コンテンツの将来   企業を考える(4)

 数日前のGoogleのロゴが「ドラえもん」だったので思い出した。「ドラえもん」が登場して、もうすぐ40年(小学館のよいこ、幼稚園、小学一年生の1970年1月号)になる。「鉄腕アトム」は子供の頃に見ていた。あれを見てロボット技術者を目指した人が知り合いだけで何人かいる。「ドラえもん」は90年代になって息子たちと一緒にみた。ちょうどその頃、色々な国の言葉に翻訳されてアジアやヨーロッパでも人気になったようだ。最初のうちはただ楽しんでいただけだが、次第にその発想に驚いた。薄型テレビや三次元造形機を初めて見たのは、「ドラえもん」の中だった。あの中に出てくる発明で何ができて何ができてないか調べる作業にハマった時期がある。はっきり証明出来ないけれども、ドラえもんから発想を得た米国の人気ドラマがある。日本のコンテンツは面白い。それをもっと戦略的に活用し日本の産業政策の一つにしたいという麻生前総理の考え方はきわめて正しいと思う。ただ単なる建物ではなく、「日本のコンテンツをフルに活用するための仕掛けを作るのだ」ということが上手く説明できれば、もっと良かった。
 
 一般的な定義は知らないが、コンテンツとは、娯楽経験、教養経験、脱日常経験、審美経験を得るために、文字、音声、映像を使って作られた音楽、映画、アニメ、ゲーム、書籍、新聞、テレビ、ウェブの情報内容と考えておくことにする。
 コンテンツは、
   1)コンテンツを入れる容器や運搬手段であるメディア
   2)コンテンツを作るためのツールと技術
   3)コンテンツを作る人とその人の関心の対象
から構成されている。
  このコンテンツに要素技術価格の点から焦点を当てると「メモリーはタダ」、「ネットワークはタダ」とは「コンテンツの入れ物、運ぶ手段としてのメディアはタダ」ということになるのではないか。本当にタダになるわけではないが、「昔と比べたらほとんどタダ」とか「営業上の理由でタダにしても良いほどの価値」ということになる。新聞やテレビは依然として主力のプレーヤーだが、圧倒的主力ではなくなり、大家さんのような存在になりつつあるといったら過激だろうか。

 今後のコンテンツ関連産業の成長を占うポイントは、CATVや次世代テレビにあるという意見が多い。二つとも、テレビにネットを直接結びつけたものだ。テレビ放送が有線で流され、ネットサービスと同様に、検索・推薦機能、オンデマンド視聴(いつでも、どこでも)、「情報としてのコンテンツ」の評価とその時間的推移、「ビジネスとしてのコンテンツ」の評価とそれに基づく代金・広告費の配分がなされることになる。まさしく「メモリーとネットワークはタダ」という時代のビジネスである。
 
 次世代TVとして日本の家電連合が進めているのがアクトビラ(acTVila)である。アクトビラは、ブロードバンドを利用してデジタルテレビ向けに情報コンテンツや動画コンテンツを有料配信するポータルサービスということだ。ちょっといいなと思えるのが、昨年(08年4月)NHKNHKオンデマンドのコンテンツ配信先としてアクトビラサービスを利用すると発表したことである。民放に比べ、公共放送ならではのロングテールなコンテンツ・ストックを最も持っている。グーグルやアマゾンが始めている時の流れの評価を受けた書籍というコンテンツ・ストックのデジタル化も、この流れに掉さして本格的に取り組んでいるものと考えることができる。考えてみれば、最近コンピュータ業界でよく聞くクラウドコンピューティングも「メモリーとネットワークはタダ」をビジネスにしたものだし、アマゾン、グーグルはその世界でもキーレイヤーだ。

 そうしたビジネスの最前線を、空の上から眺めてみると、「良質のコンテンツが大事」というきわめて単純な結論になる。NHKの「趣味の園芸」の番組は、園芸に興味を持つ年齢になった人にとってはとても貴重で、バックナンバーも見たくなる。
 良いコンテンツを作るか、評価を得たストックを流通させるか、普通の人が気楽に楽しめるようにアシストするか、コンテンツを楽しみに心豊かに人生を送るか、どの立場からコンテンツに関わるにしても、面白い時代になりそうだ。