衆参同日選挙と熱い夏

 菅内閣が8日正式に発足した。民主党にとって、風は逆風から順風に変わった。変な話だが、民主党の前代表と前幹事長と比較されるので得している。国会を2週間会期延長するか否かが議論になっている。改選される民主党参議院議員は、会期を延長すれば「政治とカネ」で攻められるので損だと主張しているが実態は9月の代表選挙の前哨戦だ。国民に責められるのは小沢グループであり、日教組グループに他ならない。
 この政権が本格政権に至る道は、遠くから見ているとハッキリしている。郵政法案を十分に審議すれば国会は延長しなければならならない。野党が言を左右したとえ審議未了に終わっても採決しないまま議論を尽くす姿勢を貫く。施政方針演説で昨年のマニフェストの軌道修正を図る。次の衆議院選挙で10%に消費税をあげるかどうかを問うとし、所得税も累進性をあげると主張する。自民党も消費税10%と掲げるので消費税に関して2大政党は同じ意見になる。一方で行政のバラマキ無駄は徹底的に省くアピールし続ける。子供手当は1回目の支給の反省を踏まえ、外国在住の子供には支給をやめるよう修正される。沖縄には何回も足を運んで誠意を示す。そこでは非難されながら黙って意見を聞く姿をテレビで見せる。閣僚の就任インタビューを聞いていて、官僚との関係も少し修復されそうだ。各省庁で行われる政務3役会に省庁幹部も出席できるようにすることがポイントだ。そうなれば、鳩山政権時代にあった不規則発言と迷走はぐっと少なくなる。6月25日のカナダのサミットを終えて30日まで国会に臨む。最終日30日の国会に突如、「紫の袱紗」が運ばれてくる。衆議院の解散だ。衆参同日選挙は、衆議院議員参議院議員の候補を同じ選挙区で揃えられる大政党に有利だ。このまま衆議院の任期満了まで選挙をひっぱても3年後には衆参同日選挙をやらなければならない。そしておそらく衆議院でかなりの議席を失うが過半数をキープする。落ちるのは主として昨年当選した小沢グループの新人議員が中心だ。こんなシナリオを最も恐れているのが小沢グループであり、言葉とは裏腹に、準備ができていない自民党と新しい政党ではないだろうか。
 逆に国会を延長せず、そのまま参議院選挙に突入した場合、8月の辺野古の工法決定、9月の民主党代表選挙を控えて、昨年の衆議院選挙のマニフェストという負の遺産を抱えたまま増税もままならず、来年度の予算編成にはいらなければならない。何か事案が生ずる度に、沖縄と財政再建と闇将軍に政権が揺さぶられる。だから、衆参同日選挙になるというのが自分の見方だ。
 野党では自民党の森総理だけが、鳩山退陣の前に「否決される前提で内閣不信任案を出すべき」と主張していたいう。不信任案を否決しておいて退陣を迫ることは難しいからだ。野党自民党にとっては取り返しのできない戦術ミスだった。自民党保守系新党にとって新政権が脚光を浴びているこの6月に何処まで姿勢、体制を立て直せるのだろうか。「みんなの党」は、今回の政変で民主党に政策をそのまま持って行かれ、争点を選ぶことが難しくなっている。民主党が何も変わっていないことをどのように証明できるのだろうか。変わってないことは事実だと思われるが、野党が攻めれば攻めるほど国会解散は自然な流れとなっていく。 衆議院は解散されてから40日以内に選挙を行わなければならない。仮に7月25日に衆参同日選挙が行われたとすると30日以内に国会を開かなければならない。8月下旬である。ここで総選挙の結果を踏まえた首相が選ばれる。連立を組み替えても衆議院参議院過半数を確保すれば、そこで菅本格政権が誕生する。
 梅雨入りが遅れ、当初は熱い夏となる予想されてきた気候も、ここにきて冷夏に予想が変わってきた。株価が下がり、景気も冷え込み、先行き不透明感をましてきた。日本の政治は、衆参ともに熱い夏を迎えそうな状況になってきたのではないかというのが、閣僚就任挨拶を聞いた時点での自分の観察である。今月中にその答えが出る。