ソフトウェアの成長パス    企業を考える(2)

 携帯電話をうまく使いこなせない世代にとって全くわからないのが、2000年以降に、若者によって創業されたPC、携帯、IPOD、電子ブック等の上で、若者たちに提供されているサービス業ではないだろうか。創業者のほとんどが20-30代であり、そのサービスに対する課金収入と作成されたコンテンツが引き寄せる顧客に向けた広告収入が主な収入源である。そして何よりも、従業員数は少なくて比較的大きな利益をあげている。スゴイと思う半面、携帯電話を単なる電話としてしか使えない世代の一人として何が起こっているのかワカラナイので、少し考えてみよう。

楽天
国内最大の電子ショッピングモール。08年で会員数4000万人。出店数25000店、年間売上高5300億円。傘下に楽天証券楽天トラベル、楽天クレジット楽天KC楽天リサーチ、楽天銀行などをもつ金融電子不動産グループ。基本料金課金を強化。店子は儲かっているのかな。

*ミクシー
ユーザーが1700万人の日本最大のSNS。従業員数 280名、売上高 120億円。PC版42億件、モバイル版101億件の月間ページビュー、20代60%、30〜34歳が18%。SNS機能は充実、先行した分だけ運営の問題で株価を下げたこともあった。海外のSNSはどうなっているのかな。

*グリー
携帯向けの無料ゲームサイトGREEを運営。そのゲームの中で使う有料コンテンツの販売と企業とタイアップした広告収入で好調。来期はPCサイトにも梃入れを計画。売上140億円で、経常83億円、110名の会社。会員数1230万人、各分野で人材を募集。スゴイ勢いどこに行くのか。

*ディーエヌエー 
モバイルゲームで集客する若者向け電子モールかと思ったら、電子商取引技術を中核に据えた東証1部上場会社。顧客グルーピングに戦略性を感じる。中高年向けの「趣味人倶楽部」、中国・米国 でSNSの展開、BtoB対応、航空券販売、ネット広告代理店も始めた。

ソネット・エム・スリー
メインは医師向けサイト。文献、医療ニュースと専門サーチ、診療科別のサイト紹介と意見交換スペース、製薬企業情報のMR君、医師の個人生活情報のQOL君、転職支援、開業医支援サイトのほか、薬剤師・看護師の転職支援、患者向けの情報サイトも運営。成程ソウキタカ。

クックパッド 
料理レシピの投稿検索サイト。レシピ数は56万品目、20-30代の女性ユーザーを中心に「モバれぴ」も含めて月間681万人が利用。ユーザー交流も活発。価格ではない販促手段として食品業界他の評価も高い。売上高11億円営利4億円。オレンジページのような感じかな。

エニグモ
バイマは海外の素敵な商品を紹介したい人とユーザーを結ぶショッピング型SNS。2つ目の柱は口コミ販促に特化し、個人ブロガーに直接プレスリリースを配信しブログで取りあげて仕組み、更には動画CMを個人に制作してもらい、そのCMを個人に宣伝してもらうSNSの運営。

*アマゾン
通販の本屋だと思っていたら、世界売上高1.5兆円の大企業。田舎暮らしの味方。商品推奨機能が強力。プライバシー保護もあるが他社は追随。顧客はアフィリエイトとなること可能だが、グーグル広告が主流となりつつある。今後は、仮想マシン/データストレージの時間貸しを行うクラウドコンピューティング・サービスが拡大。アジアにもセンター設置か。

 調べてみると、やはり人間のやること、そう変ったことが行われているわけではない。昔の○○がネット上に再現されたってことか、と自分でたとえが思いつけば良さそうだというのが率直な感想である。特定の会社を深堀するならば、どの時点で、現場・現実・現物と接点を求めるのか、求めないのか、サプライチェーンやライフスタイルの中でどこに位置するのか分析するのが次の一手だろう。ただその前に、事業の成長スピードや規模は大きいものの、「誰に何を売っているのか、競争相手は誰なのか」という大きな方向から見たほうが良いかもしれない。そしてその次の質問は「差別化のポイントは何なのか」ということだと思う。ただ、コンピュータ技術を使ったソフトウェア会社の戦略を見る際には、差別化のポイントといわず、「ソフトウェアの成長パスをどう描くのか」という問いを発した方が適切かも知れない。この言葉は、むかしIBMの研究所の方が書いた本の中にあった言葉だ。要素技術価格の変化に着目し、「メモリーはタダ」、「ネットワークはタダ」から「コンピュータシステムはタダ」だと思いながら事業を考えることは「ソフトウェア(ソフトとコンテンツ)の成長パス」という一言に集約できるのではないか。

 既存の現実の電子化・総合化・大型化を目指す先頭企業、新たな顧客グループに基本技術を適用する会社、専門的な顧客に特化し差別化する会社、自らの事業分野を深堀しながら別分野の巨大企業と潜在的に競合する技術を磨いている企業など各社各様で面白い。それぞれどんなソフトとコンテンツを持っているかということからスタートすると結構先が読めてくるのではないかと思えてきた。当たるも八卦、当たらぬ八卦ではあるけれど・・・。