政治ノート   終わりの始まり

 あんまり政治の観察に時間を使いたくないのだがちょっと驚くことが多い。

1.鳩山イニシアチブ、或いは、「終わりの始まり」

 民主党の代表は、日本の温室効果ガス削減について、2020年までに1990年比で25%削減するとした同党の中期目標を堅持すると述べた。これは、まだ始まっていない政権だが、この政権の終りの始まりだと思う。麻生前首相が6月に発表した20年までに05年比15%削減(90年比8%削減)との政府案より削減量が倍となる厳しい内容だ。あらゆる政策を総動員して実現を目指すとしている。途上国支援の具体策について『鳩山イニシアチブ』として国際社会に問うとしているが、これにはびっくりだ。
 
  CO2排出量
   1990年 11.4億トン 2007年 13.0億トン 鳩山目標2020年 8.6億トン90年比▲25% (麻生目標2020年 10.5億トン90年比▲8%)

   欧州理事会    2005年比▲13%   1990年比▲20%
米国オバマ大統領 2005年比▲14%   1990年比±0%
   鳩山首相     2005年比▲30%   1990年比▲25%
   (麻生首相    2005年比▲15%   1990年比▲8%)

 もともと1990年基準が欧州に有利で、日本に不利だったとの評価であり、2005年基準にようやく改まった。自分も環境推進派でいたつもりだったが、今回の発表は何かの「環境テロ」にあった感じがする数字である。経済産業省「勇気ある数字です。」環境省「厳粛に受け止めます」という数字です。

 驚いてばかりいても仕方がない。まず世界の排出量は、
2005年全世界 CO2排出量266億トンの内訳 
 米国22% 中国19% ロシア5.8% 日本4.7% インド4.5% ドイツ3% 英国2.2% 加2%

 日本の排出量を減らしたからと言って、温暖化が止まるわけではない。民主党の言うように30%削減しても寄与度は全世界に対する寄与度は1.4%でしかない。経済が成長すればCO2をより多く排出する傾向はあるものの、国土の広さ、暑さ寒さ、ライフスタイルによってもエネルギー消費は違うので一概に言えないものの米国でたった13%減らせば全世界では2.9%減ともなる。というかGNPが日本の2.5倍であることから、仮に米国が日本と同じエネルギー構造ならば、22%から12%となりCO2排出量は10%も減るはずだ。

 一人当たり排出量で見ても日本、ドイツ、イギリス、ロシアが10t/人前後なのに対しアメリカは20t/人と倍になっている。中国は2005年の時点では4t/人だ。岡田外相も含めて、民主党環境税の導入と二酸化炭素削減を好む人が多い。こうした過激な施策により、2020年の世帯当たり光熱費負担は、麻生案で年間77千円の負担増だったのが鳩山案で年間360千円の負担増となると試算されている。

 どうやって削減するか、計算が積み上げられているのか、いないのか、まずそこから聞かせてほしい。今回の発言は、民主党政権の終りの始まりと言ったら過激だろうか、発言には情念は感じるものの、知的な誠実さが見られない感じがする。高速道路の無料化は止めて、ガソリンの暫定税率の引き下げもやめて置いたほうが良いだろう。個人がガソリン自動車を使えば使うほど、排出量は上がるからだ。国際的に表明する前に、削減の具体策と影響についてを国会で明らかにしてほしい。数字が読めない首相より、漢字が読めない首相が良かったと言われないように説明してください。

2.連立の理由

 なぜ連立政権なのかについて参議院社民党の5議席あれば過半数になるという以外に明確な解説を聞いたことがない。あえて考えれば・・・。
 1)参議院過半数がないと、慣れている政党でも1年で首相が辞めたくなるほど嫌がらせができることがよくわかっている。
 2)政権与党に左を抱えることで、党内右派をはじいて自分が真ん中と主張できる
 3)政策協定までしておきながら、放っておくと情がないと思われると次の選挙で損だ
 4)左派とはいえ5%の支持者を持っている。10%支持が動けばまた政権交代となるので、抱えられるだけ抱えた方が得だ。
 5)いずれにしろ、現実的になるしかないので、一緒に方向転換できればなお良い。
と5つ考えたが、いずれも意地悪な理由しか思いつかないので信じられないでいる。

3.選挙日程

 今年の10月25日に参議院の欠員3議席補欠選挙があり、来年7月は半数改選で125議席の選挙となる。さらに3年後は衆参両院・都議会の同日選挙だとささやかれている。4年間政権を担当する強気とせめて2回自前で年間予算を組み、保守地盤にくさびを入れたいという弱気。国民が望みは、安全保障の左旋回ではなく、健全なる二大政党制。国会での活発な政策議論だ。霞が関に学生さんがやってきて可哀そうだが、仕方がない。

4.岡田外相
 
 日米同盟を基軸としながらも、アジア重視の姿勢だそうだ。国際貢献には積極的。憲法9条を改正した上で国連を中心とした集団的安全保障への参加と武力行使を容認する姿勢。「非保有国への核使用を無条件に違法とする国際法の確立、非核三原則東北アジアにおける共有、将来的な核兵器の廃絶」を目指しているらしい。まず中国の核兵器をなくしてほしい。「微妙な問題は信頼関係を大事に話し合うべきだ。」といっても、チベットやウィグルを見る限り、話し合いはなさそうだ。

5.防衛計画
 
 年末の「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」の見直すことになっている。防衛大臣は誰になるのか。年末に、大綱と計画を決めるが、決める前に2008年度の米国の国防報告を読んでほしい。

1)福建で短・中距離の弾道ミサイル増強で合計1000基以上(毎年100基増加)
2)大陸間弾道核ミサイルのDF31の質向上と数量増加
3)航空母艦の自国での建造に着手
4)宇宙衛星破壊実験のように、宇宙への軍事進出に積極的。
5)新潜水艦の開発建造ペースを早めた。潜水艦は既に62隻、うち9隻は原子力潜水艦
6)空軍でも攻撃機に、長距離の爆撃や攻撃の能力を高めている
 このままでは、中国の狙いどおりに「ハワイから東はアメリカ、西は中国」となる懸念。中国の主目標は米艦隊の台湾来援阻止。それは日本の海が「中国が決める海」になること。侵略なんて考えたことがないが、侵略されるのも、威張られるのもごめんだ。

                                    以上