静岡空港の蹉跌と展望

静岡空港部の廃止・・・責任の胡散霧消
 静岡県議会の09年9月の焦点は県庁空港部の廃止条例の是非にあったようだ。既に静岡空港は6月開港し、建設にあたっての当初の懸案が解決したのでを廃止したいという一見もっともな提案だ。同時に役人らしい提案だと思う。組織がなくなれば責任も胡散霧消し赤字の責任も問われないからだ。
 もともと空港には関係がない伊豆地区の不満を抑えるために、たしか南伊豆にはコミューター空港を造ることになっていたはずだ。本気でそう考えていた人もいたので罪が深いと思っていた。JALの経営危機問題に隠れているが、静岡県JALと静岡・福岡線につき70%の搭乗率保障契約をしていた。一座席につき15千円位だったと思う。羽田・北九州間を結ぶ専門航空会社のフライト料金と同じ金額だったと記憶している。ある県会議員の試算によれば、9月前半までの実績によれば搭乗率は63%弱であり、10年3月末には5億円の支払いとなるそうだ。数億円の赤字など気にする必要がないと豪語していた前県知事の負の遺産なので、今の知事にはお気の毒だ。「東静岡駅前のグランシップなど赤字なのに誰も気にしない。年間5億円の赤字など誰も気にしない。」という発言が事実かどうかは知らないが、本当ならば、静岡空港の赤字は年間の維持コストだけで、10億円位になるのかも知れない。採算については下々には全く公開されていないので、発言から推測するしかない。空港自体建設費は国の空港特別会計から支出されるはずだったので、民主党政権によってこの会計が廃止されれば、本当の赤字金額が隠しようもなく明らかになるのでないか。前県知事がトラブルシューティングに送り込んだ優秀な空港部の職員は居た堪れないだろう。だがこのままほっておくと、一般の県民はもっとひどい目にあうことになる。

情報統制・操作の責任者は誰だ・・・前知事に忠ならんとすれば県民に孝ならず
 先に引用した県会議員のホームページによれば、静岡空港も一時は八ッ場ダムと同様の時代があったという。総事業費1900億円のうち1000億円余を費やした平成13ー14年頃、空港の是非が論議され住民投票を実施するか否か、県議会のレベルの自民党で侃々諤々の論争されたという。へえと思う。何しろ、ここ数年というもの下々から見て静岡空港が話題にならないように、あらゆる手を使って議論のテーマとなるのを防いできた。県下では地方行政制度改革がご自慢な静岡県(県外でほめられているのを聞かず)だが、情報公開の評価は極めて劣位にあるどころか、事実上の言論統制・操作はひどかった思う。そうしなければ県庁幹部として生き延びれなかったのではないかと思えてならない。かつて頭脳明晰・成績優秀で知られた旧自治省出身の多選知事は皆どういうわけか、こうした落とし穴に嵌る例が多い。空港ができた後に中央のあるテレビ局が放映した静岡空港の歴史というドキュメンタリーをみて、初めてその経緯がわかったという人が多い。出来てしまった以上使わなければ損だというが、本当にそうなのか、採算を明らかにしてほしい。今でも利害関係者以外は、羽田やセントレアを使えばよいと考えている人が多い。今後の裸の採算を明確にするためにも外部の弁護士・公認会計士を入れて、別の部隊に再計算・公表させたほうが良いと思う。県の監査委員の監査結果にレベルが低いと文句を言う前任の県知事には驚かされた。彼に忠ならんとした高級幹部の計算は、別の人が今一度やり直す必要がある。

他の目的への転用可能性と2つの補助線
 もし旅客需要が伸びないままだとすれば、それに合わせて飛行機を小さくする以外に何が考えられるか、開港の2年程前には貨物空港化の検討も行ったはずであり、その結論をそのまま公開してほしい。物流空港化するためには、おそらく滑走路の距離が小さく、本数が足りず、大きな機体を満杯にする集荷能力が問題になったかもしれない。他の地方空港のように、民間航空のパイロット訓練施設として活用を考えるのも良いだろう。ただおそらく、そうした検討、割切り判断、裸の採算計算の結果が現状となっているのだろう。今後のために徹底した情報公開が必要だと思う。現在の延長上で展望が開ければ本当に良いと思う。展望が開かれなかったときに何をするのか。
 
 個人的には、八方塞がりの問題を考える際には直接的解決ではなくとも、問題を再定義し、別の問題との補助線を引いて考えることにしている。
 まず空港問題がなぜ始まったかという歴史から、一つ補助線が引けるのではないかと考えた。静岡空港の検討は、浜松の航空自衛隊の基地の民間共用化検討から始まったという。石原都知事も、羽田と横田の関係を考えたいと言っていたことがあった。浜松の航空自衛隊の基地と補助線は引けないか考えることが一つである。浜松の航空自衛隊を移すことができれば、浜松にとってメリットは大きいのではないか。たしか浜松の自衛隊は訓練部隊のはずだ。浜松に幅寄せする考え方もあるかもしれない。
 もう一つの補助線は。横須賀の米軍基地との補助線である。横須賀の空母の艦載機の夜間発着訓練場は岩国でということになっているが、本当にそれは最善なのだろうか。飛行機自体はよいにしても、整備その他の大部隊が日本列島を縦走することとなる。08年に行われた岩国市長選挙在日米軍再編に一定の理解を示す福田市長が当選したことで岩国の問題は進みそうな雰囲気だが、距離だけからいえば静岡空港のほうがすぐれている。
 開港1年目から他目的への転用を考えるのは抵抗があるかもしれないが、、情報公開しつつ、早期に採算を合わせていく新たな努力が必要ではないかと思う。