日本株式会社の変革         思考実験(1)

 1週間後に総選挙があり、民主党が政権をとるというのが大方の予想だ。そのこと自体に異論はないが、その後の改革がどのように進められるかについて、見通しを持ちたいと考えた。もとより魔法の水晶玉があるわけでもないので、ひとつの思考実験にすぎない。

 多くのビジネスマンにとって政府の運営はあまりに大きくて名前も特殊で馴染みがないため想像もつかない。そのため政権交代を、一つの企業グループの経営陣が、株主総会の決議によって、変わったと仮定してみる。新たな経営陣は、新たに国家戦略局を置き、無駄を省き行政を刷新するために地方の首長を含む行政刷新会議をおき、100人規模の国会議員を省庁に配置し、事務次官会議を廃止するとしている。これはこう読み替えると、ちょっとわかりやすくなる。
 財務管理部の力が大きすぎるので、企画部を強化し、予算編成の主導権を企画部に持ってくる。グループ一体となった合理化を推進するため、子会社(都道府県・政令市)の経営陣も交えた経営刷新会議を置く。事業部の力が強く事業部間の壁も厚いので、本当の情報が経営陣に伝わってこない恐れがあるため、事業部長と同格の企画担当副事業部長を5-10名、各事業部に配置する。今まで事実上の意思決定会議となっていた、全会一致を原則とする事業部副長会議を廃止し、取締役会(閣議)とは別の事業部長会議で決める。

 もうすぐ9月という時間を考えれば、国民にとっては、今年は、組織の改革に関心を払うよりは、来年度予算をどういう方針で編成し、どう個所付けされるかが、喫緊の課題なのかも知れない。国家戦略局内閣官房の強化と読み替えても良いだろうし、各省庁に配置される国会議員は副大臣が現在の2-3倍となって大部屋に口うるさいのが増えるにすぎない。(担当は後で決まることになるはずという読みである。)事務次官会議は廃止されても、事務連絡会は必要なことなので、結局、全会一致でなくとも意志決定のための閣僚会議に出して良いという原則が確認されることとなるのかもしれない。行政刷新会議は、行政改革審議会の名称読み替えといっても良いかもしれない。問題は予算編成の過程でどれだけの無駄を発見でき、それらの削減廃止法案を作ることができるかではないか。また役所のモラールを維持しながら作業ができるかどうかであり、事業部の実質的な人事権を、この比較的若く組織で訓練されたとは言い難い政治家集団が握れるか否かではないだろうか。公務員改革を手掛けた渡辺喜美氏は、リーク・悪口・サボタージュで邪魔されると書かれていた。ガタガタはするだろうけれども、この政権の活動の成果や評価は、来年度の予算案の審議過程と春先以降の個別人事にでてくる。総選挙で勝ったとしても、国民は必ずしも、個別の政策に賛成しているわけではなく、現在の自民党政権よりは、無駄があぶりだされるだろうなと考えているのではないか。個人的には、そうした無駄は無駄として無駄使いしないでほしいというのが願いだ。ただ景気を考えるとそうもいかない。国会できちんと議論し変わったなと実感させてほしい。
 
 国内のガタガタで心配なのは、外交と防衛である。というのは、今年になって中国内部がガタガタしてきたことが報じられているからだ。内政の矛盾を外部に転嫁することはないだろうか。以前より、軍事費の増大によって2009年前後に、危険な軍事バランスが生ずると予測されていたからである。ちょうど昨年の秋、外交委員会で、麻生総理に海賊対策を取れと言っていたのが民主党議員団ではなかったのか。この面では大いに不安であることを明らかにしたい。少なくとも外交と防衛は、議論すべきは議論し、決するべきは決し、政治戦術的な取扱いをしないことを与野党に期待したい。