政治ノート  鳩山退陣と連立組替えの予兆

 国会論戦が始まり、「健全」野党としての自民党に「意外に」まともな質問者が多いことがわかり少し安心した。エース級なので当然という考え方もあるが、大臣は役所の作文を読んでいたため、「国益」という言葉が直接肉声で語られることがなかったと思う。マスコミは、もっと品が悪くなければ(面白くなければ)評価できないという論調だが、内心は驚いているはずだ。しかし焦点は「鳩山退陣後の政局」に動いているのではないか、というのがこの1週間の観察結果だ。傍目八目の利を信じて、今週の政治ノートとしたい。というのは、政権交代期の混乱を差し引いても、このままモノゴトが進むということが考えにくいからだ。

1.首相の政治資金規正法違反による退陣  
首相のサインにより首相の資産管理会社から出金されたなら、それは首相の意思の表明だ。秘書だけの責任にすることは潔くないなら、後は辞任しかないからだ。

2.普天間での迷走  
普天間については、同盟国アメリカが怒る理由はよくわかるのに、現政権が何をしたいのかわからない。中国、北朝鮮は喜んでいるはずだが、独自な道を歩む覚悟は全く見えない。「理路整然と腰を抜かしている」風景が思い浮かぶ。

3.インド洋での迷走
アフガンから国連職員が引き上げているのに民生援助は難しい。アフガン警察官の給与負担は自民党時代からやっていること。昨年は日本のNGOの青年がなくなった。インド洋はダメだが、アフガンをヤルとなれば、今度は自衛隊員を派遣することになる。せめて集団的自衛権を認めるとともに、身を守る武器・装備はちゃんとし身を守るために武器を自由に使える規定にしてほしい。首相が、集団的自衛権を認めないと言った後で、官房長官集団的自衛権に含みを持たせるのは、実に変だがよくわかる。そして安全保障問題で社民党が離党すれば、「外国人地方参政権付与」で公明党と連立・閣外協力を組むことになりそうだ。そうでなければなぜ急ぐのかわからない。故人献金追求を避けるため会期を短くした臨時国会を延長しても、議員立法を提出し成立させると民主党国対委員長が言い出した。そんなに民主党は追いつめられているのかと考える。議員立法を禁止しようとした党幹部の発言とは、とても思えない。陽動作戦の可能性もある。

4.外交分野での迷走
東アジア共同体を創設したいとのことだが、30-50年先のことなのか、3-5年先のことなのか時間軸をあいまいにし、ご自分の頭の中もあいまいになっていると思う。最大の危険は「中国には友愛の海で、米国の基地は国外へ」と敵味方識別装置が付いていないことだ。そんな人たちが舵をきる船が安全なはずがないが、庶民に逃れる術はない。

5.日本航空再建での迷走
JALOBの方たちには申し訳ないが、年金債務を削減したいならば、一旦破産させるしかない。8つ組合があって、その組合OB達の意見が自主的に短時間で纏まることはないのではないか。政治が何の根拠を持って介入するのか、国民には、全くわからない。特別立法を通すことは可能かもしれないが無理がある。前原さんの鼎の軽重が問われる。

6.来年度予算審議での迷走見込み
来年度の予算は補正の3兆円減額分の横流しと予算の組替えで何とかするだろうが、次の年の予算を増税なしには組めないことが予算審議を通じて明確になるだろう。タバコ税は値上げされる。ガソリン等の暫定税率環境税に置き換えられそうだが、選挙への影響を恐れれば、重厚長大の取りやすいところから取ることとなるのではないか。テレビに写された政治家政務官の企業訪問は、かなり露骨な政治献金の集金活動のように見えた。これなら官僚による根回しのほうがましだと考える財界人が出てきてもおかしくない。不景気が続く中で、実際にお金をもらえる人、もらえない人が明確になってくると、国民の間に強烈な支持と反民主党バネが同時に働いてくるだろう。お医者さんの待遇を改善するというが、それでお医者さんが増えるわけではないし、何故なのか、選挙対策以外の目的がはっきりしないことが多い。

7.環境税への反発
海外での演説は高い評価を受けたとのことだが、「お金をバラマキます」と言えば誰でも歓迎される。世界で最も厳しい環境基準と省エネルギーを達成した日本の産業が課税され、規制のない発展途上国の企業とどうして競争させられるのか、全く説明できない。日本が05年比30%(民主党の言う90年比25%)削減すると270億トンのうちの5%弱の排出割合なので1.5%削減となる。中国とアメリカが30%削減すれば合わせて世界排出量の13-14%位の削減になるのではないか。しかし彼らのエネルギー構造を見れば、そんなことはとても起こりそうもない。日本で30%削減されても温暖化は進むでは意味がない。
 新しい計量計算チームは、日本の二酸化炭素13-14億トンではなく270億トンがどうなるかを計算しないと意味がないと思う。それには産業別の原単位を使うしかないはずである。気になるのは新しいチームが招集されたときに将来の鉄鋼の生産量の予測まで行うと報じられたからだ。100年で3度上がっても、10年間で0.3度。どう体感できるのだろうか。北極の氷はとけても南極の氷はとけていない。どうやら政権交代とともに、環境統制信仰経済が好きな人が多くなってきたらしい。少なくとも自分の名前を付けた基金を作ることはやめてほしいと考える。経済界は効果的な反論手段を持たない自分たちに気づきギリギリする1年になりそうだ。

7.いまだ総選挙を戦う民主党 衆参同日選挙の可能性
新聞の行間に散らばる民主党幹部の発言は、未だに総選挙が続いているようなコメントが多い。「何所は応援してくれる、くれない」と国民の前でもノーサイドになっていないところが気にかかる。ネジレ国会で何ができるかを民主党はよく知っているからだろう。鳩山さんが退陣すれば、副総理がそのまま昇格するか、行政刷新会議の担当大臣が後継かもしれない。総理が交代しても信任を受けていないこと、景気が悪くなり国会審議がうまくいかないこと、対抗する自民党の選挙準備が進んでいないこと等を理由に、次の参議院選挙は、ことによると衆参同日選挙になる可能性もあるのではないか。既に民主党の国会議員候補募集の新聞広告が10日程前の新聞にのった。自民党みんなの党も公募するそうだが、候補がみんな当選してしまった民主党の出足は早い。そうした予想に立てば、「当選1-2回の議員は田の草取りをせよ」という民主党首脳の指示はかなり現実的なものと感じられてくる。次の選挙では、自民党民主党も組替えが起こる可能性がある。