次期政権の施政方針演説を起案せよ(落第原級留め置き)  

某月某日、某大学教授より「次期政権の施政方針演説骨子を起案せよ」との出題をいただき、休日返上で起案し採点を受けた。きわめて野党的であり、過激で物議を醸すため「落第原級留め置き」の採点評価をいただいた。「めげない!めげない!」 

*******************************

1.このたび、名誉ある日本国総理大臣に就任した〇〇であります。我が国は、多くの先人の努力によって、戦後64年間、一度も他国と戦争することのない平和国家として生きてまいりました。また「モノづくりの精神」、「環境と自然そして芸術を大切にする心」によって世界に愛される製品と文化を生み出してまいりました。今後も、活力があり平和で心豊かな国家の建設に全力を傾けて参ります。

2.外交・安全保障
 さて現下の世界情勢には予断のならないものがあります。アジアにおいても、核の拡散と経済発展を背景とした軍事力の増強、テロとの戦い、そして民族宗教間の対立など、片時も目が離せない状況が続いております。日米安全保障条約の下、我が国は平和を維持し創造する勢力として国際社会や国連と協力し貢献をして参ります。そのために、情報収集分析機能の強化とともに防諜法の成立を図ってまいります。 
 我が国には、個人の正当防衛権に当たるものとして国家の自衛権があります。総理大臣の責任において、日本は集団的自衛権保有しております。しかしその行使は慎重であるべきです。最終的には総理大臣たる自分が判断します。もし法制局長官が異議を唱えれば辞任を求めます。憲法上、日本の総理はその権限を持っていますが、関係法令については、可及的速やかに改正を行うこととします。
 核の拡散と小型化が進んでおります。小説ではありませんが、国家以外の組織がこうしたものを保有する事態も考えられます。「ツクラズ、モタズ、ツカワセズ」という新たな非核3原則のもと、必要な施策・装備の充実を着実に進めて参りたいと存じます。
 拉致については、速やかな解決を求めて参ります。拉致は、人権侵害であるだけではなく、国家主権の侵害であります。民族宗教の対立の問題は、経済の利害や国家の主権とも絡まって非常に難しい問題ではありますが、国連難民高等弁務官事務所等と連携サポートする形で解決するための努力と協力をして参ります。また以上の外交目的を追求するため、国際援助を整理統合拡大して参ります。

3.経済 
 まず昨年来の経済危機に際し果断な決断をされ積極策をとられた前総理並びに政権与党の皆様に御礼を申し上げたい。しかしながら幾つかの公共事業においては、検討が不十分であったり、将来の日本から見て不要不急の案件については、新しい補正予算案の提出とともに見直しを図りたいと思います。 経済の立て直しに当たっては、経済安定化のための枠組みの強化新設を図り、自ら働いて汗を流す人々が報われる仕組みを作りたいと思います。

 国内的には、新たな公共工事として、アクセス改善も含めた病院ネットワークの再構築、待機児童をなくすための施設整備と介護施設の充実、災害対応も含めた小中学校の校舎の補強活用、グラウンドの拡張・緑化、ライフラインの再点検と整備、省エネルギー型都市施設の建設に向けて特別予算を組んで参ります。投資効率を高めるため、部門横断的な施設検討を、都道府県・市町村とも相談しながら全国300程度のブロックに分けながら進めて参ります。中央官庁の出先機関の管轄も統合し、300毎のブロックとして事務を推進する体制に再構築します。なおブロック分けについては、今までの管轄にとらわれず、自然経済圏・交流圏をベースに地元の希望を重視して考えます。県におかれましてはその事務が円滑に行われますよう、ご指導いただきたいと存じます。

 農業においては、減反政策を段階的に廃止し、営農規模拡大と水田面積保全を目的として、戸別所得保障制度を導入し、競争ある農業の実現を図り、食料自給率の改善を図るとともに、米の用途開発の一環として微粉化設備の普及を図り、食パン原料としての消費も拡大します。林業においては、環境対策、災害対策、自然教育の観点から、間伐材の活用、山地酪農の推進、自然学校の設立を促進します。間伐材の利用のための国民運動を提起します。水産業においては、陸上養殖の推進や沖の鳥島等の離島部における大規模海面養殖施設と自然エネルギー研究施設の併設に向けて検討を進めて参ります。

 原子力、小型水力・風力発電の増強を図るとともに、新たな送電技術の導入についても適切な施策をとります。また太陽電池、蓄電池産業の育成強化を図るとともに、自動車産業において、ハイブリッド、電気、ディーゼルの技術開発を一層促進して参ります。資源開発という観点も含めてリサイクル産業を育成します。また鉄鋼並びに非鉄産業における二酸化炭素削減技術を支援します。高速道路無料化については、低二酸化炭素社会・循環型経済への移行を図るため、あえて取りやめることといたします。ソフトウェア・コンテンツ産業においては、資金調達面、海外進出面でのサポート制度を充実し育成を図っていきます。またアジアを中心とするの都市問題の解決に向けたODA援助を増額し友好国の長期的な発展と日本における人材の活用に努めて参ります。

4.内政

 年金問題の解決は道半ばであり、引き続ききちっとした制度に立て直すとともに、10年後に退職年齢を70歳とするための制度改定を図ります。60歳から70歳の間の雇用については、官民をあげた職務開発をはかるとともに、年齢を基準とした採用慣行を原則禁止とする法制度を準備したいと思います。公務員の天下りについては原則認めず、公益法人及び公的予算より支払を受ける企業については70歳までは出向扱いとし、その退職金総額を大幅に削減します。

 教育並びに技術開発は我が国発展の原動力であり、その充実に努めます。一方で教育需要がない教育機関にはその縮減を求めます。小学校高学年からはインターネットを活用した遠隔教育をフルに活用し、教員は個別指導や対面指導に全力を傾けられる体制を早急に確立します。同時に文部省の規制を大幅に簡素化し、校長権限を強化し、地域・学校ごとの特色ある教育を可能とする制度を導入します。大学までの児童・生徒・学生については、学校補助制度に替えて教育バウチャー制度を通じて給付金の支給に段階的に移行します。そのバウチャー制度をマニフェストにおける子供手当の代替施策とします。

 国家が個人の生活に関与する割合をできるだけ削減し、より自由な形での婚姻・子育てが行われるよう、フランスの民事連帯契約法に範をとった新たな制度を導入いたします。これにより、外国人を親に持つことも含めて、人種、境遇、生き方もろもろ、まず違うということの上に成り立つ新たな日本社会を創造します。

4.結び
 終りに、今回の提案は、国民並びに公務員の諸君にも多大の負担をかけることから、次回選挙より、まず率先垂範、国会議員の定数を半減をすることを責任与党として最初の立法とすることをお約束し、私の施政方針演説とします。