増税シフトと経済の活性化

 7月11日が参議院選挙の投票日となるようだ。予算委員会を開かないまま選挙に突入する。民主党には追い風が吹き、60議席を越える勢いがある。ここで過半数を獲得できれば民主党衆議院は解散する必要がない。選挙で勝てば9月の党内選挙で代表、幹事長をおろすことなどできないという読みだろう。施政方針演説でハッキリしたことは、消費税を中心に増税すること、そして、「強い経済、強い財政、強い社会保障」の合言葉以外に政策がないことである。「東アジア共同体二酸化炭素▲30%政策」はそのままとしているが、お手本としたユーロはガタガタだし、クライメイトゲート以来、律儀に二酸化炭素削減を追求しているのは日本だけのようにみえる。
 マスコミは鳩山・小沢退陣とともにINTEGRITY(言行一致)の問題が解決したかのようだが、第三の道は、「第一の公共投資、第二の道の規制の緩和」以上に政治家のINTELLECT(知性)が問われることは間違いがない。民主党はバラマキ型のマニフェストを修正できるのだろうか。超党派による「財政健全化検討会議」も良いが、支出面での合意は困難だろう。話し合おうと言っておいて、選挙のために会期を延長しないのは、言葉と行動が一致していないように感じられる。財政赤字の直接的な原因は、景気対策としての公共事業と社会保障費の増大だった。40兆円の需給ギャップの中で増税することが出来るのか。表面的な事業仕訳では何も改善することはできない。新しい技術開発がなくてどう食べていくのか。日銀が国内に供給しようとしたおカネは円キャリートレードを通じておカネが海外で使われてしまった。一次産品の値上がりを除いてデフレ解消の兆しはまだない。
 日本経済をいかに活性化するかという問題に対し、あちらこちらから、「どうせダメ、何をやってもダメ、自民党が悪かった、民主党も相当だ、・・」という声が聞こえてきそうだ。「問題はこれだ」といつも後から決めつける評論家氏、だったら先に言ってくれ。「信じて頑張るしかない。トラストミー」という営業部長もいそうだ。新首相がそうでないことを国民の一人として願いたい。
 真面目に、少子化、年金、介護、医療、さらには財政悪化などの問題を総合的に時間をかけて議論することも必要だろう。経済学から言えば、経済成長は労働力の伸び、資本ストックの伸び、全要素生産性の伸びの3つで決まる。これから人口減少社会となりますので、生産性の伸びを上げることがもっとも重要となる。それには3つのイノベーション、つまり、人材、技術、社会のイノベーションを促すことが必要だ。
 しかし、人口や年金の問題ばかり議論していると、将来のことは全て決まっているような気になり、だんだん憂鬱な気分になってくる。個人的には、有能で真面目な人たちが、真面目な議論だけをして出したウツウツとした結論よりも、文明論や歴史に基づく見方にひかれている。
 時代を変えるためには、何よりも「首都機能の移転」が必要だと主張したのは堺屋太一さんだった。新しい時代を迎えるには、産業構造も金融も、日本全体の地域の構造も情報構造も変えなくてはならない。そのきっかけとなるのが、日本の場合、いつも首都機能の移転だという主張だ。もう一つ理由がある。それは危機管理としての移転だ。日本の最大のリスクは次に来る関東大震災だと世界が考えている。未来予測の本では必ず日本が沈むことになっている。最悪の事態を考えれば、首都機能を移転すること、或は代替機能を作ることには大きな意味がある。
 二番目に考えたいことは、思考実験としての鎖国である。例えば中国との交流交易は長崎と沖縄に限る。仮に中国と鎖国しても、日本はほとんど困らないのでないだろうか。大きな市場は大事だと言うが、利益をあげる為に進出しているのであって友好が目的ではない。稀少資源が中国に偏在しているから難しいという人もいるが、いつ供給を遮断されるかもしれない資源は資源ではない。海水からの回収技術に磨きをかけよう。野菜は工場で作ればよい。そうすることによって中国の意味がハッキリしてくる。もちろん中国経済が大きくなることに異論があるわけではないが、非中国の世界を日本の中に確保しておくことが大事になる。
 三番目は、軍事費をこれから10年間10%づつ増額することを検討したい。それにより他の先進国並みの軍事費の水準に増強する。武器輸出3原則も見直す。もはや最新の戦闘機は一国だけでは開発できないからだ。そして友好国には自衛の手段としての武器を選択的に売却する。そうすることによって外交のメニューが一つ増える。米国と対等とは言わないけれども、会話のできる普通の国になる。
 第四に、上級公務員には恩給制度を復活して職場が変わっても退職金を払わないことを決める。その代り彼らのために「ためにする仕事」を作らない。
 第五に農林水産省を解体し経済産業省と合併し農商務省とする。農業補助金は基本的にはゼロとする。食糧自給率のトリックは止める。余剰人員は時限立法で作られた機関で平成検地の要員に充てる。
 第六には、働く人の定年を70歳とし、年金の支給開始年齢を70歳とする。これでかなりの労働力を現役復帰させることができるはずだ。若者との職場の奪い合いにならないよう新たな仕事を作り出す。
 第七は、子供手当を廃止し科学技術研究費とする。「はやぶさ」の成功は喜ばしいが、目立ったものしかおカネをつけない人気取り政党に技術は担えない。本質的な科学技術政策を確立しよう。
 第八に、全国348地区の二次救急圏毎に10名前後のチームを送り込み、必要な病院、福祉施設のような公共投資、産業育成策、地域政策を起案してもらう。彼らのレポートとサポートによって地方の政策立案能力を改善し、関連する議会での議論を活性化する。その中から新しい地域政策の芽を育てていく。道州制道州制といっても基礎的自治体の行政がおかしくなりつつあるのを放置したままで道州制は理論倒れとなりそうだ。
 こうした経済を活性化するための様々な計画が具体的に国会で議論検討されるのは何時の事だろうか。