左警戒、右見張れ 

 「子ども手当」を554人分請求した在日韓国人とタイ人の夫婦がいるという。法律通りなら認めざるをを得ないが、非常識なので受け付けないという。5人、6人ならば問題なしと考えるのだろうか。これは人数ではなく予め予想された法律の欠陥の問題である。クライメイトゲートで大きく信頼を損なったIPCCの報告書をそのまま呑み込んでの二酸化炭素削減法の経済に対する影響分析はアヤフヤなままとなった。普天間移転の問題は、9万人規模の沖縄県民集会が開かれ米国に約束した5月決着はもはや望めなくなった。マスコミにおける民主党支持派は、自らの意見を言わないまま、沖縄の実情を米国に訴えろという。米国に責任を負わせて、結論を先送りしたいのだろう。先週は高速道路料金に見直しについて幹事長と閣僚の行き違いが明らかになると官房長官更迭論まで飛び出した。問題の本質はそこにないので、それで解決するはずもない。事業仕訳では、ヒアリングの有無にかかわらず結論が決まっているようにみえた。ならば結論をインターネットに載せて発表すれば経費も浮く。研究開発を一つにまとめるのか、一つのバスケットに全てを入れず冗長性をもたせるのかに、合理的な答えはない。出張旅費や会合費の削減に国会議員や大臣が何人もかかるのだったら、その分国会議員を減らした方が、遥かに大きな成果が出る。デフレギャップの存在を認めながら、何もせずG20でニコニコするだけの財務大臣に多くを期待できない。良いことを何か探そうと思ってみたものの、あまり良いことが見つからない。こうした事態が続けば政権座礁どころか、このままでは国がもたない。

 わが帝国海軍の格言に「左警戒、右見張れ」というのがあった。左に異常が発見され全員の注意が左側に集まっている時に、航海長は1人右を見張れというのである。日本の注意が徳之島と普天間に集まっている間、韓国海軍の哨戒艦が沈没した。その原因は、機雷か北朝鮮の魚雷かに絞られつつあるようだ。北であった場合、韓国がどう報復するかが注目される。仮に戦闘が起こった場合、日本に向けた北の弾道ミサイルは暴発することはないだろうか。自衛隊は韓国にいる日本人保護のためにどのような行動をとれるだろうか。中国海軍はどう動くのだろうか。中国ではもうすぐ上海万博が始まる。何としても成功させたいと考えているはずであり、ことを荒立てたくないはずだ。報道によれば、4月29日に韓国で犠牲者の葬儀が行われ、30日には上海で中韓首脳会談が行われる。ここで韓国は北への対応について、中国首脳の理解を求めることになる。
 この4月には中国海軍は艦隊を組んでわが排他的経済水域EEZ)の中で「沖ノ鳥島」事件を起こした。離島防衛の提言が経団連から出されるのを牽制したものだとも言われている。幸い何事も無かったが、中国海軍のヘリコプターが監視にあたっていた海上自衛隊護衛艦に数十メートルの距離まで近づいてきたという。何があっても不思議でない距離である。防衛庁は相手方の交信記録からヘリコプターの単独行動と断定したようだが、本当だろうか。25日には中国の民間飛行機が成田の航空管制と連絡を取らずに滑走路に進入し着陸したという。本当に単なる間違いだろうか。二つとも、そうとは考えにくい事件である。間違えたふりをして、こちら側の反応を確認していたと考えるのはスパイ小説の読みすぎだろうか。現に中国は、ミャンマーカンボジアラオス中央アジアの国々、パキスタン北朝鮮、モンゴルなどに、経済と政治の両面で隠然と介入していると言われている。典型的な大陸国家としては、日本だけ特別扱いとはいかないだろう。
 私の希望は、日本を自主独立の国として子孫に伝えたいだけである。そのためには国際法上も、憲法上も認められている集団的自衛権の使用を認めるように政府見解の修正を行うべきと考える。「同盟国の軍隊に守ってはもらうが、ともに戦うことは出来ない」という甘えを捨て、出来ること、出来ないことをハッキリさせた上で、同盟国とともに行動しよう。結果として、志と名誉を重んじる自衛隊将兵とともに生きる日本国民でありたい。まずは自分の力で自分の国を守る気概なくして、どうして、ともに戦うパートナーとなりえよう。
 現政権の考え方とはだいぶ異なるが、日本の最大の潜在敵国は、当面の間、中国だと考える。巨大な軍事国家中国が急成長している。中国の軍事予算は公表されている額の3倍とされており、朝鮮半島の国境近くには日本に向けた核ミサイルを24基向けている。日本のEEZや領海に無断で調査船を侵入させてくる。そして既成事実を積み上げる。毛沢東は、「薄いスープをすすっても核弾頭と戦略ミサイル、戦略核潜水艦、そして宇宙偵察・警戒衛星の3点セットを持たなければ侮られる」と考えていた。そして、それを持った現在、持たざる国は怖れるに足らずというのが彼らの考え方だ。1992年には日本の領土である尖閣列島を中国の領土として一方的に宣言したことに加え、沖縄を含む南西諸島を清王朝時代に冊封を受けていたことを理由に奪還するのだということを国是にしている一党独裁の国だからである。海底ガス田の共同開発についても、今では言を左右に約束を果たそうとは考えていない。
 80年代の前半において、日本には「忍耐と寛容をもって接し、中国の経済を発展させることこそが日本の役割だ」と考えていた人達がいた。「中国の経済が発展すれば、日中友好が永遠に続く」と考えていた人々がいた。今でも自民党の中に親中派がいたり、民主党の剛腕幹事長氏が日中友好をライフワークとしているのは、現実の利害関係とは別個に、この時のご縁が大きく影響していると考えられる。しかし天安門事件以降、反日は「共産党政権の存在理由」となってしまった。日本は中国の領土に何の野心などを持っているわけではないが、自国の抑止力を高め、是々非々主義で、中国とのイライラしたゲームを戦い抜き、逞しく賢く誠実に生きるしかないのではないか。おそらくこれからも、「沖ノ鳥島」事件のような不愉快なことが頻発するだろう。

  軍事情報活動、武器輸出、平和維持活動、
  監視、情報攻撃、示威牽制、
  一方的宣言、威嚇・脅迫、妨害、
  干渉・割り込み、基地建設、間接封鎖、
  反政府活動支援、代理戦争、進駐・占拠、
  浸透・工作、ゲリラ・テロ、検問拿捕、
  撃墜撃沈、領土の部分的占領、制海権・制空権の奪取、
  直接封鎖、爆撃・ミサイル攻撃、侵攻
  (出所)松村劭著「戦争学のすすめ」

 その時に、現在の首相のように、言行が一致しない優柔不断な人、敵味方識別装置が壊れている人では、安心できないし、安保が機能しない。外交交渉の取引材料は既成事実であり、それは軍事力を行使して作りだされる。竹島に対しても、不法占拠だと言えない外務大臣もやはり変だ。

 だから、もし、北朝鮮在日米軍基地や日本国民の生命財産の破壊を狙うミサイルを準備しているならば、日本としては周到に戦争計画を準備し、軍備を整え、出来る限りの戦闘力を集中して先制攻撃して一挙に敵軍を撃破する構えがないとかえって危ないのである。「国家が国際社会において自由と独立、平和と繁栄を追求するためには国家戦略が必要であり、その戦略を、鮮血を厭わず、経済的損失を厭わず追求することが大事なのだ」という、松村閣下の教えを改めて反芻した4月であった。