マニフェストが万能ならば、議員も議会もいらない。  

 自民党が酷いので民主党政権ができたと思っていたが、テレビに出てくる民主党の議員は、マニフェストに書いてあるのでとか、決まったことだと言い放つ人が多いので、ここ2週間本当に腹が立った。もしマニフェストが万能で、書いてあることが最終決定ならば、議員はいらない。また議会もいらない。何年かに1度マニフェスト国民投票にかけて勝った方の政党が次の政権を握るという仕組みにしておけば、高給取りの議員全員のリストラが可能だ。直接コストだけで年間数百億円節約になるだろう。
 国民が聞きたいのは、政府野党間の活発な政策論争である。もう選挙が終わって3週間が経とうとしている。「ある政策によって何を実現したいか、その根拠とリスクは何なのか。」国民を説得するのが議会における政府の役割ではないのか。民主党が少人数政党と連立政権を組んだ目的は、国家戦略局型体制翼賛会を作ることでないなら、今一度憲法を読み返してほしい。「国会が唯一の立法機関」であり、意思決定の場なのである。出来の悪いマニュアルを見て政治をするのか、国民の生活と現実を見て政治をするのかで、この政権の評価が決まるのだ。マニフェストの進捗率と評価が連動するとは、とても思えない。

 CO2の排出量は、90年比▲25%(05年比▲30%)はIPCCという国際機関の学者達がまとめた数字、先進国全体で90年比▲25-▲40%の削減が必要というところからきているらしい。これは条約に参加する気のない国を誘い込むための方策でもあり、インド・中国などの国々が条約に参加した場合が05年比▲30%(鳩山さんのいう▲25%)なのだという。ではそれらの諸国が条約に参加しない場合、日本はどうするのだろうか。その時は▲15%に戻すのだろうか。個人的には麻生さんのいう05年度比▲15%だって大変だと思っていた。専門家ではなくとも、「現在の家庭用の新型給湯器・コジェネが70万台あるそうだが、これを2020年までに2800万台普及させること(05年の40倍)、太陽光発電パネルを住宅用に530万戸に普及させること(現在の20倍以上か)、風力発電を陸上適地の8割に設置すること」までをやって、ほかの対策と併せて▲15%の削減となると聞けば、誰でも大変だと思うはずだ。鳩山さんはその倍の▲30%を主張したのには驚いた。早くその根拠と国家としての利害得失計算を知りたい。

    * 日本全体では5100万世帯。2800万世帯は単身世帯を除く家庭の8割以上。
   ** 新設住宅着工戸数110万戸前後。年間53万戸(10年で530万戸)が太陽光パネルを設置する

 排出権取引で権利を買ってくれば良いのだという国会議員や識者がいることは田舎にいても知っている。排出権というのは、CO2削減に価格メカニズムを使う仕組みである。結局のところ、排出枠の余裕のあるところから、余裕がないところがその権利を買う。最新の技術を入れれば大きく削減される余地のある古い技術を使っている国や、排出権を初めから高めに設定している国から、真面目に計算してしまう日本のような国が排出権を買うのだ。何のための出費なのか馬鹿らしくなる。そんなに必要ならば、友好的な国に対してODAで援助すれば良いではないか。排出権取引を導入する前に、日本の公害防止基準を世界標準にする努力をしたらどうか。よほどCO2は削減されるのではないか。また同じお金を使ってCO2削減の新しい技術の研究や普及に使った方がはるかにましだ。「国際基準とか国際貢献と聞いたら、請求書と思え」と感じている議員は誰もいないのか。そんな議員ばかりなら、本当に全員リストラしてほしい。