つ菅首相は、中国に「1人勝ちマージャンは続かない」と忠告すべきと思われる。中国の富裕層が日本のマンション土地を買っているが、これは日本の1980年代後半のバブル期に米国不動産投資が盛んだった頃と似ている。中国のビル、マンションの空室率や、過大な設備投資を考えると、為替が調整されれば一気に不景気になる。しかしその苦痛に耐えて合理化を行い、国民を訓練し、公害問題を解消し、新しい技術開発を行なってきたのが日本の歴史であり、中国にそれができないとは思えない。今回、日本は、急激な円高を調整のために相場に介入したが、これからも必要な都度的確に介入する。それは水準の意図的な変更するのではなくて、安定的に推移させるための方策である。これに日本が固執すべきではない。あくまで緊急避難である。
 普通に考えれば、日本円が上がるということは、政策宜しきを得れば、日本の土地と株の値段をあげ資産デフレを解消することができるのだと考えられ、ありがたいことだと考える。
 日本の経済成長力に再点火するため、次の3つの政策の実現に注力したい。
 第一はコンパクト・シティの創造による資産デフレの解消
 政策前提として、日本の資産を安売りすることなく、資産デフレを止め、企業ならびに個人の手元のキャッシュを増やすことが必要であること。日本の都市全体を、災害に強く、エネルギー消費を少なく、年配者にも優しい町に変えてかなければいけないこと。特に地方の中心部においてシャッター通りと、駐車場となった空き地、さらには、土地資産はあるものの現金資産が不足している高齢者が多く、介護施設が大幅に不足していること。総じて年齢構成の変化に対応して大胆な街づくりの変革が求めらていること。これを解決するために、固定資産税評価額と連動した土地買取制度の拡充とそれをベースにした通貨の増発をする。そしてその資金をコンパクト・シティの創造と新たな産業創造に誘導する。
 第二は、航空宇宙、医療、ロボット産業の創造 
 円高はものづくりの基盤を直撃する。その痛みに耐え新たな発展の中核となる、付加価値が高く、すそ野の広い産業を育成する。そのための方策の一つとして、軍事技術と民間技術の差が無くなっていることに鑑みて武器輸出3原則を廃止し、諸外国と共同研究を推進できる普通の国となる。そして基礎研究を担い、ベンチャーの種を作り育てるために高等研究機関と高等教育に重点投資する。
 第三は全国を348に分けた「カウンティ・オフィスの設置」による大胆な行政改革の基盤作り(現在、二次救急圏は全国348に分けられている) 
 基本的に住民の身の回りのことは全てこのカウンティ・オフィスで計画される。その結果、空港、港、大きな道路、伝染病対策などを考えるといった機能だけが県に残る。国・県・市町村の身の回りのことに対する部門は一つにまとめられ、その地域の開発計画をはじめとする各種の計画を策定する。最終的には、身の回りのことについては、カウンティ・オフィスをベースとした地方分権を大胆に進める。カウンティの中は一つの町になっても良いし広域行政連合であっても良い。カウンティ・オフィスより広い領域を持つ自治体や広域官庁は、必ずカウンティごとの統計、行政計画の立案と遂行を求められる。特に医療・介護などの社会保障はこのカウンティ単位に考えられていく。行政単位が不統一なまま分権を推進すると、人材の偏在、無用の議論によって行政効率を上げるにいたらない。最終的な地方分権に行き着く前に、カウンティとしての基礎的自治体を強くするとともに、人の育成を図らなければならない。その上で10年後に都道府県をなくし、新たな広域自治体を編成する。カウンティ・オフィスを作ることによって、広域自治体の役割が明確になるとともにカウンティごとの行政の質を保ったまま個性化することができる。単に国の関与と責任を減らすことのみ議論している国会の議論は、不毛であり、何を目的として改革するのかはっきりしない議論が横行している。カウンティ・オフィスの考えは、地方をになう人材をどう手当てし育成するか、橋下大阪府知事のいう「大阪都構想」の全国版を考えるとすれば、どのようなやり方があるかというところから構想された。
 この3つのプロジェクトを通じて、経済にお金を注入し、新しい街づくりと行いながら、産業の中核を創り、行政の効率化と地方の改革をそれぞれの地域の住民が構想する基盤を創る。再び日本の経済成長力に再点火できれば、新しい日本が生まれる。