「新・陰陽五行」研究の必要性

 今後の温暖化の状況に決定な影響を及ぼす国は、二酸化炭素排出量の20%前後を占める中国、米国である。さらに排出量が経済発展と人口にリンクするという意味でインド、ブラジル等の新興国である。現在、日本の排出量シェアは5%弱、鳩山首相の主張する半分を達成するのもかなり大変だと思うが、仮にフルに05年度比30%削減(90年比25%削減)を達成しても、世界全体では1.5%に満たない削減量にしかならない。
 問題は中国や米国がどのようなエネルギーの供給構造と生活スタイルを持ち、国民と指導者がどのような意思を持っているかである。排出権取引とは、本質的には、中国や米国にお金を回す仕組みと言ったら言い過ぎだろうか。しかも中国政府は国民の不満を抑えるために経済成長を義務付けられているし、米国では当面の間、償却の終わった石炭火力抜きには安価な電力を供給できない。そのため30%削減という合意が成立する可能性が問題になるし、他国の事情もよく研究しておく必要があります。また技術的には、省エネ家電や省エネ自動車も大事だが、発電所や工場から排出される二酸化炭素を大量に安価に回収し処理する技術の開発が重要かもしれない。
 また鳩山首相が主張する二酸化炭素削減の合意が大幅な好運に恵まれて成立したとしても、現在進行している温暖化が止まる保証はない。もし止まらないとなれば、国民生活にどのような影響があるのか分析する必要があります。温暖化がもたらす影響の一つに、雪解け水がなくなってしまうことがが挙げられる。冬に降った雪が春先から夏にかけてゆっくりと流れてくることによって成立している今までの農業のやり方への影響は大きいし、適応への努力も並大抵のものではないでしょう。
 諸外国での変化もシミュレーションしておく必要があります。日本では人口減少ですが、世界全体ではどんどん増えていくわけです。国境を接した国々では、川そのものが国際管理下にあり、問題が絶えないこともあります。現在とは異なる国際関係、国家としての利害とそれに伴う摩擦が生ずるだろうと思われます。水の問題は、日本が極めて例外的に恵まれた国であるために見落としやすい問題だとされているため、特に注意が必要です。

    世界の国別エネルギー使用量の見通し
    一次エネルギー源の見通し
    二酸化炭素の回収処理技術
    温暖化が進んだ時の日本の国民生活への影響
    人口増加と水の需要と供給
    各国の影響と国際関係の変化
    国際河川の管理と問題点

 もう一方で、太陽の黒点の活動がなくなったということが観測されています。これは数年のうちに地球に小氷河期が来ることを意味します。そのため現在、温暖化と氷河期のメカニズムが合わさって各地の異常気象を引き立たせているとの推測が成り立ちます。対策としても二正面作戦にならざるをえません。太陽の黒点の活動は制御できません。そのためどのような影響が起こるか冷静に分析することが必要です。日本ではさらに、遠くない将来に大規模な地震の到来が予測されていることは周知の事実です。東京がダウンした時の備えをどう考えるのでしょう。

    黒点の活動と氷河期
    異常気象
    大地震への対策と首都圏

 気候の変動が起これば、世界の穀倉地帯が移動します。仮にそうではなくとも、今までの穀倉地帯であったところでも、さまざまな理由で砂漠化が進んでいます。古い時代の氷河期の氷が溶けて地中にたまった化石水を使っているアメリカ農業をそのまま続けるのは難しいといわれています。同時に中国経済の最大の障害になるのが水だといわれていることを考えると、二酸化炭素削減に費用を使うより、植林と水の問題に光を当てていくべきだともいえます。江戸時代の末期にはげ山となっていた日本の国土は、植林によって緑の国土になりました。中国の砂漠の植林に注力した遠山先生の努力を思えば、「50、60洟垂れ小僧」と考えて引退世代も努力する必要がありましょう。

    砂漠化と農業
    緑の日本、森林の造成
    化石水とアメリカ農業
    穀倉地帯の移動

金属(鉄・非鉄)の世界でもここ10年気になることが起こっています。一つはレアメタルの争奪戦であります。地域的に偏在するレアメタルが一部の国に独占され、戦略的な道具に使われ始めると大変なことになります。ここに多少値段が高くとも、日本近海にある海底資源を研究する意味がありましょう。また鉄鋼の世界では、鉱山業の寡占化がすすんでいますし、それに伴って鉄鋼業の集約が進む可能性があります。環境全体のことを考えるならば、エネルギー原単位の良い日本の製鉄所に過大な環境税を課し、規制のないエネルギー効率の悪い製鉄所にモノづくりを集約するのがまともな考え方だとは、とても思えないのです。スイスでは、国の防衛政策の一環として、国全体のマテリアル・バランスを把握しているといわれます。日本においても、都市の中の鉱山といわれる廃棄物の分別収集と活用にさらに注力していく必要があります。

    レアメタル
    海底資源
    製鉄所と環境問題
    環境税
    都市の中の鉱山としての廃棄物の活用

 かつて経済学入門の最初の授業で、「稀少性」という概念の対極のものとして位置づけられた「空気」や「水」に値段がつくようになった。農業・漁業の時代はいかんともしがたいものとして毎日の観察と畏敬の対象であった自然が、世界的な工業化と人口の増大の結果として再び人々の目の前に姿を現したといえるのではないだろうか。そうした「新・陰陽五行」の関係やハンドリングに目配りしなければ、人々の生活を、安心で心豊かなものに保つことができない時代に我々は入りつつある。