二酸化炭素から世界が見える  王様は裸でした

 連立政権が成立したこともあって、民主党の議員がいろいろなインタビューに出てきた。環境政策に詳しいという福山という議員の発言に驚いた。90年比CO2▲25%(05年比▲30%)は、何かこれといった具体策があるわけではなく、世界で協調して削減すべき数字であり、排出権取引を創設して買い取ることもできるとのことだ。麻生さんの言っていた05年比CO2▲15%だって、現在日本に70万台しかないコジェネの発電ボイラーが2800万台まで普及するまで前提にしているのだ。

 「排出権を買うんだったら、民主党の議員の給料で買え!」と心の中で叫ぶ。こんなのを相手にしなければならない経団連も大変だ。政治主導・脱官僚に異論がないが、政治無能は困る。おかしいと正面切っていう人がいないのは国民にとって不幸だ。政治資金の縁が薄かったこともあって、経団連は事を構えたくないようだ。シンクタンクの三菱総研は日経のやさしい経済学の欄に05年比CO2▲15%にするためにという連載をしているし、長期のシナリオの本も出している。しかし三菱総研は政府の仕事を受託しているため小宮山さんも大人しい言い方だ。役人はイギリスの官僚制度が理想などと言われて、外に向かって情報を発信しにくいムード作りをされている。自民党はまだ集中治療室だ。マスコミには、とんでもないと考えている人、いいじゃないかという人がまだ交錯している。しかし無能は無能、「王様は裸でした。」と言わなければならない。

 教科書の基本はかくあるべしと思って、年に何回か読み返している絵本がある。遊幻舎から出ている「クジラから世界が見える」という本だ。難しい問題をレベルを落とさずに易しく説明している本だ。「捕鯨について賛成する人も反対する人も、大人も幼稚園生も、この本をまず読もうよ!」と思えてしまうほど事実と統計が充実している。それでいて堅苦しくない。読むたびに発見がある。ネクトン、ベントスの説明がある絵本なんてスゴイ。世界の漁師さんたちが漁獲する魚が年間9千万トン、80種類1000万頭のクジラが餌として食べる魚は自分の体重の年間5-10倍なので年間3−5億トンだそうだ。北欧、フィリピン、インドネシア捕鯨は知っていたがオマーン捕鯨があることは知らなかった。大阪の瑞光寺、歴史、食文化、生態系と将来の食糧危機にまで話が及ぶ50頁弱の絵本である。

 二酸化炭素にもこんな絵本がほしい。「二酸化炭素から世界が見える」。このままいくと、環境税が導入され、世界で最も省エネ操業している産業が抑え込まれて、雇用が減る。それでも公害を垂れ流している中国の工場がそれ以上の二酸化炭素を出すために温暖化は止まらない。そんな将来が見えかかってきた。