物語コンテンツの面白さ

 映画館のない街に住んでいると、衛星放送が本当に楽しみだ。テレビは在京キー局の放送を受信できるものの、同じテーマを扱ったドラマでも米国と日本ではどうしてこんなに違うのかとつい比較してしまう。シナリオの幅と奥行きが根本的に違うような気がする。
 
 堺屋太一さんの「東大講義録文明を解く」という本にこんな話が載っている。米国の映画製作会社の話だ。そこは年間10本の作品を作る。シナリオを公募すると年間4万2千本のシナリオが集まるという。それを数百名のバイトを使って1/10の4200本に絞る。その4200本を社員3名が読んで420本にし、ベテラン社員が100本に絞る。100本の中から監督さんたちが気に入ったものを30本選び、これを基に書き直すというのです。これに有名作家やライター達に依頼して作った50本の中から選んだ10本の書き直し作品を加えて40本。この40本の中からプロデューサーが選択し15本に着手し10本を完成するというのです。そのためには製作費の1/10、すなわち120億円の製作費としたら12億円はシナリオ費用にかけるという。それでも当たり外れがある。堺屋さんは専門家でも事前に価値が判定できないのが「知価」の特徴だとする。シルベスタ・スタローンのロッキーの第一作が低予算で作られた映画だったことを思えば、本当に何が当たるかわからないということが素人にもわかる。日本の衛星放送も海外で当たったもの、評判になったものを持ってくるから面白いと言えなくもない。

 麻生さんではないけれど、日本のマンガ、アニメの世界には、すごく面白いものがあることは知ってはいたが、俳優さんの出てくる映画とは今まであまり結びつかなかった。同じものだと考えて、壁をなくしてみると、そのシナリオや物語が実に優れていると感じる方は多いのではないかと思う。
 今週の映画の宣伝を見て、家内がこれは「クレヨンしんちゃん」のエピソードが原作なのだと教えてくれた。次に宣伝された映画は、ココ・シャネルの生涯を扱ったものだった。たしか日本にもココを扱ったアニメがあった。少女向けだが、それなりに面白いものだった。全てのマンガに詳しくはない。大学を卒業してからのマンガ経験は、入社後数年たって出向した先で、銀行からの出向仲間に、銀行の支店長室には「なにわ金融道」が全刊揃っていると言われ、早速読んだ。大手証券会社の相談役と雑談をしていたときに、「冒険ダン吉」以来初めて「沈黙の艦隊」を読んだ、と伺って帰りに買って帰った記憶がある位だ。子供が小学校に上がると、「ドラえもん」「ルパン三世」「名探偵コナン」のアニメ映画はほとんど毎年みていた。

 「ブラックジャック」や「キャプテン翼」などに影響を受けた人も多いと思う。宮崎アニメも素晴らしいが、それ以外にも色々出ている。日本には映画のシナリオ文化は発達してないかもしれないが、別のところでストリーテラーやシナリオライターが育っているのかもしれない。10年以上前のこと、日本のゲーム会社の社長さんたちは、ゲームオタクよりも映画青年を採用したいと言って張り切っていた。その頃採用された人たちが、今は働き盛りになっているはずだ。