核戦略講義って受けたことありますか?

 「平和的生存権は裁判規範なるや否や、平和憲法の意義を述べよ」とかいう憲法の試験問題に解答を書いたことはあるが、「持たざる者の核戦略を述べよ」という講義は受けたことがない。でも「モタズ、ツクラズ、モチコマズという非核3原則は国是であり、それ以外話してはいけない」と信じている政治家が民主党にも自民党にもいると聞いて驚いた。個人的には、「モタズ、ツクラズ、ツカワセズ」の3原則が大事だと思う。しかし世の中は違う。更に「ギロンセズ」というというのを加えて非核4原則という人もあるらしい。少なくとも、こうした非核何原則を論ずる前に、核戦略の仕組みと日米安全保障条約の実態について考える必要があると考えた。

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持たざる国の核戦略と安全保障

 核の傘による安全保障とは何か。米国においては、宇宙衛星や地球上の核ミサイルや戦略爆撃機など24時間監視がなされていて、ミサイルが飛んでくると判断されると直ちに米国大統領に報告される。米国大統領が命令を出せば、戦略爆撃機大陸間弾道ミサイル弾道ミサイル搭載潜水艦等を通じて反撃できるという体制がとられている。反撃すると核戦争になり、攻撃した方もただでは済まないので理性的に考えれば攻撃されないはずだという核抑止の仕組みがとられている。日米安全保障条約があっても、仮に東京が攻撃されても、米国がニューヨークやワシントンへの核攻撃を受ける危険を冒してまで核報復するとは考えられないという人もいる。しかし実際にどうなるかは分からない以上、相手方はそのような攻撃をしないので、結果として核の傘としての機能が果たされることになる仕組みが機能する。つまり、傘といっても、「あなたが攻撃されれば米国が反撃しますよ」と言ってくれていることが傘の実態である。

 今一つ確認したいことは、日米安全保障とは何かという認識である。近年は、急速に拡大する中国の軍事力に対する警戒感を共有する対中軍事同盟であり、トルコ以東地域への軍事的存在感を維持するためのものへと日米安全保障条約の本質が変化しているといわれている。
 一方で米国はアジア諸国と個別に軍事同盟を結んでおり、米国を除外した集団安全保障体制を組ませたくないという側面、米国債の大口購入者でもある中国との戦略対話を通じて日本をけん制するという側面もある。日米双方に「自分のほうが相手に巻き込まれるから不利」という意見もある。
 しかし現実として、長年に渡る日米双方の膨大な維持負担と実績を積んできたこと、日米安全保障条約に危機的に信頼を失墜させるほどの行為を日米両国共にとっていないことが、日米安全保障条約を安全ならしめていることに思いをする必要がある。首脳同士の信頼感、相手方の利害に対する洞察力、そして自国並びに自国の将来についての意志が、この二国間の国際関係の基礎なのである。

 では日本の立場から見て、現在米国には何があるのか。自衛隊出身の志方俊之帝京大学教授によると次の6つだとそうです。

 1.核戦力
 2.通常戦力(特に攻撃力)
 3.軍事情報
 4.シーレーン防衛   
 5.食料・水(食糧自給率40%)
 6.軍事技術(ブラックボックスのある技術の供給を受けている。)
  
 こう並べてみると、日米の関係というのは軍事面に限っても、核の傘だけではないということがわかる。「核の傘に頼りたいのに、核をモチコマズを確約してほしい。」と言われても、おそらく彼らには意味がわかないだろう。ビジネスであれ、スポーツであれ、誰が敵なのか味方なのかわからない人とチームを組むのは嫌なものだ。ツクラズ、モタズは良いにしても、そのほかの面で、貢献を見せろと言われても仕方がない気がしてきた。米国から自立をはかりつつ、同時にチームメイトで良かったと思われる面での努力が、まだまだあるような気がしてならない。